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「僕は君のことが好きみたい」
「え?」
 ロックはキョトンとした顔で見上げていた。
 ツンドラはそんな彼の唇にマスク越しのキスをして、立ち去った。振り返って手を振りつつ。




     ◆◆◆◆




「なんですかそれ。告白逃げですか」
 チルドは呆れた表情で言う。
 ここはツンドラの北極にある基地だ。
 ツンドラは自分のおさげを弄りながらテーブルに突っ伏していた。
「そしてロックマンが恋しいと…無様ですね」
「チルちゃんもっと優しく労わって…」
「優しいですよ。気にかけてなければ私はここに居ません。」
「だよねぇ…」
 顔を上げるツンドラ。いつもの余裕のある表情ではなくしょぼくれている。
 素の彼はそのようなものだとチルドは知っているので今更ギャップなどといったものは感じていない。ウザくは思っているが。
「はぁぁぁぁ~~~~」
 ため息を吐くツンドラ。
 彼がため息を吐くたびに周りがキラキラとダイアモンドダストが起こっているが、気付いているだろうか。
 チルドは無造作におさげを掴んで引っ張った。
「ちょ!なになに!?」
「ダンスでもして気分を晴らしてみては?」
「あぁ!そうだね!それはいい!」
 仕事は?というツッコミを入れるものなどこの場にいなかった。
 ツンドラはさっそく、と自作のスケートリンクに駆けだしていく。
「やれやれ世話のかかる…」

  ドコォッ

「………」
 チルドは無表情でツンドラの元へ向かう。
 そこには盛大に転んだらしいツンドラが、顔面から銀盤に突っ込んでいた。
「はぁぁぁぁ…」
 チルドは深い深いため息をしながらツンドラのおさげを引っ掴むのであった。






「まさか重症を負うだなんて…僕、トーチのこと笑えない…」
「まぁいいじゃないですか。どうせ仕事にならなかったんですから。
 向こうでキチンと後始末してきたらいいんですよ」
 チルドはそういって運ばれていくツンドラに手を振る。
「後始末するまで帰ってこないでください」
「君にそういう権限あったっけ!!??」
 見送られるツンドラ。
 一応頭を打ったので検査と、脚を完全に損傷してしまったので交換ということになった。
 なので研究所に戻るのである。
 なぜかコサック研究所ではなくライト博士の研究所であるが、姫(カリンカ嬢)の思惑を感じてツンドラは無い冷や汗をかいた。
(姫は…僕の味方なの…?味方かな…遊ばれてないかな…ロックと顔を合わすのか…ひぇぇ…)
 自分でキスしたくせにヘタレである。
 姫はヘタレを許さない。
 研究所に運ばれると早急に検査が行われ異常がなかったので損傷個所の修理となった。
 そこでやっとロックと顔を合わせる。
「や、やぁ…」
「久しぶりだねツンドラマン。こけちゃったんだって?」
「うん…氷の整備、ちゃんと出来てなかったみたいで…」
 弱々しく答えるツンドラはロックの顔を直視できていない。
「まさか僕のせい?」
「そんなわけないよ!」
 ツンドラは思わず叫ぶ。
「僕のミスだよ、本当に…ぼんやりしてただけだから」
「その原因が僕じゃない?」
 ロックはツンドラの手を握る。
「まさか、そんなふうに思わないでおくれ。…僕、君にキスをしてしまって…後ろめたさで、上の空になっちゃってて」
「僕のこと、好きなんでしょ…?」
「僕が君を好きになっちゃ、いけない気がして…」
「どうして?」
「僕はいつも人に押し付けてるから、この気持ちも押しつけてるだけだと思って…ね、ごめん。もう忘れよう?」
「そうだね、ツンドラマンは少し押し付けがましいね」
 ロックは頬を膨らませて手を離したと思えばその手はツンドラの頭を掴んだ。
「人との会話に慣れようか?まずはそこから始めよう?ね?」
 言ってロックはツンドラのマスクに唇を押し付ける。
「えぅっ…!?ちょ、ダメ…」
「なんで嫌がるの?僕のこと好きなんでしょ?」
 ロックはツンドラのマスクを外して深くキスをしてきた。
「ふぁっ…あ、んっ…」
 ロックの幼げな舌が口内を蹂躙する。
「ごめんねツンドラマン…あの時、びっくりしててお返事できなくて…あのときすぐ返事してれば、怪我しなかったのに…。
 僕もツンドラのこと、好きだよ」
「っ…」
 ツンドラは顔を赤くして手で口元を押さえる。
「ゆっくり、脚なおしていこうね…」
「うん、うん…」
 嬉しいのか涙ぐみはじめるツンドラの頭をロックは優しく抱きしめた。

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