「ごちそうも食べてワインで体もあったまったよね!?
年越し花火を観に行くぞ〜!」
マークがテンション高く告げて準備を始める。
マークとインサニア、そしてバイスはインサニアの実家に帰省していた。
マークの実家ではなかったのはマークがこの年越し花火が見たかったからだ。
バイスはマークに対してかわいいなーと思いながらコートを羽織る。
この街は南側の区画が城(無骨なデザインの城である)を中心とした要塞が増築を繰り返し3層からなる迷宮のようになっている。
街の外の平地から打ちあがり結構間近な距離の花火がバール人の心を刺激するらしい。蛮族。
バイスは火事の心配をしてしまうが、燃えるものがあんまりなので大丈夫なのだろうと思いなおす。
「バイスくんもっとあったかくしたほうがいいよ」
マークがバイスの首にマフラーを巻いて耳当てをつけてくる。
完全に五歳児と間違えられている気がする。
助けてもらおうとインサニアに目をやるバイスだがインサニアも同じ格好だった。
インサニアの死んだ暗い瞳が諦めろと告げている…。
「諦めろ」
言葉でも告げてくれた。
これでマークも同じだったらいいのにマークは耳当てもせずマフラーなんて巻かずにおしゃれっぽく垂らしてるだけである。
マークが女だったら極寒の地で生足とかにもなるのではなかろうか?オシャレと判断すれば。そうなったらズボンを履かせてやるが。
「…ママだけズルくありません?」
「何が?」
キョトンとしている無自覚なマーク。
「時間が迫っているぞ」
「ほんとだ!行こう行こう!」
マークが選んだ場所は城の前にある広場だ。最前列にあたる城壁は選ばなかったらしい。
「屋台も出てるね〜バイスくんあったかいもの飲む?」
「お構いなく」
「インサニアこれ食べてー」
「いや、屋台のはちょっと…」
「大丈夫だって」
衛生面で抵抗をしてしまうインサニアだがマークに押し負けしてちまちまと薄い揚げパンにサラミが挟まっているものを食べる。
インサニアが飽きて寝ないように苦肉の策なのだろう、やってることがママである。
そうやっているうちに時間を迎えて花火が上がり始める。
バイスは花火を見るのは初めてである。知識としては知っている。
「そういえばアマツの花火を見逃したんですよねぇ」
ぽつりとつぶやいた言葉をマークは聞き逃さない。
にっこり微笑んでバイスの手を握る。
「夏にアマツにいこっか!旅行!」
「ええ?別に構いませんよ、ただ思い出しただけですし」
「俺は行きたいな、バイスくんと楽しいことしたいもん」
「…マーク、私を忘れているだろう?」
「忘れてないよ〜、インサニア嫉妬して可愛い」
マークはしがみつくインサニアに笑う。
「帰ったら家族旅行の計画たてなくちゃ」
「その前に寝たい」
「インサニアが夜更かし出来ないの本当に不思議なんだけど…」
「なんなんでしょうね…」
あんなに夜中えっちなことしてるときは元気なのにな…と思うマークとバイスである。
インサニアが食べさせられていたものはトルタ・フリッタです。