慈しみを持って相手に接する。
マークにとっては当然のことであった。傷ついている相手を癒したい思いで常にいっぱいだ。
バイスに触れるとバイスは困ったような笑顔を浮かべる。
だいぶ進展したと思う、最初の頃はただ笑顔を張り付けていただけだから。
もっと自然に笑って欲しくて、自由に生きて欲しくて甘やかしてしまう。
インサニアもマークに合わせてくれて甘やかそうとしているようだがディープキスやえっちなことをするのは違うと思う。
愛情表現の仕方が間違っている。
でもマークはそれを注意しつつ止めることはなかった、バイスの意識を外に向けさせていたかったから。
内側には彼を苦しませるものがある。
インサニアのときもそうだった、鬱屈としたものを抱えていて吐き出させる方法が限られていた。
肉体関係となってしまったときは少し後悔したこともあるけれど。
友達なのにと思い悩んだこともあるけれど。
ある日、ふと、インサニアに必要なのは友達なのだろうかと思い至って。
自分のこの胸の内にある熱は友達への感情ではないだろうと気づいて。
インサニアを愛するようになってからインサニアも変化していった。
最初から恋人を選んでも恐らくこうはならなかったかもしれない。
ただセックスするだけの相手となっていただろう。
そしてマーク自身が気持ちの整理をつけたから今の関係になったのだと思う。
インサニアはもう親の呪縛から解かれている。
だから今度はバイスの番なのだ。
「む…またバイスくんに先越された」
目覚めたマークは隣に寝ていたはずのバイスの姿がなくてそう呟く。
インサニアとサンドしてバイスと一緒にいつも眠る。
「んー」
「インサニア、起きて」
「や」
嫌がり方が子供である。インサニアは朝が弱いわけでもない、誘惑に弱いだけである。
眠たいから寝る、これである。
睡眠時間が多めなのでネコちゃんなのかもしれない。
マークは手慣れているのでインサニアを引っ張り起こして洗面所に連れていき共に身支度をしてキッチンに向かう。
バイスが朝食の用意をしてくれていた。
「おはようバイスくん」
「おはようございます、マーク先生」
振り返って挨拶を返すバイスの笑みは、自然な笑顔であった。