まず初めに、銀河連邦軍の所属となってしまった惑星シュテルプリヒの中で声のデカい国はバール連邦共和国である。
元がバール帝国からの歴史があるせいで偉そうなのである。
その帝国時代の最後の皇帝と言われるのが皇帝マティアである。
不老不死に手を出しその果てに宰相に暗殺されたという歴史となっている。
実際は確かに宰相に刺されて死んだが同時に宰相も周りの貴族に殺されているはずなので「口喧嘩の末の死」といった感覚である。
誰がその感覚なのか。
現大統領のニコラである。
ニコラはマティアの転生体である。
不老不死とは、そういうことなのだ。魂を次に移すことで次代に繋いでいく。宰相はそれを勘違いしていた。
皇帝を殺さず何らかの処置をして封じれば次に繋がることはないのだ…例えば冷凍にして保管するだとか…錬金術師アイレットに依頼すればそれぐらい作っただろうに。
宰相メルキオルはしくじった。
そんなメルキオルは現在ストゥルニ家の嫡男に転生していたはずだ。
未来永劫じっと他人の人生を眺めるなんて気が狂いそうで真似できない。あっちもやりたくてやっているわけではないが。
「ニコラさん、こんにちは〜!」
隣国デスレプブリーク共和国の大統領アルテミジアが元気に会議室に入ってきた。
「はいコンニチワ」
感情のこもっていない棒な挨拶を返すニコラ。
隣国は代々姫巫女を大統領にする風習があるため、要人に未成年の黒髪の少女がやってきてしまうわけである。
そして姫巫女に選ばれる少女は『ルイーゼ姫の転生体』であることが条件だ。もちろん機密である。
「ミツィア姫、大統領の真横に座らないでください」
姫巫女の愛称で呼びながらカルロの父であるクラウディオが疲れた顔で注意する。
「今日もダメですか…『昔』は良かったのに」
「ずっとダメに決まってるでしょう、ちゃんと席に名札つけてるんですよこっちは。ほらほら」
「うぇー」
クラウディオに運ばれ席に座らされるミツィア。
そこで少女の顔がキリっとなる。
「始めましょう、いえ、会議ではなく」
「全員揃っていないしまだ時間も早いが何を始めるんだ、紅茶はいるか?」
「欲しいです!」
ニコラは目でクラウディオに指示し、ミツィアに向き直る。
「くだらない話だろうが、さっさと済ませよう」
「はい!見てください!ソシャゲにとうとうマティアさんが実装!!!」
「……」
頭を抱えるニコラ。紅茶を口に含む前でよかった。
クラウディオに淹れさせた紅茶が目の前に置かれ、震える手で一口飲む。
「レア度は高い方ですよ、☆5!まぁこのゲーム今最高が☆9なんですけどガチャでは5までしか出ないので…」
「ゲームバランス悪そう」
クラウディオが話に乗ってあげる。
「そうなんですよねぇ!まぁそのへんは置いといて、どうですか!このマティアさん!」
「…なんで僕…マティアは女なの?」
ミツィアが見せつけてくる端末の画面を見て呟く。
『最後の皇帝マティア』の文字とバァーンと、なんか布だけの女がいる。
当時は鎧を着ていた、いつ刺されても良いように。
ただ宰相は腰周りの隙間を狙って刺し、刃を捩じってきたから死んだ。治癒魔法さえしてくれなかったので周りの貴族共の容赦なさに泣きたくなる。
しかたない、バールの国民性はそういうものだ。血で血を洗う…いや気に入らなかったらすぐ血だ。
そいつらをまとめていた自分偉いだろ、皇帝だから偉かったけど。ニコラはそう思う。
「偉人女体化はそういうものですよ、古の頃からの」
「そうなんだ…僕には解らん世界だ…」
「あとはですねー」
紅茶をごくごく飲みながらミツィアは操作して別のキャラを見せる。
『裏切りの宰相メルキオル ☆3』
噴出さなかったが我慢したので咽てめちゃくちゃ咳き込むニコラ。
実在の彼は赤髪なのだが奇跡的にゲーム上の彼も赤い髪で合っていた。合っていて草。やっぱり性別は女になっている。
「爆弾を無言で投げ込んでくるな」
「ニコラさんのその反応が見たくてずっとウズウズしてたんですよ。
気が済みました」
端末を仕舞うミツィア。
「くっだらな…。お前もっと国に貢献しろ」
「してますよ、してる上でニコラさんとは私的な交流をしてるんです!」
「あぁ、そうだ…メルキオルの画像だけクラウディオに送ってくれ」
「え?はい、いいですけど?」
「なんで?」
「クラウディオの息子に画像見せといてくれないか。なにも反応はないと思うけど見せておきたいんだ」
「はぁ?解りました」
(メルキオルさん遊ばれてて可哀想)
自分が遊ぶネタを持ってきたくせに姫巫女はニコラを悪人を見る目で見つめるのであった。
◇◇◇◇
画像を見せられるカルロは困惑しかない。
「また大統領の意味不明な指示。あれだろ、父さんの延長で俺が巻き込まれてるんだ」
本当は逆であるが転生の事情を知らない二人には解らない。
だがしかし、
(なんかすげー胸がざわざわする…)
原因不明の感情にカルロは困惑しっぱなしであった。