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ここではマスクの下に口があるので苦手な人は注意
巨大な火柱があがり、夜の暗闇を裂く。
完全に火の制御が出来ていないトーチ本人は至って普通を装って制御できていると思い込んでいる。
自身が炎に飲まれているというのにだ。
ギア初動テストの立ち合いで呼ばれていたツンドラはこのために呼ばれたのだなと納得した。
何故なら自分は炎を凍らせることが出来るのだから―――
炎を制御している、そう気分が晴れ晴れとしていて、今までの自分がいかに小さかったかと思う。
無理に抑え込もうとしていたのは間違っていたのだ、こうだ、これだ、抑え込まずに解放してしまえばよかった。
身も心も軽い、炎が身体の一部になったかのような一体感がある。
思わず笑みが零れるが、マスクで視えないだろう。
パキン
高音質な硬い音が響いた。
目を向けるとひょろりとしたロボットが一体いる。
そのロボットを中心に氷が張っていた。
トーチの本能は怒った。炎を侵略してくる外敵だと。
◆◆◆◆
「…美しくない」
ツンドラは低く唸るように吐き捨てた。
理性を失っているトーチはツンドラに襲い掛かってきた。
ツンドラは彼の拳や足蹴りを素早さを生かして躱す。もちろん範囲内に入ってくれば凍らせてもいる。
トーチの拳や脚は氷の蔦が這っていた。
しかしそれでもあとからあとから炎を吐き出して殴りかかりに来る。
ギアの過負荷と急激な冷却でトーチの装甲はヒビが入っているし、動きも鈍い。
「君の心はエレガントさもないね。」
「アァァァァァ!!!!!」
咆哮なのか雄叫びなのかわからない声を上げながらトーチは手を伸ばす。
「あっ」
躱した―――が、トーチの狙いはそこではなくツンドラの髪のような飾りであった。
それを掴まれ引き寄せられる。
「ハァッ…」
トーチの声と共にツンドラに衝撃が襲ってくる。
片脚を思いっきり蹴られて折られた。
「僕の、脚ィ!!!!」
ツンドラはトーチの頭を掴んで頭突きをする。
「凍れッ!!!」
ツンドラを中心にして氷の竜巻が発生した―――
「……」
「気がついたかい」
ツンドラはトーチに声をかける。
「私は…?」
周りを見渡そうとしたが、身体が動かない。
目だけで周りをみると、あたり一面凍りついていた。
ツンドラの姿もボロボロで、マスクも砕けて顔が剥き出しであった。
トーチもツンドラの頭突きの時にマスクが損傷しているのだが本人は気づいていない。
そしてその体も氷が張っていることも。
「安全か確認できるまでワイリー博士には待機してもらってるよ」
「一体、何が…」
「ギアの制御もできない獣くん」
「わたしは制御出来ていたぞ!」
「暴走するやつはみんなそういうんだ」
ツンドラの声が低い。もしかすると素はこっちなんじゃないかと思ってしまう。
「僕ねぇ、可愛い獣なら大歓迎だよ。ダンスを見てくれるしね。
でもねぇ、僕の踊りを邪魔するエイリアンって大嫌いだからぁ…」
「…解った、お前怒ってるな?」
「君はねぇぇぇ!僕の脚を踏みつぶしたんだからねぇ!怒るとも!あぁ、野蛮!」
「悪かった」
「詫びが軽いんだよぉぉぉ!!!!」
ツンドラはトーチの胸をバンバン叩く。
「博士を呼んでくれ。修理してもらおう」
「はぁ?本気?お前さっきから火が漏れまくってるの解る?凍らせて対処してるけどね?」
「そんな、ハズは…」
「よくわからないけど壊れたんじゃない?」
「いや、俺は制御できている!嘘はやめてくれ」
「僕が嘘ついてどうなるの?博士呼びたいからスリープモードになって。早く」
「ツンドラ」
バキンッと氷を砕きながらトーチが身を起こしツンドラに圧し掛かる。
炎が溢れる。
「ほら、制御できてるだろう?」
「離してくれない?」
「何故?」
トーチは笑みを作る。
それは正気とは程遠い笑みだった。
「俺は制御できているよツンドラ、いっぱい修行してきたから。君と同じ、君もいっぱい練習してきただろう?ねぇ?」
迫るトーチに傷ついた脚が圧迫されて顔を歪めて呻くがトーチはその様子に気づいていないようだった。
ツンドラはトーチを睨みながら顔を掴む。
「人の、話を聞けていない時点で頭おかしくなってんのわからないかなぁ?」
「ツンドラ…?」
唇が重ねられ、そのまま舌が侵入してくる。
トーチは一瞬硬直するが、そのまま快楽に呑まれてツンドラを抱き寄せる。
「はぁ、抱き寄せてくるくせに顔が逃げようとするの面白いねえ?」
ツンドラはそういいながら再びトーチにキスをする。がっちりと頭を抱え込んで。
トーチはツンドラを抱き寄せつつも快楽を追う本能と困惑してキスを止めようとする理性がせめぎ合ってされるがままとなっていた。
「このまま眠ってほしいんだけど、無理だよね…はぁ、僕こういうの本当は嫌なんだけどさ。君だからやるんだよ?
君はがんばってるからねぇ…どうせヤっても覚えてないだろうし」
「う、あ…?」
◆◆◆◆
「ふゥっ…!ンゥッ…ゥウウ…!!!」
ツンドラは必死に衝撃に耐えながら声を押し殺す。
獰猛な目をしたトーチは細いツンドラの両手を掴みながら猛るナニでツンドラの中を犯していた。
トーチに握られている腕は感覚がない、途中まで千切れそうだと思っていたが融解して千切れてしまってるかもしれない。
もう身体のどこが痛いだとか辛いだとか、わからない。熱い。全身が熱くて意識が混濁する。
きっとトーチも同じなのだ、熱くて熱くて正気でいられない。
正気であるふりをするのは今までの修行が意味を介さないモノになるのが怖いからだ。
頑張っていることが無になる恐怖はツンドラにもよくわかった。
ズンッと深く貫かれる。
「あ、あ、あぁぁぁ」
ツンドラは口端からオイルを垂れ流しながら首を振って腰を引くが、トーチが肩を掴んで抑え込んでくる。
「奥ゥやだぁ…!あついのやだぁ…!」
「ッ…あぁぁぁ」
「ひぅっ」
どぷどぷと熱された廃液がツンドラの奥に注ぎ込まれる。
「ツ、ンドラぁ…」
繋がったまま抱き上げられて、そのまま潰されるかと思うぐらいに抱きしめられる。
ポタポタと小さく水音がする。
氷が融けてきたのだろうか、恐らく、きっと。
力が入らないがかろうじて動いた腕で、ツンドラは弱々しくトーチの背に回して抱きしめた。
◆◆◆◆
日常が平穏に戻った後もツンドラはトーチと交流を続けている。
トーチの暴走を止めるためにセックスをしていたところもあり、今はまったく繋がらないがたまにくっついて時間を過ごすことがある。
ツンドラはトーチの腕のなかに収まって抱きしめられていた。
あまり身長差がないのでトーチの顔が真横にあって少し気恥ずかしさはあるのだが。
だいたいこういうスキンシップの時は他愛のない会話をする。キャンプ場であったことや北極では変わり映えがないことなどを。
「次の休みの時に旅行なんてどうだろう。ブラストの新作アトラクションやってるところあるだろう?」
「あぁ、いいかも。僕そういうところいったことないから」
「私もだ」
「これはこれは楽しくなりそう」
微笑むとマスクを奪われる。
トーチも自分のマスクを外し、何やら頬を赤くしながら見つめてくる。
「なに?」
「…あの、キスしても?」
「んぇ?あ、うん…どうぞ?」
唇を重ねられる。
そしてカポっとマスクを嵌められる。
「…なにこれ」
「いや、すまん。キスしたくて」
「いいけど。唐突じゃないか?」
「急にしたくなるもんだろう!?」
「…君がそれで満足なら別にいいけど」
「そ、そうか」
照れた様子のトーチ。
貴方はちょっと前まで僕にめちゃくちゃなことしてましたよね?
なんていうツッコミを心の中で入れつつため息を吐く。
正常な判断力を失っていたのだからそれは責められないことだ。自分自身も正気じゃなかったらあのような行動をしたのだし。
「そういえば、ツンドラ…前から気になってたんだがエイリアン嫌いなのか?」
「あ、あぁーなんかそんなこと僕言ってたっけ?あれねぇーほら遊星からの物体Xを北極で一人で見ちゃって…」
「なんでそれ見ちゃったかな…」
「夜眠れなかったよ!!!!!!」
「よしよし」
トーチの大きな手がツンドラの頭を撫でてきて、少し心地よさを感じてしまった。
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