正史A

麒麟とバイスくん

(前回の戦闘より少し出力が落ちているね…)

 バイスは端末に映し出されるデータと睨めっこしながら思う。
 麒麟の主砲の話である。
 拾われただけで赤の他人である自分にはまったくこれっぽっちも関係ない話ではあるのだが、気になるのだ。
 父譲りの性分なのか自分独自の感性なのか、その辺は曖昧なのだが、この主砲がその辺の戦艦の普通の主砲だったらまったく気にしない、整備士の腕が悪いんだなで終わる話なのだ。だがこの戦艦の主砲は魔術的技術の主砲なので、錬金術師として魔術師として気になりまくる。
 だってこの戦艦は4人だけで回してるんだもの。
 整備は整備ロボにやらせてるだろうが、現状のデータがあるので。
 話だけでもしてみるか、とバイスは艦長たちがいるコントロール室へ向かう。

「ん?どうしたバイス?」

 艦長の彰がバイスに気づいて声をかける。

「回数を追うごとに太さが無くなってきているから僕に身を委ねさせて欲しいな」
「えっちな話してる?」
「主語、主語を言うてや」

 だいぶバイスに慣れてきたメンツなので落ち着いて彰と瑠璃は突っ込んでいた。





「気にはなってましたんやで。一応パーツ交換で凌いでたんですぅ。」

 バイスからの話を聞いてメカニック担当の瑠璃はそう答えながら彰の席を動かして床を剥がしている。

「椰弓重工に戻ることもできないしな、仕方ない。でもバイスがいてくれてよかったなぁ」

 呑気な彰。

「あのねぇ、部外者に見せちゃダメなんですよ本当はこういうの」

 呆れてる竜。
 麒麟の主砲である鬼門砲は彰の魔力をメインに4人の四獣の力を変換しているもので、収集装置は彰の席の下にしていた。
 バイスはマニュアルを読みこんでいた。
 マニュアルは魔術的なことは書いていない、「こういうパーツをこう組み立てています」という書き方だ。
 定期的なパーツ交換をしているところを除いていき、まぁここらへんかなと目星をつけてバイスは中を覗いてみることにした。
 アマツ式の術式は専門外ではあるが蒼の時間城で知識として習ってはいる。
 ボクの考えたオリジナル術式!などといった物だったらお手上げだったがそうではなさそうでよかった。
 割とアマツ式にはボクオリが多いので時間城で習ったときは本気で滅ぼしてやろうかと思ったことがある。
 あと父が好きそうだなとも思った、「僕の考えた最強の○○」みたいなの。

「これ試運転されました?」
「してない。試運転の時にかっぱらったからな」
「………」

 ジト目になるバイス。

「言ってやってください、バカって」

 竜がバイスに囁く。瑠璃もうなずいているのでそこは彰に味方する者はいないのだろう。

「原因は負荷がかかると出力を抑える部分が敏感すぎてヤるたびに締め上げるようになっています」
「えっちな話してる?」
「どうしますか?構想通りに修正するか、リミッター解除をして高出力でぶっといのを出すか」
「リミッター解除で」

 竜に殴られる彰。

「普通に修正してください、普通に」


    ◇◇◇◇


「リミッター解除、絶対必要だと思うんだけどなぁ…」

 まだ諦めていない彰の前に瑠璃が茶を置く。
 バイスも瑠璃からお茶を受け取り、口をつけてテーブルに置く。

「ところで精霊の力も吸収する術式でしたけど、みなさん精霊憑きなんですか?」
「精霊?ああ、四獣か。俺たちは選ばれし4人なんだぞ、かっこいいだろう。

 俺は白虎に選ばれているんだ」
 彰の膝上に白い虎が現れる。
 太みがあり、脚が短くてふわふわしている。

「おお、かわいいですね…おや触れる」

 バイスは跳んできた白虎を抱っこして前足をくにくにと触れる。
 そして顔の前に持ち上げていく。

「かわいいふぐり」
「なんかいやらしいから消すね?」

 消える白虎。

「まだふわふわのふぐりを触っていなかったのですが」
「えっちなことやめてね?」
「他の方たちも見せてくれないのですか?」
「えーいややわー」

 明確な拒絶にバイスは薄笑いを浮かべたまま残念ですねと心無く述べた。