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2015年に書いたものです…。
 鳥の声がする。
 いつも本丸の庭は騒がしいはずなのだが買出しにでもいかされているのか静かだ。
 畑当番を任された太郎とにっかりは特に会話もなく黙々と作業をこなす。

(彼、腰大丈夫かな)

 にっかりは目を細めて、つらそうな太郎へ視線を向ける。
 いつも白い着物で来るから土の汚れが目立つ。
 僕のようなジャージスタイルにすればいいのに、と声を掛けたことがあるがサイズがないと言われた。
 ないなら特注してもらえばいいのに。
 そもそも祈祷するためにそのスタイルになるのならば祈祷は別にいらないのではないか?

 ―――彼だけじゃダメなのかな

 ぼやっと石切丸の顔を浮かべてふと思う。

「ねぇ、石切丸くんも祈祷してるから太郎くんの祈祷っているかな?
 あ、別に変な意味じゃないよ?拝みすぎると逆に効果はどうなんだろうって思っただけさ」
「…確かに私には豊穣の力はありません。なるほど、石切丸殿ならば本職ですし…」

 何やら独り納得し始める太郎。

「どうして拝んでるの?」

 純粋な疑問をぶつけるにっかり。

「はぁ、神社に奉納されましたから」
「そういうものなの?」
「人に、いえ刀によると思いますが。」

 太郎はにっかりの顔を見る。
 どうも納得していないようだ。

「私は扱える人間が限定される刀です。むしろ、主様しかいないでしょう。
 ですので、私は刀として存在する必要性がよくわからなくなっています。
 今こうして肉体を得ていますが。本来の私、奉納されている私、どちらも私。違いますか?」
「違いはないね」
「ですので拝んでみたりもします。それっぽいことをしているとなんだか落ち着くのですよ。
 あぁ、審神者殿が言ってたアレです、『趣味のようなもの』と」
「なるほど、趣味」
「石切丸殿のアレは本職ですのでやはり彼に任せたほうがいいでしょうか」
「いや、趣味なら別にやってもいいんじゃないかい?」

 納得できたにっかりは穏やかな口調で言う。

「ならば続けます。
 そういえば先日、石切丸殿と神剣の話をされていましたね」
「あぁ、あれね。」
「話を聞いていて思ったのです。我々は主様に左右されるのだな、と。
 主様は一歩間違えれば『鬼』と呼ばれていたかもしれないじゃないですか。
 それは『悪』に堕ちた時の話ですが。そうすれば私も『悪』になっていたかもしれません。
 あぁ主様が武将で良かったと、思ったわけです。」
「僕は使われ方が悪かったのかな?」
「真逆。我々は本来『斬るもの』です。
 過去の主様が何を斬ったかまでは恨めないでしょう。その時の我々は斬るしかなかったのですから。
 いえ、貴方を慰めるのは石切丸殿がお上手ですね」
「なんで彼」
「とにかく、今の審神者殿が我々を導いてくださるでしょう。
 審神者殿も『鬼』ではないですから」
「あの人、“みらいじん”なんだろう?
 あぁ、でも未来で僕たち神剣になれるかな?」
「なれるでしょう。我々は歴史を守るのですから、英雄です」


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