Ragnarok Online

フレッド=クラレンスの日記 -後編-

 この街の裏通りは治安が悪い。
 騎士団が取り締まってはいるものの、その目を掻い潜って悪さをする者がいるのだ。
 娼婦、ごろつき、浮浪者、貧乏な冒険者、ワケアリの者、etc...etc...
 そんな裏道を黒い帽子を被ったウィザードが歩く。

「ん…?」

 風に乗って流れてきた、馴染みのある匂いに足を止める。
 暗い通りから流れてくる、血の匂い。
 ウィザードは興味本位でその匂いのもとへと足を進めた。





 酷い血の匂いに咽そうになりながら、ウィザードは見つけた。
 首の無い女に被さって動いている長い黒髪の男。
 恍惚とした顔で死体を犯している。
 焦点が合ってない、正常ではないのだろう。
 しかし彼にとってはそんな彼に好意が持てたし、痩せ細った姿が好みであった。

「誰だ…」

 男は鋭い目つきでウィザードの方向へ視線を向けながら斧を掴む。
 あの細い腕であんな大きな斧を扱うとは、薬のせいかそれとも魔法でもかかっているのか。

「楽しみを邪魔したことは詫びるよ」

 ウィザードは物陰から姿を現し謝罪する。
 男は殺気を出したまま、じりじりと後ずさる。

「誰にも言わないから、そう怒らないでくれ」
「………」

 男は素早い動きで襲い掛かってきた。
 ウィザードは咄嗟に手を振り上げる。

「!!」

 男は軽やかにバックステップで後ろへ飛ぶ。
 男がいた足元――ウィザードの目の前に緑色の気泡が密集した陣(クァグマイア)が展開された。

「足止めしようと思ったんだがなぁ」
「…」

 男はウィザードを睨んで転がっていた女の頭をひっ掴むと、そのまま逃亡する。

「あ、待ってくれ!」

 追いかけるが、見失ってしまった。






 それから数日後、再び二人は再会した。
 またもウィザードの方から発見する形になったのだが。

「やぁ、またあったね」

 道端で倒れている男に話しかける。

「誰…?」

 酒瓶を掴んだまま行き倒れのように寝転がっている男は問いかける。

「ほら、この前お前のお楽しみ中を邪魔しちゃった」
「あぁ、ああ…?」

 分かっているのか分かっていないのか、なんだか不安げな頷きを繰り返す。

「貴方ジャックの知り合い?」

 若い娼婦がウィザードに話しかけてきた。

「こいつジャックって名前なの?」
「みんなそう呼んでるからそうなんでしょ。知り合いだったらどっかつれてってよ」
「?」
「メアリィ~…愛してるよぉ」
「煩いわね飲んだくれ!営業妨害しないでよ!!!」
「あぁ…」

 ウィザードは納得する。
 どうやら娼婦の店の前で寝転がっているようだ。迷惑な話である。

「メアリー…」
「私を抱きたかったら金払いなさいよね! じゃ、お願いね」

 ニッコリ営業スマイルをウィザードに浮かべ、メアリーは店の中へ戻っていく。

「ジャック、惚れた女に意地悪なことをするだなんて恥ずかしいことしてるじゃないか」
「だってメアリーは俺のモンなんだヨ」

 呂律が回っていないが、なんとか聞き取れる。
 ウィザードはジャックの持っていた酒瓶を取り上げて一口飲む。

「最悪な酒だな。私が奢ってあげるから飲みにいかないか?」
「……」





「安い酒ですまない。私も裕福といったわけじゃなくて…」
「お前、なんて名前?」
「ペーター=キュルテン」
「知らないネェ。俺より年下ぁ……? なんでぇ俺にかまうノ?」

 ジャックは酒を飲みながらぶつぶつ呟く。

「お前が好み」
「あ、そぉ。」
「あとお前の趣向にも共感を覚える。久しぶりに刺激を受けた」
「ヒヒ…気持ちイイよねぇー」
「気持ちイイな…」
「あんた悪いこトしてるでしょぉー」

 ジャックはその鋭い目でキュルテンを見上げる。
 真っ黒な瞳は深淵のようで、なにも映し出さない。

「多少は、な。小さい頃はよく盗みをしたなぁ」
「今は?」
「………」

 キュルテンは微笑んで酒を飲む。

「もっと飲んでイーイ?」
「どうぞ」



   ◆◆◆◆



 ジャックは古いアパートの一室で暮らしているようであった。
 キュルテンは歩けないほどフラフラになっているジャックをその部屋へ運ぶとベットに寝かせる。

「なかなかステキな部屋だな」

 見回しながら呟く。

「ん……」

 ジャックは眉を顰めながら身を捩る。

「眠るのか?」
「んー」
「ジャック…」

 キュルテンはマントと帽子を脱ぐとジャックに被さった。

「やぁ…」

 キスから逃れるジャック。

「なニィ…?」
「私の相手をしてくれ」
「やだァ」

 キュルテンはジャックの両手を縛り上げる。

「せっかく出会ったんだから楽しもうじゃないか?ん?」
「男はヤなのォ…」
「安心しろ、私はどんな相手でもOKだ。なんせ初めてが家畜だったからな」

 ジタバタ暴れるジャックの足を押さえ込みながら、キュルテンは器用にズボンを脱がしていく。

「ヤッ…ヤダッ…!ヤメロ…いやぁぁぁ!!」
「フフ……」

 嫌がるジャックに興奮しながら、キュルテンは一気に貫く。

「ヒァァァッ…アァッァァァ……」

 仰け反って、ガクガクと大きく震えるジャック。

「クッ…ククッ…!」

 キュルテンは残酷な妄想を描きながらジャックを犯した。
 犯しながらジャックの細い身体にナイフを突き刺したり、引き裂いたり等といった殺人空想。
 その空想がより一層キュルテンを興奮させる。
 ジャックは酒と薬のせいか、初めは嫌がっていたもののキュルテンに身を委ねていた。
 見様によっては心神喪失になっているのかもしれない。
 しかし微かに声を漏らしながら震えて反応していた。

「ジャック…」
「んあ」

 ジャックの頭を引き寄せてキスを交わす。

「あぁ、一緒にイこうなジャック…」
「ぐぅっ」

 紐で首を絞められる。

「気持ちよくなるよ、一緒にイこうな、一緒に……」
「アッ…ッ……!!!!!」

 ジタバタと必死に暴れるジャックだが、キュルテンの力が強かった。

「ッ!!」








「気持ち良かったろ?」

 気絶したジャックの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
 青ざめた顔でジャックは失禁していた。
 呼吸はしているので死んではいない。首に残った痕を撫でて、興奮を覚えるキュルテン。
 昂ってしまったので自慰で処理したあと、シャワーを借りて身なりを整えたキュルテンはジャックが目覚めるまで部屋の観察をした。
 掃除も何も手をつけていない部屋の中、クローゼットがドス黒く汚れていた。
 血だろう。
 クローゼットを開くと女の首がごろごろとあった。
 コレクションにしているのか?と首を傾げる。

「あら?客?」
「!」

 アサシンクロスの女が入ってくる。

「邪魔しちゃったようね」

 ジャックを見てそう呟きながら、女は小袋を懐から取り出すと適当にテーブルの上に置く。
 音で中身が金なのだと分かった。

「はいはいちょっとごめんねー」

 女はクローゼットの中から女の首をポイポイと麻袋に詰め込み始めた。

「…貴女は?」
「顔集めが趣味なの。これはダメね」

 顔にキズのある首は置きながらそう答え、さっさと出て行く。

「変わった女だな。まぁ世の中いろんな人間がいるが…ん?日記?」

 クローゼットの隅に汚れた日記が落ちていた。
 拾ってめくってみる。






 まず、初めに記しておく。
 この日記を私以外の誰かが手に取っているのだとすればそれは恐らく私の身に何かが起こっている、もしくは起こってしまった後なのだろう。
 発狂死か自殺か…もしかすると発狂中で理性を失っているのかもしれない。
 だから先に書いておく、まだ私に正気というものが微かに残っている時に書いたものだと。


F.C.   







「F…C…?ジャックの本名か?」

 読んでいくキュルテン。
 何事もない日々から段々と狂っていく日常が淡々と綴られていた。
 最後の方になると何を書いているのか読めない。
 最後に書かれたページなど、ペンでむちゃくちゃに引っ掻いただけだ。
 日付も書かれていないのでわからないが、この瞬間にこのF.Cという男はジャックと化したのであろう。

「……ん」
「気づいたかジャック?」
「ッ…」

 キュルテンを睨むジャック。

「これはお前の日記?」
「知らない…お前むちゃくちゃダワ」

 ジャックは身体を撫でてキュルテンの白濁を確認すると顔を顰める。

「それが愛だよ、私にとってはね」
「腰が痛い…あぁ、ロザリア来たの」

 汚れたシーツで身体の汚れを拭いながら、テーブルに置かれた金を見て呟く。

「シャワーを浴びなよ」
「動けない」
「ははは、それじゃあ失礼する。」

 髪を掻き上げて帽子を被る。

「また酒を奢るよ」
「お断り」
「じゃあ我が家に招待しようか」
「それこそ殺される。もういい出て行け」
「つれないな、機嫌を直してくれ愛しいジャック」

 キュルテンはクスクス笑いながら日記をジャックに投げて返すと出て行く。

「……」

 ジャックは日記を開く。

「キャハハハハハハ!きったネェ字!!!!」

 腹を抱えて笑いながら、日記を床へ投げ捨てた。


↓↓↓当時のあとがき↓↓↓
キュルテンとジャックもえーもえもえー
キュルテンは殴りウィザード。
↑↑↑ここまで↑↑↑
変な表現を修正しました。それ以外の変更はないです。
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