2011年に書いたもの。(当時のサイト未掲載)

 竜の部屋。

「竜さんは人物画は描かないのか?」
「描きません」
「なんで?」

 彰は絵を描いている竜に質問を続ける。

「趣味じゃないですから。」
「絵、上手いのにもったいない。エリさんとか描いてやればいいのに」

 エリとは竜の妹のことである。

「うるさいなー。私の画力でエリの美しさを完璧に現せるとでも思ってるんですか」
「え・・・そうなるの・・・?じゃあ他の人ではどうなんだ?」
「人間は描くより、甚振った方がいいですよね…」
「ドS!このドS!!」
「黙れ」
「はい」

 ギロリと睨まれ正座する彰。

「なんでこんな阿呆に懐かれたんだか…」
「俺、竜さんの絵すきだよ」
「はいはい」
「この絵とか好きだけど。」

 スケッチの中の一枚を手に取る彰。
 ただのスケッチだから色は付いていない。
 ただ線がぐちゃぐちゃに描かれているだけで、描いた本人が言うのもなんだが「趣味が悪い」。

「死体ですけど?」
「竜さんが仕留めたのか…?」
「嘘ですよ。適当に描いたんです。ただの線」
「いや普通に人っぽい感じもするけど。ただの線か。そうなんだ…」

 本当は死んだ母親の絵なのだけれど。
 記憶を頼りのその時の光景を描いて、そしてぐしゃぐしゃと引っかいたのだけれど。
 生きてる人間を描くより死体を描く方が楽しい。
 未来の絵を描きすぎてるからかもしれない、生きている人間の未来を描いているが、楽しくない。

「…なんか甚振りたくなってきた」
「なんで!?」
「その絵を見せるからですよ^^」
「ただの線なんだろこれ!?ちょっ、竜さん!!」

 竜が迫ってきて焦る彰。
 しかしそのまま床に押し倒される。

「あぅぅぅ…あんまり痛くしないでほしい」

 覚悟はできているらしい。

「思ったんですけど」
「何?」
「嫌なら嫌っていえばいいのに。どうして付き合うんですか私に」
「だって…竜さんは俺の友達だし、もしだぞ?もし、竜さんが事故とかで人を殺しちゃったらと思うと心配で心配で…。
 俺はマゾではないけれど、俺が痛いの我慢することで他の人の生存率が上がるのであれば……」
「OKわかった、もう手加減しない」
「このドS!!手加減してください!!!!!」
「人を殺人犯に仕立て上げてる時点で容赦する必要性がどこに?」
「例え話なのに!」