「バイスくん、おはよう」
マークの手がバイスの頬を撫でる。
優し気な手つきにバイスは満足そうに微笑みながらその手に頬ずりをする。
寝るときは頭を撫でてくれて目覚めの時には頬を撫でてくれる。
父とは違う優しい手。
好きだ。
この手が好き、この声が好き、この微笑みが好き。
マーク先生の全てが好き。
「―――おはようございます、マーク先生」
名残惜しく思いながらマークの手を解放して身を起こすバイス。
いつものように洗面所で顔を洗う。
―――愛しているよ
ゾっとする。
耳を塞いでも脳に直接響いてくる声。
肩を掴まれているような感覚。
鏡に映るのは自分だけ。
その手が怖い、その声が怖い、吊り上がる口元がただただ怖かった。
お父様の幻影が心を蝕んでくる。
笑わなくては。
鏡に映る自分の顔は引きつりながらも笑みを張り付け始める。
嫌がってはいけない、怒られるから。
「僕も、愛、して、います…」
幻影へ声を絞り出して答える。
ただ、せめて、心の中でマーク先生を浮かべながら。
せめてもの、抵抗だった。