正史A

ジャック視点の小話

「我は闇の王、不死王であるぞ!もっと崇めよ!」
『不死王さま素敵~~~!』

 ジャックの身体を乗っ取ったダークロードとジャックの身体を受け皿に利用した闇神官阿佐迦はずっとこの調子であった。
 魔界から地上へ来ると力が弱体化するらしいが知能も下がっているとしか思えないほど、不死王は人間じみていた。
 阿佐迦が知能を下げさせているのだと周りから思われもしたが。
 ちょっと影響は受けているかもしれないが。
 ただ不死王の最後は、人間のような行動をとったのである。



 仲間を守るための、自己犠牲。



「わたしにはできないことをしたな」

 ジャックはソファに寝転び、天井を眺めながらじわりじわりと脳から滲むように思い出されてくる記憶に対して感想を呟く。
 不死王に乗っ取られていた時の記憶はなかった。
 魂は完全に不死王に喰われ、闇に溶けていたはずなのだ。
 しかし奇跡が起こって自分は生きている。
 無人戦艦大隊『ボウ=ベル』に内蔵されていた『賢者の石』の力なのか、それとは別の理由なのか、ジャックには解らない。
 不死王が乗っ取っていた時期の記憶はゆっくりとだが蘇りジャックのものになってきている。
 不死王の感情もおぼろげながら読めた。
 本人は困惑しっぱなしだったようだ。あんなに堂々と偉そうな態度を取りつつも、思ったよりも本来の力がなくて困惑していたのだ。
 それはそう、不死王の力は横取りされていたのだから。
 それに気づけぬほどに不死王は弱体化していた。不死王に直接影響を受けている阿佐迦が気づけよという話なのだが、後の祭りである。
 そして不死王は『ボウ=ベル』の起動と引き換えに魂を焼かれて消失した。
 これはトラップのつもりだったのだ、起動させたくなくて。起動した者を殺すように…。
 不死王もトラップだと解っていたはずだ、ジャックの記憶を読んでいたのだから。
 しかしあまりにも時間がなかった。
 起動しなければ不死王の力を手にしていた者が勝者となる。だから行動に移した、闇の力を消し去るために。それだけの話。



「ジャック、ただいま」


 ドキリとするジャック。
 キュルテンが帰ってきたのだ。完全に住み着いている。許可した覚えはないのに。
 ジャックの目にはキュルテンの姿が血みどろの男に見える。
 返り血で血を滴らせているように見えている。まだ人型なのでマシなほうだ。血生臭いけれど。
 人が人に見えない眼なので極力、人付き合いはしたくないのだが。キュルテンは勝手にくっついてくるので困る。
 甥っ子であり息子であるリチャードは人型ではないけれど可愛かった。
 黒くてもやもやした塊ではあるけど、黒い目で見つめてきて、抱きしめるとふわふわで温かくてなんかイイ感じ。
 今は大きく育ってしまってなかなか抱きしめさせてもらえないけれど。
 リチャードは今どうしているだろう、どこかで死んでいないか心配だ。

「難しい顔をして、他の男のこと考えてるだろ」
「色んな事を考えてるんだ」

 キュルテンが頬を撫でてくる。真っ赤な手だ。
 ねちゃりとした血の感触があまりよろしくない。
 幻覚なのだけど。―――幻覚だよな?ちょっと自信がない。


 ジャックはキュルテンを信用していないのだ。