正史A

『愛』に飢える


―――彼の声、聞き覚えがないはずなのに なんだか知っている気がする…?

 マークが初めてバイスの声を聴いたとき、そう思った。
 彼のアウゴエイデスが出現したその直前ざわりとした奇妙な感覚を感じてもいた。
 普通ではない感覚が元々あった。彼に対して。
 そしてクラレンス一族の顔をしていながら瞳の色は金色で、胸の騒めきを不安に思ったりも、した。

「愛しています、マーク先生」

 唐突に囁かれる告白は驚きと困惑で占められた。
 どうして急に心変わりを?
 彼は最初、自分(マーク)を見た時、―――何も目に映してはいなかった。虚ろだった。
 そして探るように接してきていた。
 こちらの様子を伺っていた。

「俺も好きだよ、バイスくんのこと」

 思春期の子供に対して答えるように、彼の望んでいない言葉を告げるしかない。
 気軽に『愛している』と返して傷つけたくなかった。そして理由を問うのも彼はきっと無意識に傷ついてしまう。
 だからと言ってこの言葉も彼を傷つけるだろう、どう接してもおそらく自分はバイスを傷つけてしまう存在なのかもしれない。

 頬にバイスの手が添えられたとき、子供ではなく大人の手なのだなと呑気なことを思っていた。
 唇を重ねられて、抵抗せずに受け入れてしまう。
 インサニアからのキスの時は少し抵抗したのちに受け入れたけれど、あれもそのまま抵抗して押しのけていたらインサニアとの縁はそこで終わっていただろう。
 バイスの舌が遠慮なくマークの口腔を支配する。
 インサニアのように乱暴な動きであるはずなのに、少し遠慮がちな、探るような舌。
 絡め、絡まれ、流れ込む唾液が愛おしい。

 バイスが愛おしい。

 インサニアとまた違う庇護対象だ。
 彼を守らなければ。
 壊れそうな心を、これ以上壊れないように。
 彼の生い立ちは知らない。インサニアに似ているからという勝手な妄想で、ただ庇護欲を刺激されているだけかもしれない。

「マーク、先生」

 耳元で名を呼ばれる。
 その声が愛おしい。
 バイスによってズボンを脱がされたマークはデスクに背を預け、脚を広げて秘所を曝け出す。
 不思議とバイスとのセックスへの流れを身体が望んでいた。
 インサニアに怒られるかも、と少し頭の隅で思ってはいるのだが、別に恋人でもないしなぁ…とその心配を押し込む。
 バイスに対してインサニアに開発済みの身体で申し訳なくはあるがバイスなら許してくれそうという甘えもあった。

「ひゃっ」

 秘所を舐められ始めてマークは困惑と共に可愛く悲鳴を上げてしまう。

「ば、ばいすくん!」

 汚いよ、と続けようとしたが気持ち良すぎてマークは言葉を飲み込んでしまう。

 きもちいい、舐められるのがきもちいい、今まではインサニアに指で解されるだけのそこを、舌が。
 舌の動きが、好みで。好きな動きを解っているような、完璧な気持ちよさで。

 マークはふにゃふにゃと体の力を抜いてしまう。
 息を荒げ、乱れながらも脚を広げたままを維持して催促するようにバイスの頭を撫でる。
 舌がぐっと奥まで捻じ込まれ、バイスの息遣いを肌で感じて、余計に興奮を覚える。
 バイスの手がマークの陰茎の根元を撫でさすり始める。
 焦らすようなじわじわとした刺激。

「はっ…はっ…」

 マークは涙目になりながらバイスを見る。

「欲し、バ、イス…くんっ」
「はい…()れますね…」
「んあ、あっあああ…」

 太いものが挿入(はい)っていく。ゆっくりと潜り込んでくる。
 マークはその圧迫感に興奮しながらバイスにしがみつく。

「マーク先生と繋がっちゃいましたね、ふふ、ほら入ってますよマーク先生」
「んっ♡ うんっ、はいって、るぅぅ…♡」

 バイスが見えるようにマークの肩を持って引き上げて見せつけるのでマークはその『繋がっている』という認識をした瞬間にぎゅうぅ…っとバイスのペニスを締め付けてしまう。
 それによって余計に存在を感じ取って、より興奮した。
 バイスはゆっくりと根元まで埋めるとマークのペニスを両手で包んで優しく扱く。
 ゆるい刺激なのにマークは跳ねるように身悶えて声を漏らす。
 先走りが溢れて止まらない。
 動いてくれと催促するようにアナルがヒクついて伸縮を繰り返している。

「おっ…♡ うご、ひてェ…、らめ、勝手に、腰ぃうごくぅ…♡」

 腰が勝手に揺れ動き、マークはいやいやと首を振る。

「すごく興奮していらっしゃいますね。そんなに淫乱でしたっけ?
 オナ禁とかしてらっしゃったのかな?それともクスリをやっていないからか…?」

 ふふ、と笑いながらバイスはマークの跳ねる腰を掴み押さえ、ゆっくりと引き抜いていく。
 逃がしたくないと吸い付くような締め付けをしている自分の身体にマークは恥ずかしくなった。
 普段ここまでだったろうか?気づいていなかっただけかもしれない。
 まだ前戯の、甘い愛撫のような挿入なのに。
 バイスはカリ首は残したままの状態まで引き抜いて浅い部分を擦り始める。
 それがとても気持ち良くて、マークは身悶える。
 インサニアはいつもただ自分が気持ちよくなる犯し方しかしてこなかったのでマークを感じさせるためのセックスをしてくるバイスの動きは知らない動きだった。
 浅い部分を擦られて焦らされる動きが気持ちいいのだ、自分は。
 先走りがずっと止まらない、焦らされ続けるごとに奥が切なくなってきて、腰を捩ってしまう。

「おくっ、おく、ほしいっ!ねぇ、ばいす、くんっ奥ゥ…!」

 口から勝手に催促の言葉が溢れてくる。
 浅ましい自分が恥ずかしい。

「奥が欲しいんですね。解りますよ、ちゃんと奥にもさしあげますとも」

 バイスは微笑みながらマークにキスをして黙らせる。
 キスをされながらも再び奥へ挿入され始めるがやはり早さはなくゆっくりとした焦らす動き。
 マークはバイスに脚を絡めて腰を浮かせ、望む場所へ腰を沈める。

「あっ♡ あ、あぁぁぁ…♡ ♡ ♡」
「悪い先生…自分で気持ちよくなっちゃってますね?」
「だって、じらすんだ、もんっ…おれ、ほしくて、へん、にっ…」
「ここトントンされるのがお好き?」
「うっんっっ…!!」

 奥を小突かれ始めマークは身を仰け反って嬌声を漏らす。

 もっと激しくてもいい。

 インサニアは激しく奥を突いて、とろとろになるまでずっと突いてくれて―――
 バイスは優しい、気持ちいいのに足りない。
 気づけばいつの間にか両手を頭の上で縛られていた。

「こういうのお好きですよね」

 バイスは囁きながらマークの口元に細いベルトを噛ませる。ベルトをガチガチに締めず優しく締めて猿轡にもなっていないが。
 興奮しているマークは気づかずベルトを噛みしめて腰を揺する。

「マーク先生、愛しています。愛のある交尾は長く交尾をするんですよ。
 長ければ長いほど愛しているということなんです」

 そう、教えられてきた言葉をバイスはマークに告げる。
 そしてマークの好きな奥を軽く小突き始める。激しくしてあげない。悦ぶから。
 性の捌け口としてインサニアから乱暴に扱われ、そうされるのが大好きなマークをその望み通りに犯すことをバイスは避けた。
 自分を見て欲しかったから。愛しているから。

 ―――インサニアではなくバイスだから。

「んぅぅ…!」

 マークは呻いて涙を零しながら快楽を追う。
 イキそうでイけない、期待する刺激をバイスが避けてくる。
 じわじわとした絶頂手前の刺激に身体が身悶える。

「ひぅ!」

 バイスがシャツ越しにマークの乳首に歯を立てる。マークの悲鳴が上がった。
 ぷしゅ、と小さな音を立てながら先走りに混じりながら精液が溢れた。
 イったのにちゃんとイけず苦し気にマークは唸る。
 バイスは歯を立てて嚙みながら前後に動かしている腰を強める。

「うっ♡ う、うっ♡ ううううっっ!」

 マークのタイミングと合わせて奥に熱を放たれる。
 痙攣を起こすマークにバイスはキスを落としていく。

「ふっ♡ うっ♡ うー…♡」

 マークの中は伸縮を繰り返し、まだ中に入ったままのバイスのナニから精液を吸いだそうとしているかの動きだった。

「んふ。かわいらしい」

 バイスは繋がったままマークを抱き上げてソファに座る。マークを膝の上に座らせるような体勢だ。
 挿入したままである。自重で挿入が深まってマークは仰け反りながらハートいっぱいの喘ぎを漏らす。
 緩い猿轡も食いしばっていたのが今の喘ぎで外れてしまう。

「可愛いですよ、マーク先生。愛おしいです…」

 バイスの手が優しくマークの背や腰を撫でる。
 マークはその手の動きだけで体を震わせ感じ入ってしまう。

「マーク先生は?僕のこと愛していますか?」
「うんっ、好き、好きィ…」
「ありがとうございます」
「はっ!あ、ぁんっ!あっ!あっ!」

 突き上げられ始めてマークは短い声を上げながら跳ねる。
 縛られて不自由な両手で顔を隠し、ときたま指を噛みしめ絶頂まで迎えなかった刺激に身悶えながら。

「愛を交わす交尾なんですよマーク先生」

 バイスはマークを抱きしめる、密着されてマークのペニスがバイスの腹で擦られる形になる。
 その状態で犯されたマークは我慢できるはずもなく射精しバイスと自分の腹を白濁塗れにする。
 生暖かいそれを感じながら、ぬちゃぬちゃという音を聞きながら優しく犯され続ける。

「はー…♡ はー…♡」

 耳まで真っ赤にさせたマークの息遣いが次第に怪しくなってくる。
 バイスの肩を枕にして体を完全に預けてしまっていた。

「愛を感じてくれてますよね、マーク先生」
「あ、い…」
「もう先生はこんなにお互いを精液でドロドロにし合ってるんですよ。
 僕の精液で中がいっぱいなのわかるでしょう?
 先生は今、愛に満たされているんです。愛を感じてる。僕も感じています」
「俺、はぁ…」
「僕のマーク先生、ふふ、もうこんなに交尾しているのだからマーク先生の許可なんていらないかな?
 愛があるからこその今ですよ」

 バイスの手がマークの脚にかかり、身体を持ち上げられたマークは横に寝かされる。
 栓をされていた状態だった秘所からごぷごぷと下品な音を当てながらバイスの精液が溢れ出る。

「あ、ばいす、の、ぜんぶ、でちゃう、ぜんぶ」
「勿体ないですね、愛が流れ出ちゃって」

 バイスはマークに被さりながら抱いてキスをする。

「また愛は注げます。欲しいでしょ?また交尾しましょうね、たっぷりと長い交尾。」
「うん…、する、またァ…♡ ばいすと、するぅ…」
「んふふ。頭バカになっちゃっててかわいいです。本当、可愛い―――」

 バイスは秘所に指を捻じ込んで掻き回す。
 マークはその刺激に嬉しそうな声を上げながら腰を跳ねさせる。

「僕の愛を求めてくださいね、マーク先生。僕の愛ですよ…」

 繰り返し囁くバイス。
 快楽で麻痺した思考の中、バイスの囁きが染み込んでくるような不思議な感覚を味わいながらマークはそれを受け入れた。



   ◇◇◇◇



 腹の奥が疼くような感覚にマークは赤面し腹に手を添え思わず俯く。

「おや?排卵してらっしゃる」
「ただ思い出してサカってるだけだろ。男に卵巣はない」

 マークの様子にバイスとインサニアが会話する。
 なんだかんだでインサニアはバイスにキレたものの、シェアならまぁいいか…という妥協点を見つけて仲良くなってしまった。
 そこからたまに3Pもしつつマークはバイスの『愛』を注がれ続けているのである。
 そのせいなのか、身体がおかしくなってしまった。
 身体が切なさを覚えてセックスを求めるようになってしまったのであった。

「マーク先生、交尾しますか?」
「仕事、ちゅう…だからぁ…!」
「もう仕事出来ないだろ。バイスとシていいぞ」
「じゃあここのベッドをお借りします」
「いや、声、出るから」
「いいだろ別に。お前の声だし」
「俺がよくないんだよ!仕事中にそんなことしてるのもダメなのに!」
「はいはい、そうですね。さぁ行きましょう」

 バイスに運ばれていくマーク。
 医務室の隣の部屋はベッドが置かれている部屋になりよっぽどのことがないと利用する者はいない。なので使いたい放題。
 しばらくして仕事を切り上げたインサニアは二人を見るため隣の部屋に行きカーテンを開く。
 服は脱ぎ散らかすことなく、極力着衣のまま四つん這いのマークにバイスが覆いかぶさっていた。

「妊娠しますよ、ほら、キてるでしょう?」
「んぅぅ♡ にんしん、するっ!じゅせーしてるっ…♡」

 仄暗い笑みを浮かべたバイスの囁きにマークが答えて身悶えている。
 男は受精とかしない。
 インサニアは真顔で二人を眺める。
 マークの身体がおかしくなっているのも胡散臭いバイスが何か仕込んでいるのでは?と思うが身体検査をしてもなにも引っかからない。
 洗脳的なものをやっているのかもしれないが、まぁマークは気持ちよさげなのでいいかと思うインサニア。
 マークはシーツをくしゃくしゃに握りしめ痙攣している。
 舌を垂らしだらしない顔。
 インサニアはムラっとしたのでそのマークの頭を掴み自身のナニを見せつける。
 マークはちゃんとしゃぶり付く。
 うっとりした顔で。その顔がインサニアの好みだった。

「欲張りですよねぇマーク先生。僕がこんなに愛を注いでもインサニア先生のものをしゃぶるんですから」
「淫乱だからなこいつ」
「…そうですね。ふふ、早く妊娠しましょうねマーク先生」
「男は妊娠しない」
「そうですね」

 うふ、とほほ笑むバイス。
 何もしてないよな?と心配になるインサニアである。
 マークが大丈夫そうならそれでいいのだが。
 本人はえろい顔でちんこを懸命にしゃぶっているのでどうしようもなかった。 


あとがき

初手、バイスくんがとっても積極的だったら…みたいなIFのお話でした。
お父様(マーク)の愛に飢えすぎているバイスくんがマーク先生をロックオンして『お父様』に育てようとしている…。