正史B

ワインを一杯

「うーん」

 マークは実家から送られてきた荷物の眉を顰める。

「検品ってされてるはずだよねぇ、艦長が通したのかなー」

 荷物の中はワインである。
 一人で消費するのは多すぎる量、母はこれを世話になっている人に配れと言っているのかもしれない。
 しかしこちら現在戦艦在住、パイロット多し。
 飲酒運転は憚れる。
 でも没収ではなくちゃんと届けられているので、艦長がOKをだしたのだ。
 ということはお礼をしなくてはいけないのだ。

「自由だなー。俺怒られないこれ?」

 呟きながら荷物を抱えて艦長の元へ向かった。




 艦長に何本もワインを奪われたがまだあるのでマークはラウンジに向かった。

「非番でお酒が飲める人、これ実家から送られてきたのでどうぞ」

 秒でお酒好きのパイロットが集まってきた。
 このまま宴会が始まるかもしれない。
 マークは自分の分を1本だけ確保してラウンジの端っこに移動して座る。

「どうなさったんですそれ」

 バイスが声をかけてきた。

「実家から送ってきたんだよ。毎年ワイン祭りやっててさ、今年は帰れなかったから。
 俺の村で作ってるワインだけど美味しいと思うよ、飲む?」
「え?えぇ、いいんですか?1本しかないようですが」
「みんなで飲みたいから」
「そうですか」

 ワイングラスなんてものはないのでコップを用意する。

「バイスくんってワイン好き?」
「僕はあまりアルコールを飲んだ経験がないんです」

 マークからコップを受け取って中身を眺めるバイス。

「あの村の特産ってワインだったんですね、僕は何も知らない。ずっと家から出ることが無かったので…」
「バイスくん?」

 首をかしげるマークにバイスは微笑む。
 ちょっと悲し気な笑みな気がしてマークは問いかけようとしたが言い淀んでしまった。

「いただきますね」
「あ、うん」

 バイスにつられてマークも口に含む。
 いつもと変わらない味だ。
 田舎は嫌いだがワインに罪はない。なのでワインは嫌いではない。

「美味しい、と思います。」
「ありがと。ふふ、バイスくんってインサニアみたいに赤くなりやすいんだね」
「…そうですか」

 バイスは自分の頬を撫でながら呟く。
 身体が少し暑いしふわふわする。父が薬を盛ってきたもので似たような状態になったことは何度かある。
 あちらは苦しいばかりだったが、今のふわふわ具合はまた違った感覚だ。
 不快に思わないのが新鮮だった。

「もう一杯頂いてもいいですか?」
「もちろん」