正史B

酔っ払い

「カルロ=ストゥルニ…」
「はい」

 インサニアの不満げな声に返事をするカルロ。

「カルロ=ストゥルニ!!」
「お返事してますけど?」
「私を抱きしめるな!」

 がっちりと後ろからインサニアはカルロに抱きしめられていた。
 逃げたくても筋肉量が負けていて振りほどけない。

「しばらくお前を堪能させてくれてもいいじゃん」
「誰だこいつに酒を飲ませたのは…!殴るぞカルロ=ストゥルニ!」
「あはは、かわいいかわいい。一緒に座ろうね」

 軽々とインサニアを抱き上げてソファに座ったカルロはインサニアを膝の上に乗せて近くに置かれているグラスをインサニアに持たせる。
 インサニアの腰にカルロの腕が回っていて逃げ出せない。

「はいどうぞ、なにも入れてないよ?大丈夫だから」

 お酒を注ぎながら不穏なことをいう。

「飲みたくない」

 顔を顰めるインサニア。

「飲ませてあげよっか!」

 嬉しそうに言いながらカルロはグラスを掴んで無理やり注ぎ込んでくる。

「んぅ、ぁっげほっ、ちょ、待てっ…!!!んぐっ」

 注ぎ終わるとインサニアは息を荒くしながらぐったりとカルロにしな垂れる。

「零しちゃったねぇ」

 インサニアの口元を拭ってやるカルロ。

「何食べる?これとかどう?」

 カルロはオードブルの中から適当に選んでせっせとインサニアに食べさせ始める。

「うー…」

 インサニアは眉を顰めたまま不満げに咀嚼する。割とゆっくり。
 呑み込み終われば次から次へ捻じ込んでくるからだ。
 逃げれないのでインサニアは酔ってふにゃる手を頑張って動かし抗議の胸元叩きをするがカルロの筋肉にダメージはない。

「美味しくなかった?」
「ち が う」
「ご機嫌ナナメ?よしよし。おねむになったら言ってな?運ぶから」

 頭をぽんぽんしながら言うカルロに殺意を沸かせるインサニア。
 酔ったカルロは酷い時とマシなときがあるのだが、今はマシな方である。
 しかし幼児のような扱いをしてくるのは腹が立つ。

「ううー」

 唸りながらインサニアはカルロの首筋に噛みつく―――歯を立てて抗議し始める。
 口を使っていれば無理やり食べさせにもこないし、という考えもあった。

「えー?よしよし」

 インサニアの背に手を回して宥めるようにぽんぽんと叩くカルロ。
 しかしホールド力があるので逃げ出せない。

「なにしてんの?」

 マークがやっとこちらに気づきやってきた。

「あ、カルロ!お前お酒飲んだでしょ?」
「マーク遅い!!」
「遅いって、ちょっと目を離した隙にってやつじゃん?なんで怒られるの俺」

 インサニアを引っ張り上げるマーク。
 カルロの手がインサニアの腕を掴んで離さない。

「カルロ、インサニアはおしまいだよ」
「いや、ずっと一緒にいる。一緒にお泊りする」
「勘弁してくれ…」
「じゃあ、3人で寝る?」
「それでもいいな!」

 マークの提案にカルロは立ち上がりインサニアをお姫様抱っこして駆け出す。

「はっや!ちょっと待ってカルロ!」

 後を追うマークであった。