↓↓↓当時のあとがき↓↓↓
初期の頃に書いた過去話だよ!
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気が付くと薄汚れた布のような天井が見えた。 …あぁ、テントだ。簡素な照明が揺れている。 周りがざわめいている。どうやらここは星間ボランティアの野戦病院のようだ。 薬の匂いより血と泥の匂いがきついように思えるのは自分の鼻がおかしいのか、それともここにいる傭兵達、皆その匂いが染み付いてしまっているのか。 喉が乾いた。 「うっ…ぅぅ…」 身を起こそうとしたが体中に激痛が走る。 声も掠れきって出ない。 ずきずきと鈍痛が残る頭部と左腕、その他もろもろ…。 動く右腕で額に手を当てる。 湿った包帯の感触があった。 「気づきましたか」 看護婦が顔を覗かせる。 そして手を首に吊り下げていたドッグタグに伸ばしてきた。 「…ペーター、キュルテンさん。」 名前を確認し、看護婦はキュルテンに視線を戻す。 「キュルテンさん、自分が解りますね?」 「…あぁ」 掠れた声で返事を返す。 「水を…」 「はい、慌てず飲んでください」 腰に下げていた水筒を開きコップに水を注いでから、看護婦はキュルテンを支え起こした。 キュルテンは看護婦の名札を見る。 『ケティ=グリムロイエン』 「頭と左腕はガラス片で切ってしまったようです、あまり動かさないように。」 「了解」 ぐったりと倒れるキュルテン。 自分の身に何が起こったのか思い出し始める。 何とも馬鹿げた出来事だった。 無茶して帰還してきたヤツの機体が着地した瞬間に爆発した。 格納庫という最悪の場所でだ、大混乱が起きたであろう。 それにキュルテンは巻き込まれたのだ。 (ついてないなー…) 一番ついてないのは帰還してきたパイロットだろうが……。 基地の病院には正規の軍人が、傭兵たちはたらい回しをされてこんなところに行き着く。 傷が痛い、薬もないのか。 ◆◆◆◆ 「ぐぁぁぁぁぁっ!!!痛い、兄さん痛いよ!!」 「…我慢」 アロイスはがっちりとキュルテンの頭をヘッドロックで締め上げ水を流す。 「…ん」 解放し、タオルを被せる。 「あーいてぇー…」 右手で傷口を軽く拭う。まだ出血している。 「綺麗にしておかないと。後が大変」 血と汗で汚れた包帯を洗いながら呟くアロイス。 「解ってるけどもう少し優しく…」 キュルテンはふと、目覚めたときに来た看護婦を見つけた。 「ペーター?」 「ちょっと用事」 傷口をタオルで押さえながらいってしまう。 「…」 アロイスは小さくため息をつき、包帯を洗うのに専念した。 「ケティさん?」 「…あなたは。ダメじゃないですか包帯をとっちゃ」 「いやあっちで兄さんが洗ってる最中で」 「…使いまわしも心苦しいんですよ」 いいながらケティは手にしていたバケツを置いてそこに水を入れ始める。 中には血で汚れたタオルが入っていた。 「人類は宇宙を自由に行き来できるようになっても、こういったことは水準が下がるんですね。 嫌になってしまいます。薬はない、電気は最低限、水があるだけマシですけど」 ストレスが溜まっているのだろう、ぶつぶついいながら作業をしている。 「手伝おうか?」 「結構です。怪我人は安静にしててください。手伝おうにも片手で何が出来ますか?」 「うっ…。じゃあケティを眺めててもいい?」 「はい?」 眉を寄せてキュルテンを見るケティ。 「ケティ、綺麗だからさ、仕事してる姿」 「からかうんだったら他所でお願いします」 「……」 「……」 ケティの作業が終わるまで、キュルテンはその横にいた。 ◆◆◆◆ 「あの看護婦が好きなのかい?」 「え、何だよ急に、兄さん」 頬を赤くして戸惑うキュルテン。 あれから数日たった、怪我の方も良くなってきたので明日ぐらいには仕事を始めないといけない。 「…天使みたいな人だなって思う」 「ペーターがそう思うんならきっとそうだ」 「でも嫌われてるみたいだ」 苦笑するペーター。 「兄さんすまない。俺の分まで負担になったろ?」 「別に気にしなくていい」 キュルテンの頭をなでるアロイス。 その後ケティにプロポーズをしたがやっぱり断られた。 ◆◆◆◆ 「軍人も傭兵も嫌いです」 惑星ジュノーの首都の郊外にある教会。 その付属孤児院にケティはシスターとして勤めていた。 「え」 「帰ってください」 扉を閉めようとするケティに、キュルテンは思わず足を入れてそれを防ぐ。 「どうしてだいケティ、君は軍人も傭兵も敵も味方も隔たりなく看護してたじゃないか」 「嫌いになりました。戦争をする人たちはみんな死ねば良い」 「ケティ…一体何があったんだ?」 「…貴方達にとっては、どうということのない話です……」 「話してくれないと解らない」 キュルテンは扉を開いてケティを抱きしめながら中へ入る。 「離してくださいっ!」 「理由を聞かせてくれたらね」 「っ…友人が、死んだの。ううん、殺された、連邦の軍隊に殺されました」 「お友達が…?」 「私よりも素晴らしい人でした、そんな人を殺すならもっと別の、殺すべき者たちがいるんじゃあないのかしら!」 ヒステリックに叫ぶケティ。 キュルテンの腕を掴むケティの爪が痛いほど食い込んでくる。 「ケティ…」 「貴方には理解できないことよ!帰って!!!」 「…うん」 戸惑ったものの、キュルテンは哀しそうな顔で頷いてケティを離す。 「ケティが私のこと嫌いでも、私はケティが好き」 「帰って…!」 顔を手で覆うケティ。 「好きだから」 そう告げて、キュルテンは出て行った。 その後何回かキュルテンが訪問していく内にケティのヒステリックな対応も幾分か和らいでいった。 精神が弱いのかもしれない。繊細なんだろう、とキュルテンは思う。 打ち解けては来たもののやはりケティは求婚を受け入れてくれなかった。 傭兵は嫌いらしい。 ◆◆◆◆ 『ケティ、聞こえるかな?』 「ペーター?通信だなんて珍しいですね」 『ちょっと場所が悪いみたいで映像は出せないみたい。ケティの顔が見たかったな』 ハハハ、とキュルテンの愉快そうな笑い声が聞こえてくる。 『ケティ、もうすぐ戦争が終わると思うんだ、本当の意味で。 そうしたら私は傭兵を止めるよ』 「え…」 『結婚して、一緒に暮らさないか?』 「………」 黙りこむケティ。 『やっぱりだめ?』 「…考え、させてください……」 『じゃあさ』 声色の変わらないキュルテン。 彼は何を思い何を考えているのだろうか。 傭兵がどうのというよりも、今は彼の内面が怖い。 彼をしらな過ぎて怖いのだ。 『帰ってきたら答え聞かせてくれる?』 「……はい」 頷くケティ。 『あ、ケティのケーキが食べたいな!前に作ってくれたやつ。いい?』 「かまいませんよ」 『良かったー断られたらどうしようかと思ったよ。とっても美味しいから。 あ、何だか忙しくなるみたい。切るね』 「あ…」 切れてしまう。 何だろう、この胸のざわめき。 (ペーター…) ケテイは窓から空を見上げた。 END
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