もしルチアとの交流がなかった場合の修羅場
(実際はマークとラクリマさんのやり取りの延長で知りそう)
バイスの父は素行不良のため敵が多い。敵を作っている。
これもクラレンス博士が悪いと父は言っていたが関係ないと思う。
気に入らないからと言って殺したり欲しいから奪ったりするのは絶対関係ない。
そしてバイスも狙われる。
子供を攫って人質にしよう、だとか子供を殺して憂さ晴らしをしよう、だとか目的は異なるが。
母を外に出さない理由が解った。
こんなの相手にしてられない。母は優しいので気に病むだろう、接触させないほうがいい。
父なりに気遣っているのが意外である。母に脳を破壊されているのかもしれない。自分もたまに破壊されるので。
あの男の妄想を具現化したかのような存在はずるいと思うのだ。
元男だからだろうか?
母のことを考えると胸が苦しくなる、とても恋しい。早く帰ってハグしてもらいたい。
無意識に早足になってバイスは拠点に向かっていると何やら騒がしい。
拠点の前で数人の人がいた。
制服を着たモブが数人、軍服を着た金髪の女性が一人、そしてその足元に転がっている両脚のない父―――
バイスは自衛用の伸縮する警棒を取り出しながら伸ばし、地面に転がっているラミレスの武器のひとつを拾って無理やり魔力を通す。
本来はフォースコアのエネルギーで刃を生み出す武器だ、しかしバイスにフォースを操る能力はないので武器の出力器にエネルギー代わりの魔力を通して無理やり刃を作った。
目の前に出てくるモブを警棒で叩き倒し、金髪の女に一太刀入れようと振るう。
女は抜き身のままだった刀で警棒を受け止め鞘でラミレスの武器を受け止める。
バキンっと魔力の刃が割れて消滅する。
怯まずバイスは警棒に仕込んである電撃を流す。
しかし女には効かなかった。
「バールはねぇ、常日頃から雷飛竜と戦ってるから電撃は効かないんだよォ!」
「ぐっ」
思いっきり腹に蹴りを入れられ吹き飛ぶバイス。
「子供の割には良い動きだね。お前が教えてるの?」
女はラミレスに問いかけながらラミレスに歩み寄る。
「サインしな」
ラミレスの首筋に刀の刃を押し付ける。
「くそアマぁぁぁ…」
「………」
「ぐっ!」
腹に刀の切っ先が潜り込む。
「開きにするよ?薬のせいで痛くないだろうけど自分の内臓と挨拶したくないだろ?」
「くそ!くそくそくそ!」
ペンを握らされたラミレスは唇を噛みしめながら端末にサインをする。
「親父に何をさせてるんですか?」
バイスは咳き込みながら立ち上がりつつ女に問う。
「婚姻届け書かせてるのよ」
「………は?」
バイスの表情が呆ける。
「こんいんとどけ?」
「そう、君はこいつの子供?似てるもんねぇ。テネブレと同じ顔だし。
なんだお前私以外の女と子供作ってそっちとよろしくやってたの?
こっちになんでこないの?」
「オマエが暴力女だからにキマってんだろォーがよ!!!」
マークママはぐずぐずに甘やかしてくれるのでそれはそれはそっちのが良いだろう。
「お前が素直になってりゃいいんだよ」
ラミレスの頭を蹴る。
口を切ったのか血が流れ出る。
「それ以上親父に暴力は止めてください。」
「死んでもいいんじゃないの?」
「それはそうですがお母様が悲しみますので」
「……」
女はギロリとラミレスを睨み、そして刀を納刀する。
「…何の騒ぎだ?」
拠点からインサニアが出てくる。
「母さん!?」
女を見て顔を真っ青にさせるインサニア。
「テネブレちゃん?なんでそこにいるのかな?もしかしてお父さんの居場所知ってたのにママに黙ってたのかな?」
「だ、だって!教えたら母さんそいつと結婚しちゃうだろ!!!!!いやだいやだ!!!!」
「もう遅い」
インサニアの母、ルチアは端末の画面をインサニアに見せる。
「うううううううああああああああああ!!!!!」
「お兄様壊れちゃった」
頭を抱えて発狂するインサニアを見て笑うバイス。
「そいつ死にかけてるな、殺して母さんを未亡人にしてやる!」
「バカねぇ、パパと三人で家族団らんするのよ」
飛び掛かってくるインサニアの襟首掴んでルチアはバイスを見る。
「しばらくこいつ預かるけどちゃんと返すからお母さんとここで待っててね」
「それは構いませんが…お兄様もいい歳なのに今更家族団らんですか?」
「テネブレちゃんにも普通の家族を味わってもらわないと」
「…そうですかあ」
その父親普通じゃないから無理じゃないかなあ、と思ったがルチアは力技でどうにかしそうである。
「じゃあまたね」
去っていく団体。
バイスは見届けてから身なりを整え母の元へ駆ける。
「お母様!ただいま戻りました!!!今日から父がいないので二人で一緒に寝ましょう!」
「え〜?なになに?どういうこと?ラミレスさん捕まったの?」
飛び込んでくるバイスを抱き止めるマーク。
「似たようなことがありました。お母様、僕がずっと愛していますので寂しくないですよね?」
「うんうん、バイスがいればママ嬉しいよ〜。」
にこにこしながらマークはバイスの頭を撫でる。
バイスはえっちなことまで考えているのだがマークはただバイスが甘えてるだけの認識であった…。