「錬金術というと、科学では説明できない方法でよくわからないモノを生み出すというイメージがあります」
バイスはアイレットに言う。
蒼の時間城にある一室を勉強部屋にしてバイスはアイレットから知識を学んでいた。
「でも師匠の扱う錬金術は魂を絡めていますね。
死んだものを蘇られるのも錬金術の一つではありますけれど…。
師匠のものは正解ではなさそう、何が作りたいんですか?」
「全てを学べばおのずと解るよ。でもいい線を行っている。
普通の人間は『不老不死』だとか『ホムンクルス』とかで終わっちゃうんだよ
それって簡単すぎるだろう?ふふふ」
「そうですね」
気のないバイスの返事。
彼は錬金術に興味などないのだ、しかし知識を取り込みたがるのは両親の資質をしっかり受け継いだのだろう。
「ここで学び終わればあとは実施だ。君のやりたいことをしなさい。
できれば私の名を継いでほしいが」
「継ぎません」
バイスはチラりと部屋の隅で待機しているメイドを見る。
アイレット・シィナ、アイレットの唯一の弟子であり名を受け継いだ者。
自分と同じ黄金の瞳なので嫌な感じがする。
たまたま偶然、同じだっただけなのだが―――人間はそこに何かしらを感じようとする。
その感性がバイスにもあり、邪魔にも思った。
「休憩にしよう。シィナ」
アイレットが声をかけるとシィナは茶の用意を始める。
差し出されるティーカップの中身は赤い。
匂いが生臭い。
『バイス、インサニアにあぁいう目を向けるのやめようね?俺のインサニアだからね?』
場所が切り替わる。
蒼の時間城ではない、遠い昔に住んでいた家の、ダイニングテーブルに置かれたカップを見つめていた。
生臭い匂いがする。かろうじて茶の色をしている液体がある。
目の前に座る男はアイレットではなくなっていて、父親に代わっていた。
父親は微笑んでいるが目は笑っていない、いつもそう。
母親に対してどんな目を向けただろうか、解らない。何も解らないまま父は詰ってくる。
カップを持つことなくテーブルの上に置いたままの手に父の手が重なる。
優しく撫でてくる。
「バイスはその目を俺に向けよう?」
父の甘い声。うっとりしたような眼が怖かった。
「は…い…」
声が擦れる。ニコっと父が嬉しそうに笑う。
「どうぞ召し上がれ」
「……」
飲みたくない、しかしカップを持ち上げ口元へ運ぶ。手が震えてくる。
「零しちゃうよ?」
父は立ち上がってバイスのカップに手を添え、頭を逃がさぬよう掴む。そして流し込まれるそれを咽ながらバイスは飲み込んでいく。
訳の分からぬエルフの森から採ってきた薬草と汚物を混ぜた茶だ。
最悪な味で吐き気が止まらないが父が戻すことを許さない。
「はぁ、はぁ…」
胃が熱い、口の中も食道も、触れたところから血管を伝って全身を熱くさせてくる感覚。
逃げたくて父の手を振り払って椅子から立つが足腰が言うことをきかず床に倒れ込む。
「あぁぁぁぁっ…!!」
バイスは胸元を掻きむしる、服を握り締め力いっぱいに引っ張るのでボタンが弾け飛ぶ。
ここではバイスは獣であった。母は家畜で、父は狩人だ。
父は子を獣にして楽しむのである、母が男だったころを懐かしんで。
「インサニア…」
覆いかぶさる子に対して子の名を呼ぶことはない。
父はインサニアしか見えていないから―――
「………」
バイスは静かに目を開く。母の持ち物だった刀を抱きしめてブラフェティスのコクピット内で丸まっている自分。
最悪な夢であった。
父に性的なことをやらせられていたのは本当にキツかった。
しかも最中ずっと母の名を呼ぶのだから。
もう両親は死んだのでいない。
それもバイスの感覚では何十年も前の話だ。
あの時と違って今は力がある。目標だって。
この世界の両親は自分の世界の両親と正反対であった。最初は戸惑ったが世界が違うのだからそういうことだってある。美しいインフェルノだって、世界が違うから母がインフェルノとして生まれ変わったのだし。
インフェルノは理想の母であった。
全てを憎んでいるあの目、そのままに強く、我儘に、死者なのに活きが良い。
そんな女(男である)をねじ伏せて屈服させて、自分のものにしてしまおうと思うと興奮が止まらなくなる。
ただ、まだこの世界のインサニアはインフェルノと化していない。
それまではこちらの両親と過ごそうと思う。
「…ん?」
触手だらけのコクピット内で触手の間からころりんと何か転がってくる。
「ブラフェティス?産んだの?」
摩訶不思議現象にバイスはちょっと困惑しながらその手毬サイズの触手の塊を拾い上げる。
「余剰分を排出したのかな。僕が君を作ったわけじゃないから説明に書かれてないことはわからないよ。
まぁこれで夜の寂しさを紛らわせろという君の気遣いだったらいいんだけど」
魔力を与えるとうねうねする。それだけで意志もなにも感じない。植物的な感じがする。
うねうね触手をにぎにぎしたりひっぱったりして遊ぶ。
バイスは触手が大好きだ。気持ちがいいし絡んでくる締め付け感が好み。
アウゴエイデスという生物と無機質の中間の機体であるブラフェティスもバイスのお気に入りの一つとなる。
コクピットが触手に満ちているので。
◇◇◇◇
そしてテンションが上がったせいでちょっと…ちょーっとだけ好奇心というものが沸いたのだ。
触手で乱れる母、良いのでは?と。
寝ている間に触手に巻かれさせればバレないのでは?
起きそうになったら魔術で意識レベルを落とせばいいし。
ほとんど犯罪行為をバイスは決行していた。
手毬触手はバイスの魔力により解れ成長し立派な触手の塊となってインサニアに絡みついていた。
「んぅ、うっ…ぅっ…」
苦し気に呻きながら仰向けの状態で腰を持ち上げられてM字開脚で固定され犯されている。
口にも触手が詰まっていた。正気に戻っても声は出せないようにした。
しかし正気に戻ることはないかもしれない、触手から溢れ出てきた粘液は催淫効果があるようだ。
バイスもうっかり触れてしまって興奮冷めやらぬ状態である。
「ああ、インサニア先生…そんなに身悶えて…えっちですね?」
えっちにさせているのはバイスである。
そしてバイスはインサニアを見ながら自分で自慰を行っていた、我慢できなかった。
「ずっとあなたを穢したかった…」
インサニアに顔射を行う。無論意識がないのでインサニアの反応はない。
それでも良かった、知らぬところで汚されるというのも興奮するので。
「…なにこれ?」
マークの声にバイスはビクっと体が硬直するが、平然を装って笑顔で振り返る。
「ば、バイス、くん…?これは…」
「…僕は怒られますか?」
「え?」
バイスは上目遣いでマークを見ながらゆっくり歩む。
「僕のブラフェティスが触手を生みまして…僕は思いました、インサニア先生のえっちな姿が見たいなって。
マーク先生だってそう思うでしょう?ほら、こうなるんですから」
「え?ええ?そ、そう…かな…?そうかも…?というか触手って?」
「そうですとも!マーク先生も気持ちよくなりましょう、僕たちは共犯なのですから」
バイスはゴリ押しをすることにした。
奇しくも男だったころの母も目の前で触手に塗れてる男もゴリ押しが得意であった。
バイスはマークをベッドに押し倒す。
触手がマークにも絡んだ。
「えぅ、な…に…?」
マークの肌の血色がよくなる。
「服が邪魔ですからね、脱ぎましょう」
剥ぎ取ってしまう。ついでにインサニアの服も取った。
「あぇ…?あ、あ…?」
触手が中に潜り込んだ瞬間にマークは呆けた表情になってしまう。
インサニアの魔力を吸って強力な触手になっているのかもしれない。
バイスはすかさず距離を取った。残酷な性格である。そして椅子に座って足を組む。
「さぁ見せてください、二人の獣のような交尾!」
バイスの命令を聞くのは触手である。二人の意識は失われているので。
そそり立って何も弄られぬインサニアのナニの上へマークの腰を落としていく。
「んぅっ…あ…?んぅぅ…!」
インサニアより意識が微かに残っているマークは仰け反って喘ぐ。
すべて収めた後は触手の動きが激しさを増した。
バイスの願望に沿って動いているだけなのだが、やられている方は激しい快楽に翻弄されっぱなしだ。
意識のないインサニアだが前も後ろも責められていて普段より息が荒い。
「うぐ、うっぅぅ…!!」
マークがイク。しかし触手は気にせず動かし続けるのでマークは泣き、止まってほしいと懇願したいのだが口をふさがれていて声が出せない。催淫効果も手伝って射精をしているのに後ろでも達してしまう感覚に痙攣が止まらなかった。インサニアも似たような状況に陥っている。
「ふふふ…気持ちよさそうでよかったですね、マーク先生」
「あ、ぅ…」
泣きじゃくるマークはバイスに手を伸ばししがみつく。
バイスはマークの腹を撫でる。
「インサニア先生のものがありますね…」
耳元で囁いてあげるとそれを実感するのか、興奮するのか、嬉しそうな鳴き声をあげる。
「いん、さ…にあ…」
マークがバイスの顔を掴んで名を呼びながらキスをする。
バイスは振り払う。
―――残酷だ残酷だ、マーク先生は残酷だ!
口元を押さえ涙目になる。泣いてはダメだ、笑ってないと。笑えと、言ったのは父だった。
ただ獣に陥る二人の姿を見たかっただけ。
ばしゃりと触手が弾けて二人はぐったりとベッドに倒れる。
バイスは口を押えたまま座り込む。
終わってしまった。
◇◇◇◇
「最悪な夢を見ていた気がする」
「そう?」
しんどそうなインサニアと平然とした顔のマーク。
あのあとバイスは逃げた。そのあとの二人は…今をみるに覚えていないしなんでヤってたのかという追及もしないことにしたのだろう。
「バイスくん顔色悪いけど大丈夫?」
マークの手が伸びてビクリとしてしまう。
そして取り繕う様にへらりと笑う。
「大丈夫です、何も問題はないので」
「ちょっと疲れてるのかもしれないよ?」
マークの手が優しくバイスの頬を撫でる。
父の手は、こうだっただろうか?
もっと父の手は…硬さがあって…力強くて―――バイスの肌に痕を残すほど掴んできた。
マーク先生は父ではないのだ。父ではない。
「寂しいですね」
「え?」
バイスは頬を撫でるマークの手に自分の手を重ねて頬を摺り寄せる。
「昨晩のセックスのことを覚えていないんですよね?寂しです、僕にキスまでしたのに、先生」
「ええーーー!??!?」
「ふっふっふ…」
バイスはマークの手を離してインサニアに視線を向ける。
「今度はインサニア先生からキスをいただきたいです」
「絶対に嫌だ…」
「待って!昨日の話を、詳しく!」
「嫌です、覚えていないほうが悪いですから」
「バイスくん!!!!」
バイスは逃げる。
父ではないのだ、そして母も―――
寂しい、寂しいのに、マークの手の暖かさが寂しさを消していく。
―――残酷だった。
おぼろげに昔に書いた「触手」を覚えていて、それを元にリメイク。2024年版触手と思っていただければ。