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グラディエフという街のベレッツヘム病院。
その一室に長身の黒髪の医者が訪問に来た。
「エリザベス・ピエロニ、ご機嫌いかがかな?」
「インサニア先生…」
美しい金髪の少女が医者へ目を向ける。
病気のせいか色白く、覇気が無かった。
「明日の手術だが心配しなくてもいいよ、絶対に成功させるからね」
微笑むインサニア・テネブラルム。
「パパ来るかな」
「さぁ…先生は聞いてないからわからないな」
「絶対来ないわね。」
エリザベスは天井へと視線を戻す。
「パパはわたしが死ねばいいと思っているのよ。」
「そんなことないよ、お父さんを悪く言っちゃいけない」
「…先生、わたしね…視えるの」
「何が?」
「先生の後ろにいっぱい怖い人がいる」
指を指すのでつられて後ろを振り向くが、付き添いの看護婦以外誰もいない。
看護婦も眉を寄せて困った顔をしていた。
(…先生、いつものことですから)
小声で耳打ちする看護婦。
「みんな苦しそう…先生もパパと同じ、いっぱい殺したのね」
「……手術は失敗したことは無いよ?何を言ってるんだ、もういい寝てなさい」
インサニアは口調を荒げながら病室を出る。
「気持ち悪いガキだな」
少女の前で見せていた穏やかな表情から豹変して冷血そうな表情になる。
口調も穏やかさが消えていた。
これが本来の彼である。
「はい…」
相槌をうつ看護婦。
「あ、先生どこへ?」
「地下だ。あいつの様子も見なくてはな」
インサニアはスタスタと早足で病院の地下にある収容所のような病室へ向かった。
この病院は収容所の役目も受けており、地下の患者は基本的に自殺しようとする者や暴れる者など
少々社会に適合できない者たちを『治療』という名目で収容してあるのである。
家族に捨てられた悲しい患者達だ。
インサニアはさして何も感じることはなく、一番奥にある病室のドアの窓を覗く。
患者がきちんと拘束されていることを確認し、ドアのロックを解除して入った。
「やぁマーク、今日も元気そうだな」
「っ………!!」
何かを叫んでいるか、彼の喉はインサニアが潰してしまったので声は出せない。
「あぁ…ずいぶんと細くなったな。」
マークの腕を握りながら呟くインサニア。
「マークのことを思ってわたしは定期的に見舞いに来てやってるんだ。もう少し喜べよ。
クク…お前が悪いんだよ、わたしの周りをウロウロするから…」
低く笑うインサニア。
「殺されなくて良かったな…安心しろ、殺しはしない。死因は衰弱死だ」
「…!」
「何も知らずにわたしの友人であれば良かったんだ。
嗅ぎまわらなければこんな惨めな『患者』ではなく晴れやかな『医者』でいられたのになマーク先生?」
背を向け歩き出すインサニア。
「また来るよ。お前の分の仕事もしなくちゃいけない」
それだけ告げて病室をでた。
インサニアには二つの顔があった。
表の顔であるベレッツヘム病院の医師の一人。
裏の顔は依頼を受けて患者を殺す医師である。
無論、裏の顔を誰も知らない。薄々感づいている者もいるであろうがマークのこともあり探りに来ない。
主に患者の身内や知り合いの依頼により患者を殺す。
患者を殺すことに抵抗は無かった。
表の立場さえあれば良し。あとは小遣い稼ぎという感覚なのだ。
今回の依頼はエリザベス・ピエロニの暗殺。父親からの依頼であった。
彼女の心臓の手術は成功し、今彼女は回復に向かい始めている。
真夜中、インサニアは静かに病室に入りポケットから注射器と薬を取り出す。
針と薬をセットし、少女の腕を掴もうと手を伸ばす。
パンッ
「!?」
「やっぱり、殺しにきた…!」
エリザベスが身を起こしインサニアの手を払っていた。
しかしその表情は苦しそうだ。
「だめだよ、魔法で傷口が塞がっていても体力は回復してない。安静にしないと……」
笑みを貼り付けたような顔で言うインサニア。
「パパね!?パパが殺せっていったのね!?」
「そうだよ、君のパパが殺せって言ったんだよ…!」
「うぐぅ!!!?」
インサニアはエリザベスの口を塞ぎ被さる様にして押さえ込むと、腕に注射をする。
「がはっ…あっあぁぁぁ…!!!」
胸元を握り締めて身悶え始めるエリザベス。
「君の死因は心臓マヒだ。手術は成功したけれど、予想以上に心臓が弱かったってことになる」
「ぐっ…うっ……」
「安らかに眠れ」
インサニアは病室を出て行く。
(苦しい苦しい苦しい苦しい……)
エリザベスの目が見開く。
(殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる…パパも皆もみんな死んでしまえ!しんでしまぇぇぇぇ…)
す…と少女の表情がまるで眠っているようになり息を引き取った。
◆◆◆◆
街にある酒場の奥のテーブルで、二人の男が酒を飲み交わしていた。
静かに酒を飲みながら話してしている。
片方はとても機嫌が良さそうなのだがもう片方はテンションが低い。
「先生、ありがとうございました」
機嫌の良い中年男性が懐から金の入った袋を取り出しインサニアに渡す。
この男がエリザベスの父である。
「どうもありがとう御座いますピエロニさん」
簡潔に言いながら中身を確かめている。
この男は喜怒哀楽の喜と哀が抜け落ちているのかもしれない。
「あ…?」
不意に、身体が重くなった気がした。
「先生?」
インサニアの手が伸びて来て一瞬不思議がるピエロニだが、顔が強張る。
ピエロニの懐にあった銃をインサニアが奪い、銃口をピエロニの顎に押し付けていたのだ。
「パパ、地獄に行きなさい」
引きつった顔でいうインサニア。
その目は焦点が合っていなかった。
「ヒッ――――」
バン!!!
「キャアアアア!!!?」
ウェイトレスの悲鳴が響く。
「地獄にいけ地獄にいけ地獄にいけ」
狂ったように呟きながらバンバンバンと即死しているピエロニを撃つインサニア。
そんな彼の影が赤色に変色したかと思えば、ブクブクと泡立って広がり、何かが勢いよく溢れてきた。
血色の異形のモンスター。
人間の二倍の大きさもあるモンスターがインサニアの影からどんどん溢れてくる。
「いやぁぁぁぁぁっ!!!?」
腰の抜けたウェイトレスや客の頭を握りつぶす。
「なんだこれ!?開かねぇぞ!!!!」
逃げようとした客が出入り口を叩く。
壁のようにビクともしない。
カチンッカチンッカチンッ
弾切れになっても不気味な笑みを浮かべながら引き金を引き続けているインサニアの首にモンスターの
手が伸び、首を締め上げた。
「ひぐ!?」
正気に戻るインサニア。
「なっ…!?がはっ…」
もがきながら手を銃で殴りなんとか逃れ、銃を撃つ。
カチンッ
「くそっ弾がない!…ハッ」
銃を投げ捨て振り向いた瞬間、呆然となるインサニア。
「…な、んだ…これ……」
モンスターに虐殺される人間達の地獄絵図。
「ぐぅ…!!」
再び首を締め上げられる。
「がぁっ…ぁぁ……」
ジタバタと苦しむインサニアは、他者の血を浴びながら数分後に意識を失った。
「生存者は先生を含めて3人です。先生以外はもう正気ではなく…」
「……」
点滴を見つめながら看護婦の話を聞くインサニア。
「モンスターは…?」
「いなかったそうです。酒場のドアを開けたら血が流れてきたとかで…ひどい有様だったようです」
「…なんだったんだアレは」
「今は気にしない方が…あぁ、そうだ先生…マーク先生が、なくなられたそうです。」
「なに?」
振り向くインサニア。
看護婦は目を潤ませながら、
「自殺…だそうです」
「……そうか……」
もう逃げられないと悟ったのか…『見舞い』、楽しかったのに。
インサニアは目を閉じる。
酷く身体が重い。誰かが…小柄な少女が上に乗りかかってくるような、重い感覚。
どこが重いとかは具体的にいえない。重い、ただなんとなく身体が重い。
疲れているのだ、ゆっくり休もう…ゆっくり、ゆっくり……
「きゃああ!!!?」
「なんだ!?」
目を開くインサニア。
あのモンスターが看護婦を襲っていた。
「た、助け…」
ぶしゅ
首を捻られ、ポイっと捨てられる。
モンスターはインサニアの首を掴む。
(か、身体が動かない!?)
『んふふふ、ふふふふふ…!』
少女の笑い声が響く。
『先生…ご機嫌いかが?』
半透明のエリザベスが身体を通って姿を現す。
「え、えり……!?」
『戻ってきたわ。…というより天国に行かなかったわ。この世に留まった、という表現が適切ね』
エリザベスはくすんだ色をした髪を掻き上げる。
『先生に纏わり付いていた憎悪や幽霊さんが私を核として集まったの。
その力は想像以上よ…地獄から魔物が呼べるほど』
「ぐっぅ…」
顔を歪ますインサニア。
『ほほほほほほほ!苦しめ!苦しめぇぇぇぇぇぇぇ私達の苦しみを味わえ!!!』
「な、んで……わたしが……」
『何ですって?』
モンスターの手が緩まる。
「なんでわたしがこんな、目に……悪いのは、殺せと言った患者の身内だろう!?」
『先生も同罪よ!本当ヒドい性格ね…!人の命をなんだと思ってるの!』
「ぐぁぁ!!!」
モンスターに殴られる。
『先生、そこにペンが落ちてるんだけど拾ってくれます?』
エリザベスが指を刺しながら呟く。
「な、何…?」
床に、看護婦のペンが転がっていた。
身体が勝手に動く。
点滴の針を引き抜いて、ベッドからずるずると落ちるとペンに手を伸ばす。
「なんだ…?なんで身体が勝手に…!」
『私が操っているからよ。怨みの糸は先生の全身に巻きついているわ』
「やめろ…なにを…」
真っ青な顔でペンを凝視する。首が動かないのだ。
『先生は痛みを知ったほうがいいわ。』
「ぎゃああ!!!!!」
ペンを無造作に脚に突き刺す。
「やめっ…やめてくれぇぇぇ……」
『たしかワザと麻酔なしで患者を切らせたことありますよね…とてもとても痛かったそうですよ』
休まずペンを突き刺すインサニアに微笑むエリザベス。
「あれはわたしじゃないっ…医療ミスだ…違う、わたしはっ…」
『細工したのアナタじゃない…視てるのよ、幽霊は』
「やめて…やめて……」
「先生!」
医者と看護婦がドアを開く。
「ひっ…ここも…」
看護婦の死体を見て立ち竦む。
その死体の横で、座り込んで自分の足にペンを突き刺しているインサニアがいた。
「なにやってるんですか…!」
医者が駆け寄ってインサニアを揺する。
インサニアの目の焦点があっていない。
「やめ…やめて…やめ……たい…痛い…痛い…」
ぶつぶつと呟きながら手を止めず機械的に動かしている。
もう両足は血だらけであった。
「正気じゃない、とにかくインサニア先生を抑えて!」
「はい!」
「例の事件の最後の生き残りです。他は全てモンスターに殺されたそうです。
関係のない看護婦や患者も殺されましたが、インサニア先生だけは生き残っていて…」
カツカツと足音を立てながら医者が神官に言う。
「ショックで正気を失ったのかと思いましたが、どうやら夜だけ正気を失い幻覚を見るようで」
「幻覚ですか」
「えぇ、鎮静剤などを投与しても静まらず一晩中…正気を保っているのは先生の精神力が強いのだと思います。
ただの気狂いではなく…悪魔に憑かれている可能性もあると思いまして。
インサニア先生もエリザベス…あ、亡くなった患者なんですが、その子が出てくると言って…」
「なるほど…」
納得する神官。
「ここです」
インサニアは病院の地下、マークがいた病室で拘束されていた。
医者はロックを外し、神官を招く。
顔を顰める神官。
「邪悪な気が漂ってます」
「やっぱり悪魔ですか」
「悪魔とは少し質が違うような気もしますね…とても冷たい…」
「殺気だ」
拘束されたインサニアが呟く。
「とっととエリザベスを追い払ってくれ。このままじゃ呪い殺される」
「怨まれるようなことをしたのですか?」
神官がインサニアに問う。
「ハンッするわけないだろう!むしろ感謝される側だ!わたしはあの娘の命を救ったんだぞ!」
「でももう死んでいらっしゃる…」
「心臓が手術に耐え切れなかったんだ、手術は成功したがそのあと死んでしまった!逆恨みだ!」
吠えるインサニア。
「人が理由もなく他人を呪うだなんてことはそうそうないんですが…」
『テネブラルム……罪を認めないのか……』
「マーク!?」
怯えるインサニア。
「ギャア!!」
医者の悲鳴が響く。
「がはっ…」
医者の胸から腕が飛び出していた。
マークが後ろから心臓を握り出したのだ。
『こうやって貴方への怨みが蓄積されていくのよ…うふふ、その内耐え切れなくなって貴方は地獄に沈む』
エリザベスが現れる。
「お前がこの死霊たちを操っているのですね!」
神官がエリザベスに叫ぶ。
『そうよ、私はもともと霊感が強かったから…霊体になった今、私がこの中で一番強い。』
呪文を唱え始める神官。
マークが神官に襲い掛かるが聖なる光を浴びせられ掻き消される。
『みんな死ね!みんなみんなみんなみんなみんな』
ぼこっ…ごぼ…と音を立てながらインサニアの影からモンスターが湧いてくる。
「なっ…魔界の者…!」
『しねぇぇぇぇぇ!!!』
◆◆◆◆
インサニア以外の地下にいた者全員が殺された。
手に負えなくなったベレッツヘム病院はインサニアを教会に渡し、インサニアは教会地下で拘束されていた。
「どうして誰もわたしを助けてくれない……」
『わたしに誰も敵わない…だってわたしは死んで魔女になったもの』
エリザベスの声が耳元で囁かれる。
「黙れ黙れ黙れ!!!消し去ってやる、お前なんか絶対に消し去ってやる…!!!」
キィ…と牢の扉が開いた。
神官が数名はいってくる。
「インサニア・テネブラルム…君の処刑が決まった」
「な!?なんでだ!」
「…もはや一種の呪いと化している死霊たちは君が罪を認めない限り、おそらく消えないだろう。
しかしこのままにしておくのも君に苦痛を与えることになり被害も広がる。」
「だからってなんで殺されなくちゃいけないんだ!」
「何人呪い殺されたと思っているんだ。その殺された者たちも呪いに取り込まれているんだぞ」
「わたしには関係ない…!勝手に取り込まれているだけじゃないか!
わたしは何も悪いことはしてないぞ!むしろ依頼をしてきた奴等が悪魔だ!」
「君は医者だろう。命の重さを知らないとは言わないだろうな?
命を物のように軽く見ているように思うのだが…命とは尊いものだよ」
「わたしは…わたしは……」
項垂れるインサニア。
「死にたくない…死にたくない…なんでわたしだけ、なんで!皆死んでくれ!皆だ、そうだ皆!
依頼してきたやつ全員死ね!わたしだけなんて不公平だ!!」
神官たちは顔を見合わせため息を吐く。
「もう決定してしまったことだ。今から祈り罪を悔い改めなさい」
「うあああああああああ!!!!!ここから出せ!死にたくないぃぃ死にたくなぁぁぁい!!!!」
暴れるインサニアだが、神官たちはその重い扉を閉めた。
「なぜだ…わたしは何も悪くない…なぜだ…何故……」
虚ろな目でぶつぶつと呟く。
「死にたくない……」
処刑方法は火炙りであった。
「インフェルノがきたぞ!」
「前から思ってたんだよ俺は。あの先生ヤバイってサ」
ざわざわと声をあげる野次馬達。
もはや『インサニア先生』と呼ぶものはいなかった。
悪行も暴かれた今、彼のことは皮肉を込めて『インフェルノ』と呼ばれているようである。
(インフェルノ…地獄、か……)
ぼんやりと心の中で呟くインサニア。
自分の影と地獄が直結している今、笑えない。自分自身が地獄の化身になったような錯覚に陥ってしまう。
暴れるインサニアを無理矢理十字架に貼り付ける。
そこでふつふつと怒りがこみ上がってきた。
「不公平だ!なんでわたしがお前達の罪を背負わなくてはならないんだ!
わたしが何をした!?お前たちの代わりに殺しただけだ!死刑はお前達の方だろう!」
「インサニア・テネブラルム…罪を認めないか。…火を放て」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
絶叫するインサニア。
火が燃え上がってくる。
熱い、イヤだ、死ぬのはいやだ。死にたくない死にたくない、死にたくない――――
◆◆◆◆◆
気が付くと、インサニアは地に倒れていた。
「何…?うぐっ」
足が痛い。
足は軽い火傷を負っていた。
「なんで助かったんだ…」
足に回復魔法を施しながら辺りを見回す。
「あぁ…エリザベス…お前がやったのか」
周りは血の海であった。
『貴方を殺すのは私よ…あと、皆同罪だもん…当然よねこの有様って
うふふふ、ふふふふふ…あははははははははははははははははは』
壊れた笑い声が響く。
「…」
立ち上がるインサニア。
『どこにいこうというの先生。このステキなお花畑を満喫しないの?』
「お前を消すために旅にでる。きっと腕の立つ悪魔祓いがいるはずだ」
『無駄なこと………まぁこの街にはもういられないでしょうしね』
「うるさい!」
『私達を殺してもらったお金いっぱい溜め込んでるものね、旅路に不自由はしないわ…
お金をそんなにためてどうする気だったの?』
「金があれば…自由に生きられると思ってた」
『今は?』
「お前のせいで自由に生きられん!絶対に消し去ってやる!!」
憎悪の篭った目で宙に浮かぶエリザベスを睨む。
『そんなことできやしないわ…せいぜい苦しむことね先生』
そうしてインサニアは旅に出た。
当ても無い旅に。
「くそっ!」
銃が弾切れになり、インサニアは日本刀を抜いて血色のモンスターを凪ぐ。
しかし浅い。
「くっ…」
「どりゃああああ!!!」
モンスターが真っ二つになり掻き消えた。
「大丈夫か!?」
異国の剣士風の男がインサニアに声をかけ、残りのモンスターを切り裂いていく。
「セイスイったら張り切っちゃって…」
「地獄のモンスターみたいね…どうしてこんなところに」
剣士の仲間なのだろう、同じく異国風の服装をした青年と、シスター姿の女がいた。
「あなた、大丈夫?」
「わたしに関わるな」
日本刀を鞘に納めながら言う。
「関わるなっていっても…戦い方素人丸出しだし…銃を撃つときは傾けちゃだめよ、詰まっちゃう」
「は?」
「終わったぞー」
剣士が戻ってくる。
「ありゃあ一体なんだ?この辺のモンスターじゃねーぜ」
三人はインサニアを見る。
ため息を吐くインサニア。
「あれは……わたしの影から出てくるモンスターだ」
「ふぅーん?」
女はインサニアの影を見る。
「…邪気を感じるわ」
「何聖職者らしいこと言ってんだよ」
「私は正真正銘聖職者ですっ!」
剣士にいう女。
「じゃあわたしの呪いを解けるか!?」
「ムリよ、多分。なんかヤバい気がする。でも私よりもっと能力のある人間はいると思うからその人に頼んで」
「浄化より殲滅が得意だもんな」
「うるさいわね。うーん、でもこのまま放っておくのも心配だなぁ…」
「あんな戦い方見せ付けられるとなぁ…」
「…」
インサニアは黙って彼らに背を向け歩き出す。
「待てよ、一人でどこ行く気だ」
「放っておいてくれ」
「ダメよ、聖職者的に貴方を放っておけないわ。」
女がインサニアを引き止める。
「私には具体的な解決方法はできないけれど、浄化してくれる人を探すのを手伝うことはできるわ」
「え!?面倒見る気なの花梨!?」
青年が声を上げる。
「いいでしょ?どうせ私達も一人旅がつまらないから集まってるだけだし目的ができるのはいいことよ」
「そ、そりゃーそうだけど」
「貴方もいいでしょ?」
女はインサニアに言う。
確かにあの苦戦するモンスターを一瞬にして駆逐してくれたし、彼らはかなり強いのかもしれない。
旅に慣れているようだし、何かと便利かもしれない…。
「私は花梨。こっちの青いのが山本青水、そっちの黄色が片山飛剛」
服の色を指す花梨。
「どういう説明じゃ」
頭を抱える剣士…青水。
「黄色って…なんかヤだな…黄色だけどさ」
複雑そうな青年、飛剛。
「貴方の名前は?」
「わたしか……わたしの名は、インフェルノだ」
END
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