正史A

ラミレスの最後

 銀色の髪、銀色の鎧を着て、青い眼で無垢な表情を浮かべるその顔は『メアリー』だった。
 悪趣味だと思った。顔だけ『メアリー』なのだから。
 なぜその顔にしたのか、ラミレスはクラレンスを嫌悪する。
 カルペ=ディエムと名付けられた兵器制御用女性型アンドロイドはメモリーを失っていて敵対組織に囲われていた。
 ラミレスは容赦なく攻撃した。
 存在そのものをなかったことにしたかった。
 大好きな女性の顔を見たくなかった。
 苦しくて、仕方がなくて。

「メアリー!!!」
「私はメアリーではありません」

 ヒステリックに叫んでもカルペは困惑気味に否定するだけ。
 お互いに乗る機体の性能差はないはずなのに、攻撃が通らない。
 冷静になれない自分がいた。
 カルペの攻撃に慈悲はない。
 記憶がないのだから、そうだろう。

「私は行かなくてはなりません。彼を止めるのです。邪魔をしないで」

 カルペからの大振りの一撃を2本の剣を交えて受け止める。
 このままどちらかが相手の剣を折れば良い。

「私を壊したら彼を止められなくなります。貴方も困るのでは?」
「知らナイッ!そんなコト、ワタシには関係ナイ!」
「そうですか…」
 悲しそうな顔をする。
 やめてほしい、自分が間違っているようなその顔は。
 自分は間違っていない、ラミレスは心の中で叫ぶ。

 剣が折れる。
 ラミレスの機体を大剣が薙いで爆発を起こす。


    ◇◇◇◇


 目覚めると非常灯に切り替わったコクピット内。
 黒いゴミみたいなのが漂っているが、自分の血だと気づいて―――ラミレスは息を吐くこともできなかった。
 身体が動かない。

「ようリッキー」

 フリッツの機体が横にいるらしい、音のみの通信だ。
 ラミレスが気づいたことが解ったのは野生の勘であろう。

「女のケツ追いかけて瀕死かぁ、あっけねぇ野郎だな」

 うるさい、うるさいうるさい。
 口からぬるっと何かが出てくる。
 声は出なかった。
 一言罵ってやりたかった。
 瞼が重い、目を閉じようとしてくる。

「トドメ刺してやるよ、一応俺たち敵対してっからな。
 でも長い付き合いだ。墓ぐらいは作って埋めてやるよ」

 ノコギリの駆動音がする。そして金属がひしゃげる音。
 死体も残らないだろうが、と思いながらラミレスは意識を暗闇の中へ手放した。 


    ◇◇◇◇


 カルペ=ディエムをメアリーとして追い縋って、自分はどうしたかったのかとラミレスは暗闇の中で思う。
 人形を女として扱いたかったのだろうか?母として縋りたかったのだろうか?
 クラレンスへの嫌悪感で全ての感情が塗りつぶされていたのは確かだった。

 ―――壊したかった。

 これだけだ、純粋にこの気持ちだけ。
 メアリーへの想いも何もない。
 自分の心には嫌悪しかなかったのだ。

 フォースの力も抜けて魂は完全に闇へ溶けていく。


あとがき

補足説明
組織がぐちゃぐちゃに入り乱れた戦場です。
カルペはP連盟所属、ラミレスはC連邦所属で連盟と連邦は敵対してます。
プレイヤー(もともとこれらはROの知り合いが集まって作ったゲームなのです)は銀河連邦軍でP連盟はこちらと同盟を結んでいる。
フリッツは傭兵でカルペが止めようとしている兵器が狙っている機械惑星の軍に雇われています。
機械惑星は銀河連邦軍とは表で握手してますが根っこで敵対しています。C連邦とは手を組んでいません。
C連邦の一部が「なんか戦場が増えるといいよね」ってことでちょっかいを出しています。(ごめんなさい。他所様のキャラと設定を取り除いているので自前で整えると話が薄くなってふんわりになっています)
ラミレスはC連邦の事情とか関係なしに襲い掛かってます。メアリーとの思い出を汚すクラレンスが許せないのだ。