首狩鬼
「どういう人間の肉体がいいわけ?」
「ダークロード様の意識に適応する身体はそうそうありません。
その身体が綺麗…つまり神への信仰をカケラでも行っている者の肉体であったりすればダークロード様の意識と肉体は馴染みません」
ダークプリーストはロザリアに説明する。
「私たちのような人間が良いのです。血と憎悪と闇に染まった身体と魂が必要です」
「ふーん…」
ロザリアは記憶をめぐらせる。
「あぁ、丁度良いのが知り合いにいるわ」
「知り合いを犠牲にするんですか」
「悪い?ま、有効に使えるんだから彼も喜ぶでしょ」
「どんな人なんですか?」
「変わってる子よ」
ロザリアはそう答えてニッコリ微笑んだ。
◇◇◇◇
彼の好みそうな薄暗い路地裏へ足を進める。
背の高い男が石畳の地に転がっていた。地に投げ出されている黒い長髪は手入れをされず絡まっていて不気味だ。
ロクなものを食べていないのか、と思わせるほど痩せている。
だが恐らく食べることを忘れるのだと思う。少し交流すれば生活力がないことが解る。
そんな男がロザリアの知り合いである。
名前など聞いた事がない。
巷では『首狩鬼』と名前が付けられている殺人鬼。
騎士団も探している。指名手配中の男。
「…♪…ン……♪」
仰向けの彼からかすかに鼻歌が聞こえてくる。
鮮血の匂いがする。濃くなってくる。どんどん濃く――
「ふむ…」
転がっている生首を確認する。
趣味を終えたあとらしい、首のない女の死体が彼の近くに転がっていることに気づく。
犠牲者の服などはボロボロに引き千切られていて、相当良かったのか楽しんだのが解る。
気分が良さそうな顔で鼻歌を歌って快感後の余韻に浸っていたのだ。
彼は首を狩る事に興奮を覚えるし、その死体にも興奮するそうな。
死体嗜好家というやつなのかもしれない。
「アラ、ロザリアさんいらっしゃイ」
向こうがやっとロザリアの存在に気づいたらしく、狂気を帯び血走った目の焦点をロザリアに合わせた。
「また新しい首(かお)が欲しいの?そこにあるわヨ」
彼女の足元に転がっている首をその血走った目で指す。
「残念ね、今日は顔が欲しいんじゃないのよね。」
「…?」
ロザリアは歩み寄りながら呟く。
「他人の恐怖、憎悪、鮮血が染みこんだその身体。闇に染まったその魂。
お手ごろなのよね、アナタ。
丁度いいのよアナタの身体アナタの魂。」
「な、なに…?なんなノ…?」
異常な空気を読み取ったのか首狩鬼は立ち上がって逃れるように後ずさっていく。
「ちょっと不死王サマにその身体貸しなさいな。
魂は食われちゃうだろうけどね。」
残酷な笑みを浮かべる。
「あっう…あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
悲鳴を上げながら走り出す首狩鬼。
「フフ…逃げられやしないわ」
「はぁ、はぁっ…!」
必死に走る。
殺される、いや、殺されるよりももっと酷い事をされる。本能がそう悟った。
(魔族めっ…ロクなやつがいないのよ魔族なんて…!)
「うあっ」
突然目の前に現れた何かとぶつかり、尻餅をつく。
「大丈夫ですか?」
奇妙な声色に思わず相手を見上げる。
声をかけてきたのはプリースト。薄暗くて相手の顔がわからなかった。
手を差し出されたが、首狩鬼は顔を恐怖に引きつらせる。
「きゃあああああああっ!!!!!」
這うようにしてそのプリーストから逃げる。
「なるほど、彼は『目』がいいのですね」
呟くプリースト。
彼は人間から見れば好青年な黒髪のハイプリースト。
しかし、首狩鬼には白い髪の死体に見えたのだ。
「姿をどんなに人間に仕立てあげても彼の目に映るのは本来の姿…なかなか上質な人間じゃないですか」
とても気に入ったらしい。ダークプリーストは嬉しそうに微笑んだ。
◇◆◇◆
彼にとって人ゴミに紛れて『怪物』が堂々と歩いているのは極普通だった。
自分も人の中に紛れて歩いているから極自然なことなのだろうと思っていた。
人間というのは鈍感なのだと。自分はただカンが良いだけなのだと。
「……」
首狩鬼は座り込むとぐったりと項垂れた。
逃げられないかもしれない。
怖くて怖くて仕方が無い。
「逃げても無駄よ」
「ひぃっ…!」
頭を掴まれる。ロザリアが微笑んで彼を見下ろしていた。
「大丈夫、安心しなさい…あなたも私たちの仲間になるだけだから」
死体の皮を被った闇は、彼にそう言い放った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
儀式の間。そこで首狩鬼は拘束されて魔法陣の中央に寝かされていた。
「何か入ってくル!コナイデ!!」
ヒステリックに叫びながら暴れている。
「今ね『道』を作ってるだけだから。素直に受け入れなさい。気分悪いだろうけど」
ぶつぶつと呪文を唱えているダークプリーストに代わってロザリアが説明してくれる。
「ぐあっ…あっ……!」
大きく仰け反って痙攣を起こす。
その顔は恐怖に歪んだまま白目を向いたまま目を見開いていた。
どうやら『繋がった』らしい。
「アナタの魂は闇と同化しその肉体はダークロード様がお使いになるのよ。
光栄に思いなさいね。そんな経験できるのアナタだけよきっと」
ダークプリーストの髪が逆立つ。呪文が完成したようだ。
「魔界の常闇、純粋なる魔、黒き秩序の尊―――黒き魂喰らいておいでください不死王様」
魔法陣が不気味に発光する。
黒い稲妻が迸る。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
首狩鬼の断末魔とともに、彼の身体は闇に呑まれていった。
◇◆◇◆
「というわけで、この身体は前科持ちなのだ」
「なるほど、前科持ちだと街で支障でるのにそこんとこまったく考えてないんだな。お前の部下らしい」
「うるせぇ!」
ハイウィザードと剣士子は走りながら会話をする。
「止まれ殺人鬼!!!」
警邏中だった騎士が追ってくる。
「ダークロード、お前足遅い」
「仕方なかろう!人間の身体じゃこれが精一杯だ!
ドッペルゲンガー、おぬしの様に変装じゃないのだぞ!」
ギャーギャー喚くダークロード。
喚いたせいで息を荒く乱す。おバカである。
「後ろはどんどん距離を縮めてきてるじゃない」
「知るか!」
「面倒臭いな、跳ぼう」
「は?」
ドッペルゲンガーはダークロードの服を掴むとそのままジャンプする。
「いきなりとぶなぁぁぁっ!!!」
ドッペルゲンガーの腕に抱きつきながら叫ぶ。情けない姿だ。
ぴょんぴょんと軽い身のこなしで屋根の上を飛んで行き城壁を飛び越えて外へ脱出する。
「お前さぁ『蝿の羽』とか『テレポート』なかったの?」
「咄嗟にそんなことできるか!」
「…鈍すぎだぞお前」
おわり
↓↓↓当時のあとがき↓↓↓
書きたくなったので書いてみました。
萌えるよねー(ぇ
↑↑↑ここまで↑↑↑
文章が前後して変だったりしたところを修正しました。