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 スネークがジェミニの恋人となって数日が経った。
 恋人とはいえ、スネークが勝手にそう思っているだけでジェミニがどう思っているのかは解らない。
 スネークが「恋人役」だと認識しているだけという話なのだが、今はそれで問題はなかった。
 ジェミニの理不尽な暴力がなくなっただけでもありがたいもので―――
 しかしジェミニとの性行為はかなり精神的に疲れるモノがあった。


 ジェミニのドSさにまったく変化なし。


 地だった、ともいうのだが。まさか地だとは思わなかった。
「っあ、うぅぅ…」
 鏡の前で立ちバックで犯されるスネーク。
「スネーク、顔を背けるなといっているだろう?」
 聴覚センサーギリギリに唇を近づけて囁くジェミニ。
 その声に肩を震わせながら、スネークは顔を上げる。
 鏡に映るジェミニと自分の姿―――
「そんなに興奮するのか?本当、お前は変態だな。」
(変態なのはお前だよっ!)
 心の中で突っ込むスネーク。
「ふふ、ふふふ…」
 スネークの反応に満足しているらしく、笑みを溢すジェミニ。
「声は抑えるな。ほら、言えよ」
「ふっ、あ……じぇみ、に…じぇみに…!じぇみに、きれい…!!」
 行為中は言えという言葉を言うスネーク。
「可愛いなスネーク。そうだスネーク、最近気づいたんだが」
「?」
「いつもお前の顔を見たいから向かい合わせだっただろう?
 で、こうやって鏡の前で後ろから犯すようになって気が付いたんだが、お前の尻尾って震えるんだな。かわいいな?」
「れ、冷静ですねっ!俺それどころじゃないんですけどねっ!」
 突然何を言い出すのかこの男は。
 状況に対して冷静というよりもう天然だろうこれは。
 何が悲しゅうて犯されてる最中に尻尾がどうのこうのと言われなくてはいけないのか。
「……」
 ジェミニはスネークの尻尾を掴む。
「ひぁんっ!?」
「感じるのか?へぇ?」
 ジェミニは笑みを浮かべながら尻尾の先端を舌で舐め始めた。
「んぁっあ、あぁぁ!?」
 ゾクゾクする、脚がいうことを聞かない、ガクガク震えて力が抜ける。
 ジェミニが片腕でスネークを支える。
「じぇみに、っそれ、やらぁ…!!やめてぇ…!!」
 オイルに濡れた長い舌をだらしなく垂らしながら哀願するスネーク。
「あぁすごい締め付けてくる。面白いなお前。呂律が回っていないぞ?ハハハハっ」
 ブルブル震えるスネーク。
 ぽたぽたと廃油が床に落ちる。
「本当、お前は我慢できない子だな。」
 スネークの中からナニを抜くジェミニ。
「ひぁ…あ…」
 鏡に寄り添いながらずるずると床に崩れるスネーク。
「先にイったから今日は中で出してやらない」
「うっうぅ…じぇみに、ごめんなさいジェミニ……」
「じゃあ口開いて?」
「……」
 スネークはジェミニに振り返り、口を開く。
 その口へナニを突っ込むジェミニ。
「んぐ、う…ぅ…」
 スネークは長い舌をジェミニのナニへ巻きつかせながら口で奉仕し始める。
「一滴でも溢したら許さないからな?」
「―――ッ」
 喉の奥で熱を受け止め、ゴクンゴクンと飲み込む。
「っあ…あぁぁ……」
 熱い息を吐きながら、ナニから口を離すスネーク。
「俺のを飲むのが好きなんだろう?本当お前は変態だ」
(お前がしろっていったんだろ…変態はお前の方だ)
 心の中で、スネークは思う。
 しかし口には出さない。
 たぶん、言ってもこいつは何も感じないだろうと思って。
 それにジェミニの言いつけどおりにこなしてしまう自分にも問題があるような気がする。
 マゾの自覚はなかったが、本当にもしかしたらマゾなのかもしれない…。
(あぁ、だめだジェミニのペースに呑まれている…)
 ジェミニといると本当にだめだ、自分がわからなくなる。
「洗浄してやろう」
「うん…」
 ジェミニに抱き上げられるスネーク。
「なぁ、ジェミニ」
「なんだ?」
「洗浄じゃなくて風呂とかシャワーとかそういう言い回しにしねぇ?なんか俺モノ扱いされてる気分」
「なんでも一緒だと思うんだが。お前なに?そういうの気にするの?」
 じゃあこれからそういう、とだけ呟いてジェミニはスネークを運んだ。



   ◆◆◆◆



「ジェミニ、買出しに付き合ってくれないか」
 マグネットがジェミニに声をかけてくる。
「今日はお前とタップだろう?タップはどうした?」
「廊下で高速回転移動してたらハードとぶつかってしまってなー。いまメンテナンス室」
「バカじゃないの」
「そういってやるな…で、暇だろ?」
「暇といえば暇だが。スネークいないし…」
「ははは、スネークにべったりだな」
「別にそういうわけじゃ…いくんだろ?さっさと終らせるぞ」








 買うものを買った後、マグネットは少し寄り道しないかと呟いた。
「ジェミニ、ファミレス寄ってもいいー?」
「好きにすればいいだろ」
「ジェミニは人の多いところ苦手かなーって思って」
「別に。」
「じゃあいこっか。シャドーとスネークで来ると大変なんだよね、ドリンクバーで飲み物を超融合させてくるから」
「あいつらバカだな」
「面白いけどね」
 店内は時間帯もあってか、そんなに混雑はしていなかった。
 席を案内され、マグネットはニコニコしながらジェミニを見る。
「好きなもの注文してもいいよ?ただし皆には内緒だっ!」
「いや、なんでファミレスで食ったモンを自慢しなくちゃいけないんだ。」
「そりゃそーか!」
「………パフェ頼んでもいい?」
 メニューから目を離し、少し目を輝かせながら呟くジェミニ。
「いいよいいよ」
(甘いもの好きなのかな…)
 マグネットはドリンクのみにし、注文を終え、しばらくしてパフェが来る。
 やっぱりジェミニの目が輝いてるように見る。
「…か、勘違いするなよマグネット」
 マグネットの視線に今頃気づいたのか、ジェミニは睨んで言う。
「別に甘いものが好きだとかじゃあない。パフェは見た目が派手だし冷たいし味も悪くないから好きなだけだ!」
「うん、かわいいよジェミニ」
「美しいと言え!」
「うん、美しい美しい」
「本当にわかっているのか…」
 ぶつぶつ文句を言いながらジェミニは食べ始める。
「で、何か話があるんだろう?」
「あ、わかる?」
「当たり前だ。何の話だ」
「スネークのこと」
「…ふん、またなんか文句でもあるのか」
「ううん、仲良くしてくれてるんだなって思って」
 マグネットは柔らかい視線をジェミニに向ける。
「ジェミニ、前よりだいぶ表情が柔らかくなった。スネークのおかげだね」
「……さぁ、どうだろうな。お互い心に傷ついてしまっているだろう、傷の舐めあいをしているだけかもしれない」
「違うと思うよ。傷は付いてるかもしれないけどさ…二人ともいい笑い方してるから、良い方向にいってると思う」
「……」
 ジェミニはマグネットに視線を向ける。
「お前は、俺のこと好きだったんだろう?」
「え?あれ?なになに?」
「俺より兄の立場を取ったわけだ。すまなかったな」
「…いいよ別に。俺お兄ちゃんだから」
「うん、スネーク以外抱く気になれないし」
「そ、そう……らぶらぶだね……羨ましいなぁスネーク。幸せモノだー」
「スネークに飽きたらお前の相手をしてやってもいいぞ、お前は俺のことを美しいと言ってくれるからな」
「ジェミニって結構大胆だよね」



    ◆◆◆◆



「ジェミニ殿とは上手く行ってるでござるか?」
「任務中だぞシャドー」
「今二人っきりでござるからなぁ、まだ拙者の出番ではないし」
 施設内の天井裏で、スネークとシャドーは呟いていた。
 スネークは配線を引きずり出し、ハッキングの準備をしている最中で、シャドーは待機しているだけで暇なのである。
「ジェミニな、あいつのプレイが変態臭くてだめだ」
「ほう」
「なのにあいつ、俺のことを変態っていうんだぜ、どう思うよ」
「どっちもどっちでござろう」
「そーかな!?俺はお前とヤってる時変態なことしてたかなっ!?」
「いたってノーマルなプレイでござるな」
「だろうがよ!」
「ノーマルが良いなら、拙者と付き合えばいいのになー」
「……ごめんシャドー」
 スネークはシャドーを真っ直ぐに見る。
「俺、今の状態気に入ってる。ジェミニが、好きだ。あいつが俺のことどー思ってるかは知らないけど」
「そうでござるか…残念」
「失恋同士マグネットとくっつけば?」
「え?マグネット殿誰かにフラレたでござるか?」
 きょとんとするシャドー。
「…ジェミニのこと好きだろうアイツ、いっつもジェミニの味方してさー。露骨すぎんだろ」
「そ、そうだったでござるかー!」
「鈍い…お前超鈍い……」
「帰ったらマグネット殿と心を癒すため酒を飲み交わそう」
「そうしとけ」



   ◆◆◆◆



 ジェミニの部屋に、少しだけ物が増えた。
 スネークが持ち込んだ雑誌だとか、お菓子だとか。
 ジェミニの領域に少しずつスネークのものが入り込んできている。
「俺はジェミニが好きなのかな?」
「知るか」
 スネークはジェミニの膝の上に頭をおいてくつろいでいた。
 ジェミニは手鏡をもって自分を見ている。
 もう片方の空いた手はスネークの頭を撫でていた。器用な男である。
「ジェミニは俺のこと好きなんだろ?」
「さぁな」
「好きっていったじゃねーか」
「だったな。で、お前はどうしたいんだ?俺に惚れたいのか?」
「自分がよくわかんないんだ。ジェミニに呑まれてる気がするし、本当に好きなのかもしれないし…わからない」
「……」
 ジェミニは視線を鏡からスネークに向ける。
「ここにいるのはお前が望んでここにいるんだろ?違うのか?」
「わからない…」
「…スネーク、お前とお前の私物を俺の部屋から取っ払ったとしようか」
「うん」
 ジェミニは視線をスネークから外して宙を見る。
「たぶん、ガランとして落ち着かなくなるからお前を引き戻すと思う。」
「それぐらい俺が恋しい?」
「なんだろうな、俺にもよくわからない」
「そうか、なんかちょっと、嬉しいかな。嬉しいってコトは、俺はお前に惚れてるかも。」
 スネークは微笑む。
 あぁ、そんな顔も出来るのか―――
 ジェミニはそう思いながら、スネークの頬を撫でる。
 今まで醜かったのに―――本当、憎悪から愛情へ転化してしまうとは思わなかった。
 きっとスネークはジェミニに対しての恐怖心が恋心に転化してしまったのだろう。
 それをジェミニは口にしようとは思わなかった。
 今の状態でいいではないか、あえて壊さなくても―――
 でも、だからこそ、好きだと言わないほうがいいのかもしれない。

 スネークはその言葉を待ち望んでいるようだが、俺には到底言えそうにない。

「ジェミニ…」
 スネークは手を伸ばしてジェミニの頬を撫でる。

 あぁ、好きだと、愛していると言ってくれればいいのに―――

 ジェミニは一言も言ってくれない。
 酷い仕打ちを後悔しているのだろうか、自身の感情とスネークの感情が誤った認識だということに気づいているからだろうか。
 しかしそれは間違いではないと、スネークは思う。
 純粋な感情だと、思う。

 だから言ってくれればいいのに
 その一言で楽になれるのに。

 たしかに恐怖心を誤認し、恋だと認識してしまっているのかもしれない、それでも言って欲しい。

 こっちから言えば、言い返してくれる?


「ジェミニ…」 


 スネークはジェミニの顔を引き寄せてキスをした。

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