正史B

インサニア夫婦

 インサニアはマークに迷惑をかけているので嫁であるラクリマに離婚か猫耳尻尾かの選択を迫られた。
 離婚はしたくないインサニアは猫耳尻尾を選ぶしかなかった。
 誘導尋問だとインサニアは思った。
 インサニアはラクリマのことを愛しているかと言われると、ちょっと解らない。
 愛情というものがイマイチ実感できず、ラクリマを口説きまくったのも手に入れたかっただけであった。
 母からの愛は感じているので、それと同じものを…と思ってもなんだか違うのだ、イマイチな手ごたえ。
 なのでセックスに走るのだ、愛を交わすときに行われるものなのだから間違いではないだろう、と。
 でも愛がないとラクリマに言われるのだ。


 解らない。


 セックスをしておけば愛されていると相手は思うのではないのか、嫁は違うのだろうか。
 マークに対しても手放したくないのでそうやっているが、こちらはちゃんと反応してくれる。
 間違いはないはずなのだが…とインサニアは思考を巡らすのだ。

「またロクでもないこと考えてるでしょ」

 ラクリマがあきれた顔で呟く。
 その手には猫耳ヘッドフォンとバイブ付き尻尾だ。
 ヒャッとインサニアは飛びのく。キュウリを見たネコちゃんかな?

「ヘッドフォンは聞いてない!」
「お仕置きなんだからこれに決まってるでしょ。脳みそ溶かそうね」
「本当に溶けるから洒落にならないんだぞ!」

 ラクリマの能力である。
 この宇宙は広い、色んな能力を持つ人間がおり、それを利用する研究所も数知れない。
 ラクリマの能力は歌声に自分の感情を乗せて相手にもその影響を与える、というものだ。歌声に「今すぐ死んじゃえ」という感情を乗せると耐性ある者以外は自死行動をとる。
 それぐらい強力な洗脳能力なのである。
 同じ能力を持った人間の脳を利用した兵器「セイレーン」というものも存在した。
 ラクリマの脳みそが使われなくて良かったとインサニアは思う。
 ともあれインサニアに聴かせるものはインサニア用に特別に歌ったものである。
 そう、「インサニアが素直にえっちになぁれ」という感情がたっぷりと込められているのだ。
 生歌だと本当に脳みそがぐずぐずになって(※イメージ表現です)なかなか戻らなかったことがあって焦ったなどというお茶目な過去があり、現在は録音したものを使っている。録音になると効力が下がるのだ。

「じゃあ離婚しよっか。嫌だったらスボンとパンツをお脱ぎ」
「うぐぐぐぐ…」

 唸りながら大人しくなるインサニア。のそのそとズボンと下着を脱ぎ始める。

「あなたねぇ、離婚嫌ならヤンチャするのやめなさいよ」
「だってマークは私のだし…」
「マークさんはお友達でしょう?」
「愛人」
「浮気なのよねぇ…離婚しかないのよねぇ…」
「うっ…友達」
「そうでしょうそうでしょう」
 インサニアをベッドに寝かせてラクリマはインサニアの頬を撫でる。

「友達とはえっちなことしないよね?」
「でもマークはそういうの好き」
「……」

 そーなんだけども…とラクリマは同意しそうになるのを鋼の意志で留める。
 マークは良い人なのは解る、善意の塊でその善意にこの男が付け込んでいるのだ、それを理解しているのでマークに可哀想だなという気持ちを持っている。
 持っているけれど、まぁそれはそれ、これはこれで…どすけべなところにつけ込まれてるなというのも解る。
 マークも自制心を持ってほしい、ラクリマはそう思った。
 でもインサニアのエロボイスには負けるだろう。実際ラクリマも口説かれてるときは心揺れ動き結婚しちゃってもいいかな…なんてなってしまっていたし。だからそこマークとインサニアがセフレとなってしまっていても怒れないのだ。
 インサニアにこうやってかまってあげることしかできない。
 たぶんマークも似たような感じだろう。
 インサニアに甘くなってしまうのだ、二人とも。

「さて…ほら、服捲っておっぱいも見せてね?」
「うう…」

 嫌そうなインサニアの呻き声。
 気にせずラクリマはローションで濡らしながら尻尾バイブを捻じ込んでいく。

「可愛いわねー、似合ってるわよ尻尾」

 インサニアの腹を撫でながら奥へ奥へと進めていく。

「~~~っ」

 インサニアは服の裾をくしゃくしゃに握りしめながら身悶えるのを堪えている。

「脚閉じない、邪魔」
「はっ…ぅぅ…」 

 自分でM字に開脚するのが恥ずかしいのか屈辱なのか、インサニアは涙目で唸り続けている。
 ラクリマから見れば唸る猫ちゃんである。
 全部入ったのでスイッチを入れる。

「っ!」

 唇を噛みしめて声を押し殺すが腰がガクガクと震えるインサニア。

「テネブレ、ダブルピースして」
「はぁっ…!?」

 インサニアはラクリマが手にしている端末を睨みながら言われた通りピースサインをして写真を撮られる。
 その画像はマークに送り、ラクリマはヘッドフォンをインサニアの頭に装着させた。

「ひぃぃっ…!!」

 歌声が鼓膜を通じて脳を支配する。
 全身で痙攣を起こすインサニア。そして普段から鋭い目は緩んで蕩けた目になって快楽を追い始める。

「らくりまぁ…触ってぇ…♡」
「おねだり上手ね」

 腰を揺らすインサニアの横に腰かけて、ラクリマはインサニアのナニを扱き始める。

「あ…♡ らく、りまぁ♡ 」
「んー?」

 ラクリマは髪を掻き上げながら先端にキスをして、そうして舌で舐め始める。
 興奮が増して溢れていた透明な液体の量が増えた。

「イっちゃえ」

 陰嚢をキスしながら呟く。
 もちろんヘッドフォンをつけているインサニアにラクリマの声は届かないがインサニアは身体を仰け反らせながらイってしまう。

「あっ…あ、あぁっ…♡」

 インサニアは目の前がチカチカするのに耐えながらもっと欲しくて腰を揺らす。
 言葉が出てこないから身体で示すしかない。
 舌が上手く回らない、視線も上手く定まらなくてラクリマにおねだりが出来ない。
 耳元の歌声が脳を掻き回してくる。それが心地よく、気持ちよく、快感で。
 そのうえでラクリマに全身を愛撫されるのが気持ち良すぎた。

「だらしない顔のテネブレを見れるの私だけなのよね、かわいいわ」
「んぅ」

 ラクリマのキス。
 されるがままのキスだ。舌が触れ合うだけで気持ちが良くて快感が身体を駆け巡る。
 抱きしめたいのに腕が上がらなくて、ラクリマが目を細めながら手を握ってくれる。
 柔らかくて細いラクリマの指を感じてインサニアは再び達してしまう。

「手を握っただけでイけちゃうの、テネブレだけじゃないかしら…」

 洗脳のせいではあるが、ちょっと感じすぎてるなとラクリマは思う。

「はっ…はぁっ…らく、り、ま…ぁ…♡」

 熱で涙を零して、緩んだ舌先や口端から唾液を垂らしながらラクリマを求めるインサニア。
 焦点はあったりあわなかったりを繰り返している。

「全身気持ち良くて大変ねテネブレ。もっとバカになってもいいからね。かわいいテネブレいっぱい見せて」

 額や頬にキスを降としながら首筋を噛み、服をめくりあげなおして鎖骨を噛む。

「あ♡ ぁっあ、ぁぁぁ…♡」

 ビクビクと跳ねながら感じてくれるインサニア。

「かわいいね」

 乳首を弄ってあげはじめる。もうぷっくりと立ってしまっているのが可愛いとラクリマは思う。

「触っ…てぇ…♡」
「もっと触ってほしいのね?欲しがりなんだから」

 胸元や腹、腰を吸ったり噛んだりしてあげる。
 インサニアのナニは胸で押しつぶしているが、勃起状態を維持できずに射精を繰り返している。

「ひぃ…♡ あー…♡」

 何か訴えているのだとは思うが、言葉にならないインサニアから漏れ出るのは間の抜けた喘ぎ声だけ。

「あら?お尻触ってほしいのかな?」

 からかう様に問いかけながらラクリマは尻尾を掴んで前後に動かす。
 面白いほどインサニアは体をくねらせ甘ったるい嬌声を上げる。
 しかし逃げることはできない、脚を閉じることも許されていない。
 ラクリマは楽にバイブを奥に捻じ込んだり引き出したりが出来た。

「お、ぁっ…♡ おっぅ…!!」

 自分の脚を掴み広げあげ、奥を突かれるたびに嬉しそうに声を漏らす。

「ここ好きかなー?ここはー?」
「―――ッッ!!!」

 いいところが当たったのか、体勢を維持したまま顔を仰け反らせるインサニア。
 そこをバイブの振動が蹂躙する。嬌声を上げる声に泣き声も混じる。洗脳されてる部分と本来の部分が混じり出ていた。

「泣いちゃいやだわテネブレ。愛してるのよ?」
「あ、いぃ…?」
「あら聞こえた?愛してるわテネブレ」

 耳元で声をかけてあげる。

「ぼ、く、…僕は、あぃ…愛、され…てるぅっ…」
「そうよテネブレ。夫婦だもの。愛してる」

 嬉しそうな笑顔になるインサニア。
 その顔が愛おしく思う、そしてその言葉だけで達してしまうのも可愛い。
 バイブを引き抜いてヘッドフォンを外す。 
 ラクリマは快楽の熱に震えるインサニアを抱きしめて耳元で囁く。

「可愛いテネブレ、愛してるわ、愛おしいの。可愛いんだもの」
「ら、く、り、まぁ…♡」
「テネブレも私のこと愛してるわよね?」
「僕、も、あぃ、してるぅ…」

 焦点の合わぬ目で答えるインサニア。だが笑顔だ。

「可愛いテネブレ、おやすみなさい」

 頬にキスをする。
 スっとインサニアの意識が落ちた。

「普段から可愛ければいいのに…でもそれはそれで余計にモテそう」

 ラクリマは複雑な心境になりつつ、後片付けを始めた。




「……」

 目覚めたインサニアは濁った眼でスン…となったままベッドの上で放心していた。
 全身ラクリマの口紅付きキスマークだ、それはそれ、嬉しいので構わないのだが問題はヤってる最中の記憶は完全に残っているということだ。
 屈辱的な嫁の尻弄りにインサニアの尊厳はボロボロ。

「あら、いつもスネちゃって。語尾にニャンをつけるプレイはしてないんだからいいじゃないのこれぐらい」

 ラクリマがインサニアに気づいて声をかけてくる。

「私は男として女のお前を悦ばせたいんだが?」
「ありがとう、でも私は可愛いテネブレが見たいのよね」
「……」

 ジトっとした目で見てくる。不機嫌猫ちゃんみたいで可愛い。
 インサニアは両手を広げてくる。
 ラクリマはやれやれといった顔をしつつインサニアの膝上に腰を下ろして抱きしめられた。
 インサニアはラクリマの胸に顔を埋める。

「浮気しちゃダメよ?」
「…善処する」
「しないって誓えないの?」
「…我慢できないから約束できないだけだ。僕はラクリマのこと愛している。本当に、愛している。たぶん、そう。

 愛はよくわからないが…お前に執着してるってことは、そういうことだろう?
 それとは別に我慢できないんだ、性欲のコントロールができない。
 昔からそう。たぶん、父親と同じなんだと思う。あいつみてて解った」

「そっか…」

 ラクリマはインサニアの頭を撫でる。

「でもねテネブレ、お父さんのせいにするのもダメよ。頑張って我慢するの、できなくても頑張るの。
 今のテネブレは甘えてるのよ。バレなきゃいいとか思ってるでしょ」
「………」
「ほらぁ…図星突かれて黙り込むんだから…貴方のこと解ってるんですからね。
 そこを含めて可愛がってるんだから、マークさんを無茶苦茶にするのは控えなさい」
「…別にいいじゃないか」
「良くないっていってるでしょうが、もう一回ヤりましょうか?」
「や、やりたくない…脳が壊れる…!!

 解った、善処する。でもマークがヤりたいって言ってきたらヤってもいいだろう!?」

「へんな妥協点出してきたわね。
 …まぁ、とりあえず今はそれでいいわよ。あんまり無茶いうと変なことやりそうだし…」

 諦めるラクリマ。
 なんだかマークにヤりたいと言わせそうな気もするのだが、おそらく、たぶん、そうやるんだろうが…。
 そこはマークに頑張ってもらうしかない、インサニアだって頑張っているのだから。

「ラクリマ、僕の身体洗って。ごはん食べさせて。僕と一緒にお昼寝しよ。」
「でかい赤ちゃんになるんじゃないわよ。やりません。お義母さんもそんなことしてないでしょーが。
 はい起きて、身体は自分で洗って。駆け足!」
「ううー…」

 しぶしぶといった感じで動き出すインサニア。

「サスちゃんの方がしっかりしてるのよねー」

 義母の家に預けている激かわもちもち娘を思い返しながらラクリマは呟く。
 アレの種から生まれたのがとても不思議であった。


あとがき

ラクリマ=カンツォーネ
オペラ歌手であったが映画に出演したことがきっかけで女優も兼業になる。
幼い頃から特殊能力に悩まされていたが訓練の末に歌う時は少し聴き手の感情を高揚させる程度に抑えている。
病にかかり、入院したときにインサニアが主治医となった縁で付き合い始め結婚。
その後インサニアが軍に移籍したりと忙しなかったが娘を授かり義母と一緒に育てている。
義母との関係は良好。
十貴族の習慣で入り嫁に与えられる豪勢に盛り盛り名はインサニア・ラクリマルム=カンツォーネ