「どうしたアルディラ?」
 馬鹿にしたような声が耳元で囁かれる。
 我が主の声。
「どうした?どうして勃起してるんだ?えぇ?」
「ひっ…ひぃ……」
 自分の腰がおぞましい快感によって痙攣を起こしている。
 主の意思により強制的に引き起こされる快楽は、おぞましい以外の感想を持たない。
「アルディラ?返事は?」
「い、んふぇるの…さまっ…やめ、やめてください…」
 言葉を選ぼうと頭の中で考えたが、諦めて素直に訴えた。
「痛いのが嫌なんだろう?どうだ?腰から下を快楽に染めてやったが?
 ククク…勃起してるのに出せないのがじれったい?」
「あっあっ……」
 主――インフェルノの身体が重なってくる。
 虐殺しか考えていない、インフェルノの笑みが目の前に来た―――


   ◆◆◆◆


 アルディラはカルロ=ストゥルニの姿を取っているが本人自身ではない。
 カルロ自身はすでにインフェルノの糧になっていた。
 ただ、カルロが命乞いをしたのでインフェルノが気まぐれで魂を全て吸収せず少しだけ残したのだ。
 そして魂の欠片を元に地獄の生物どもの肉を使ってカルロの姿を作り上げた。
 アルディラはカルロの人格と記憶を持っているだけの別の存在ということになる。
 インフェルノ自身もインサニアとエリィが混ざり合い、そして何千人もの人間を食したのでもはや別の存在と言ってもいいだろう。
 それでもインサニアの姿をとろうとしているのはきっとインサニアの自己主張が強いからだとアルディラは思う。
 ともあれ邪悪な存在である自分たちは次元の狭間を放浪していた。
 ロレンツォ博士というエルフお抱えの人間がどこからか持ってきた兵器によって異次元へ飛ばされたのだ。
 死という概念を超越した存在である我々は不自由に思うことは何もない。
 エネルギーは不思議と要らなかった。
 最低限の魔力は空間に存在しているし、そもそもこの亡霊の集合体はインサニアを怨むエリィのお陰で、インサニアが存在する限りそこにあり続けるのだから衰弱はあっても消滅はないだろう。
 ここで困るのがインフェルノの暇つぶしである。
 主は大変気分屋でわがままで子供っぽい。

 意味もなく破壊する。
 楽しいから破壊する。
 暇だから破壊する。
 ウザったいから破壊する。

 色んな理由でしょっちゅうアルディラを分解する。
 死ぬことはないが、痛いものは痛いし苦しい。

 ゴキゴキと嫌な音がなっている。あぁ、骨が折れる、折れ―――
「っ……」
 口からは悲鳴の代わりにごぽごぽと少し泡となった唾液混じりの血だ。
 触手が身体に巻きついて締め上げてきたのだ。
「アルディラ、暇」
「く、ぅぅ……げほっ…お、おれは、暇じゃないんですが…」
「暇だろうがよ。私が暇なのだから」
「いたっ痛い、痛い痛い!!!!」
「ははははは!」






 腕も脚ももがれてしまった。
 血溜まりの中で、アルディラは意識を覚醒させていく。
 自分の肉片はうごめき、もとの形に戻ろうとアルディラのもとへもぞもぞ動き始めている。
 なんて身体になってしまったのだろう。
 自分は…いや、カルロ=ストゥルニは、ただインサニアという男の世界を覗いてみたかっただけなのに。
 ―――何もなかった。空っぽだった。
 開けてみれば闇しかない、空虚だ、酷く虚ろなくせに密度のある暗闇だった。
 飲まれてしまったらもう出れやしない。
 死ぬのだから。
 死の匂いに惹かれていたのだろうか。マークも、自分も。
 死が近くにあったから―――
「だるま、ごきげんよう」
 インフェルノの顔が覗き込んでくる。
(だ…る…?あぁ……)
 腕も脚もないからか。
「ふふふ、早くくっつけ」
 自分でもいでおきながらそんなことをいう。
 馬乗りになったインフェルノの操る触手がアルディラのパーツを巻き取って、傷口同士を合わせてくる。
 ミヂミヂミヂ…と軋みを上げながら再生を始める肉。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「解放…してくれないんですかね?」
 触手は腕と足に絡みついたままだ。
「するわけないだろ」
「ですよねー。」
「痛いのは嫌か?」
「え?」
 ギリッ…と首を絞められる。
「ぐっ…」
「どうなんだ?」
「い、やっ…で…!!」
 なんとか声を出すアルディラ。
 インフェルノはニヤニヤと笑いながら手を離す。

 ぞくっ…

「!!!?」
 それは急激にだった。
「どうしたアルディラ?」
 馬鹿にしたような声が耳元で囁かれる。
 我が主の声。
「どうした?どうして勃起してるんだ?えぇ?」
「ひっ…ひぃ……」
 自分の腰がおぞましい快感によって痙攣を起こしている。
 主の意思により強制的に引き起こされる快楽は、おぞましい以外の感想を持たない。
 この身体は人間の身体ではない、インフェルノの一部から生み出したのだ。
 それにカルロという男の魂を移しているだけの粗末な肉体だ。
「アルディラ?返事は?」
「い、んふぇるの…さまっ…やめ、やめてください…」
 言葉を選ぼうと頭の中で考えたが、諦めて素直に訴えた。
「痛いのが嫌なんだろう?どうだ?腰から下を快楽に染めてやったが?
 ククク…勃起してるのに出せないのがじれったい?」
「あっあっ……」
 主――インフェルノの身体が重なってくる。
 虐殺しか考えていない、インフェルノの笑みが目の前に来た。
 恐怖しかわかないその笑み。
 ズボン越しに触れられ、押さえ切れない声が溢れてくる。


2009年に書いていたもの(途中で終わってる)
設定もまだ定まっていない頃に書いたような気がします。微妙にアルディラの設定と全体の経緯が違うので。