マークママルート

サスちゃんとバイスくん

 サスペリアは控えめで大人しい娘である。
 父親が高圧的なので萎縮してしまうのもある。そのたびに母親が庇って慰めてくれていた。
 父のことは嫌いではない。大好きだ。それはもう、愛しているといっていい。
 母とマークがいるので第三夫人になりたい、そんな感じ。
 父はかっこいいのだ、声がえっちだし、切れ長の目で見つめられながら囁かれると恐らく女性なら声だけで全員孕んでしまうのでは?と思う。
 そんな父に自分はそっくりな容姿で。
 鏡を見るたびになぜ母に似なかったのかと思う。
 成長すればするほどに…父ではなくフレッド=クラレンスに似てきているのである!!
 最悪な隔世遺伝!!ラミレスおじい様にも同情された、あの下品なラミレスおじい様にもだ!!!!
 アルコールはとらないほうがいいワヨと気遣われた。


 知るかバカぁ!


 サスペリアは鏡の前でジタバタ足踏みする。

「サスちゃんサスちゃん」

 ラクリマがドアを開いて呼び掛ける。

「ひゃい!?」
「今お暇?パパで遊ばない?」
「は、はい?」

 それはサスペリアの転機であった。
 インサニアにとっては悪夢の始まりである。
 それはラクリマによるインサニアのお着換えショーだった。


    ◇◇◇◇


 サスペリアは割とご機嫌であることが増えた。
 いつも陰鬱だったのに、にこにこしている。
 端末を眺めてニコニコ。
 今もリビングでニコニコ。

「……」

 バイスは後ろから覗き込む。レディーに対して失礼だとは思ったが気になったのだ。
 画面には猫耳つけて屈辱の表情でポーズをとっている父インサニアの姿。

「おや、かわいらしい猫ちゃんですね」
「ひゃあああああああ!!?!?!?!?」

 飛び上がるサスペリア。

「すみません、画面が見えてしまって」

 覗き込んだのだがしれっと詫びるバイス。

「ひぃぃぃぃ見た!?見たのぉ!?」

 サスペリアは端末を抱きしめてブルブル震えている。
 姉は極度のあがり症であり、対人恐怖症でもあると聞いているバイスはその変な行動は見流して頷く。

「他に可愛いお姿はありますか?」
「えぅ…えっと…はい…」

 そろそろと端末の画面を向けてくる。
 猫ちゃんの姿が多いのは恐らくラクリマの趣味だろう、ネコが好きだから。

「過激なお姿はないんですねぇ…」
「えっちなの!?み、みたいけどわたしよくわかんない!」
「ラクリマお母様にご相談しませんか?僕も行きますよ」
「ホント!?いこう!いこう!」

 サスペリアはバイスの手を掴み引っ張っていく。
 こうしてインサニアはえっちな格好もしないといけなくなった。
 もちろんバイスのせいだとは知ることはない。




「はぁー…」

 サスペリアはうっとりと父の画像を見ている。

「バイスありがとう、なんで手を貸してくれたの?」
「……お父様はお母様にえっちな格好をさせているのです」

 バイスは深刻な顔になる。

「非常に…耐えがたい…!僕の気も知らないでお母様は!!!
 なので、お父様もこっちでえっちな格好をなさればいいのです!!!」
「なるほど…?」

 バイスも大変なのだなぁと思うサスペリア。
 母ラクリマも楽しんでいるし自分もえっちな父の姿コレクションが増えて嬉しいので何も問題がない。

「本当に!お母様はっ…僕をどうしたいんだ…!!」
「マークさんって、たまに気がありそうなこというもんね…?」

 幼い頃、男だったマークに可愛がってもらっていたころを思い出す。
 なんやかんやでなんかたま〜に告白か?みたいなことを言うのである。
 本人にその気はないのだ、おそらく言葉のチョイスが間違っているだけなのだ。
 それに気づくとなんとか流せるようになるのだが、バイスの様に惚れているともう大変だ。
 異母弟の苦労を感じてサスペリアは同情する。
 バイスが大人になって、マークさんを口説き落としてハッピーエンドになればいいのになぁ
 なんてサスペリアは考える。
 彼女に近親相姦はタブーという思考はない。
 彼女の性癖は完全にインサニアに似ていたのだった。