正史B

ばけもの

 とある基地に向かっていた銀河連邦の戦艦の内部は異常事態に陥っていた。
 一部の人間が肉塊となって他の人間を襲い始めたのである。
 それは静かな侵略だったため気づくのが遅れて対応できなかった。
 気づけば艦内は血と肉と触手に呑まれていた。


「あはははは、あはははは」


 アルディラは手に持ったカンテラ(合図灯)を振りながら表情を笑顔にして笑い声を上げながら歩いていた。
 特に面白いわけではないのだが、人間を食らうと気持ちが高揚して、そう、興奮状態なのだろうと思う。
 インフェルノもそうなので、そういう身体になってしまっているのだ。

「……」

 アルディラは足を止めてカンテラを仕舞って毒を撒くのを止める。
 その場からは距離があったかが迷いなく格納庫周辺までくるととある一画へ向かう。
 生きている人間の気配がする、でもそれなら触手で飲みこめばいいのだ。
 ただちょっと、この気配は―――幼い子の気配がした。
 このような戦艦に幼い子がいるはずないのだが、高官あたりの誰かが家族を乗せて一緒に運ばせていたのかもしれない。
 たまにそういう私物化する偉い人はいたのだ。
 そういうのよくないとアルディラは思う、こうなることだってあるのだから。
 触手により脱出を不可能にさせられている脱出ポットの一つの扉をこじ開けると少女がいた。
 少女は大当たり!アルディラは大変興奮した。

「…ひぃ」

 怯える少女。


 かわいそうにこんな触手まみれなばしょでこわかったよね


 なんて自分を棚に置いてアルディラは幼女を抱き上げる。
 怯えて震える幼女のなんと柔らかいことか。
 ここでカルロならば優しく接しているところなのだが、アルディラはカルロの皮を被った化け物である。
 人を喰らう、化け物である。


   ◇◇◇◇

 インフェルノは手駒を増やすために銀河連邦の戦艦をアルディラに乗っ取らせたが上手くいったようだ。
 なので戦艦に乗り込んだが、なんとまだ片付けが終わっていない。
 触手で肉片を取り込みながらインフェルノはアルディラの元へ向かった。
 アルディラが屈んで何かしている。

「アールーディーラぁ?」

 インフェルノの声にアルディラが顔を上げる。
 口元が血でベタベタに汚れている。彼の手元には肉片と化したモノがあった。



「あは、インフェルノ様…お早い御着きで…」

 手で口元を隠しながらアルディラが呟く。

「早くもねぇーんだけどォ?触手で喰っちまえばいいだろうがよ」
「いやぁ…丁寧に味わって食べたいじゃないですか、柔らかいのって」
「知るかボケ。さっさと喰わねぇと全部私が取り込むぞ」
「解りました、はい、今すぐ」

 アルディラは口に含みながらもマントを使って肉片をかき集めて抱える。

「行儀の悪い…」
「へ、へへ…仕事はちゃんとしますので…」

 周りの触手や肉塊が収縮して人の形になっていく。

「予定通り紛れ込みます」
「うん、任せた。私はしばらく寝る」
「はい、おやすみなさいませ」


あとがき

昔書いたもぐもぐアルディラの話を今の私が書きました。