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「フー…」
 トーチは息を吐きながら夜空を見上げる。
 いつもと変わらぬ綺麗な星空が広がっている。
 いつもと変わらぬことは、いいことだ。
 そう考えながら整地されている地面に腰を下ろす。
 今から日課の瞑想だ。日中は仕事をこなし、仕事が終われば修行の時間なのだ。
 この場所はトーチがいつも修行をしている場所でキャンプ場から少し離れているので人が来ることはない。
 しかし手入れはされている。トーチが修行をするというのが解っている職員たちが手を入れて、万が一があった場合木にカモフラージュされている消火装置が作動するようになっている。トーチ的には暴走前提にされていてちょっと悲しいが、万が一を考えればそうなるだろう。
 実際何度もやらかしているので。
「そういえばツンドラに試してみろといわれた物があったな…」
 少し前に渡されたモノを思い出して取り出す。ツンドラから貰ったものはチップで、これをインストールしてみなよと言われたのだ。
 トーチは特に不振に思うことなく首筋の挿入口からチップを差し込んだ。
 流れてくるのはいかがわしいデータであった。
「ちょっっっと待て!!!!!」
 思わず叫ぶトーチであるが読みこみはじめると止められない。
 既製品でもないようで、ツンドラの丹精込めた愛情を感じるのでハンドメイドだと直感で察した。
「ッ―――おいツンドラァァァァ!!!!」
 ツンドラに直接通信回線を開く。
『なにー?眠いんだけど…あ、僕の作ったチップ使ってる?』
「なんだこれはっ!」
『修行だよ。耐えるんだ、感情が起伏しやすくなってるからそれに耐える修行』
「いかがわしいデータが流れて体の感覚がおかしいんだが?」
『うん、そうなるようにしたからね…。その方が楽しいでしょ?』
「お前がなッ!!!!!!」
『あっはっはっは』
「いつまでこれは続くんだ」
『2時間ぐらいじゃない?僕まだ眠いから寝るよ?今日は押し寄せる氷塊砕き続けて疲れたからぁー』
 通信が切れる。
「くっ…」
 目を閉じるトーチ。
 無だ、心を無にし平常心を―――
「トーチマンっ!」
「!!!?!?!」
 ビクゥっと肩を揺らすトーチ。
 振り返ればロックがやってきていた。
 キャンプ場に遊びに来ていたが、テントで皆と休んでいるはずなのにどうしてここに来てしまうのか。
「あ、ここで修行してるって聞いて…邪魔しちゃった?」
「いや、大丈夫だッ」
「わー、ここも星空良く見えるね~」
 空を見ながらロックはトーチの横に座る。
「い、今から瞑想をするんだ、ここにいてもつまらないぞ…」
「煩くしないからここに居てもいい?…その、興奮してるのか寝付けなくて」
「っ…そ、そうか」
 上目づかいに見上げてくるロックから目を逸らしてトーチは目を瞑った。
 ロックが色っぽく見えてしまうのはチップのせいだろう。
 2時間耐えればいいのだ、たった2時間―――







 無理でした。
 アイカメラがチカチカする。
「トーチマン大丈夫!?なんかすごい熱いけど!」
「う、うぅ…ひっ」
 ロックの手がトーチの手を握り締めるのでトーチはビクビク震えあがる。
「熱暴走?なんでだろ、ちょっと繋ぐね?」
「あ、それは、いけな―――」
 息も絶え絶えにトーチは逃げようとするがロックはトーチを助けようとして首筋から伸ばしたコードをトーチの首筋に繋いでしまう。
「…ひぇっ」
 ロックの顔が真っ赤になる。
「トーチマンの修行って、そういう…」
「断じて違うッッ!!!!!」
 そこは全力で否定し、トーチはツンドラのチップの話を伝えた。
「非合法の電子ドラックじゃない…ギリギリ違法ではないけど…」
 ロシアロボ怖い。
「まぁ事情はわかったよ。よし、トーチマン…僕も手伝ってあげるから耐えよう」
「な?な?」
 ぎゅっとロックに頭を抱きしめられて困惑するトーチ。
「排熱のコントロールぐらいなら出来そうだから、トーチマンは頑張って耐えてね」
「うっ…」
 ロックに身体の一部を介入されている感覚に呻くが、勝手に排熱されていく感覚が心地よい。
 それに重なるようにして快楽の波が来る。
 排熱できない苦しみは減ったがその分快楽の苦しみが増えているような気がしたがトーチは意識をそっちへ持って行かないよう頑張った。
 頑張ったが、ロックのなんだか柔らかいお腹だとか、なでなでしてくる小さな手とかに興奮してしまう。
 思わず腕が動いてロックを抱きしめていた。
「んっ…う…はぁ…はぁ…」
 ロックもチップの影響を受けているので息が上がる。
 脚がもじもじ動くのが艶めかしい。
「とーち、ま、ん…ごめんね、ごめん…」
 ロックがトーチの首に腕を回して抱き着くと、マスク越しにキスをし始める。
 キスというよりは舌で舐めるような感じだ。
「ロック…」
 自分より感度が良いらしいロックを気遣って、トーチはズボン越しにロックの股に中指を押し当てる。
「ふぁっ…」
 ロックは震えながらもトーチの手を掴んで下半身の緩やかな刺激を味わう。
 お互いセックス用のパーツなんてつけていないので大変苦しかった。
「とーち、苦しい、でしょ?ねぇ、いい、よ…僕使って…」
「はぁっ…はぁっ…」
 潤んだ目のロックに見上げられながらそういわれてトーチの理性は吹っ飛んだ。
 股同士を合わせる貝合わせの体位になってロックの脚を掴み、擦りつけ合う。
 とにかく外部からの刺激が欲しかった。
「あっ…あ…ああああああっ…!!!!!」
「ッグ、ぉ―――!!!」
 ビリビリと、お互いのデータがエラーを吐き合う。
 それで意識はぐちゃぐちゃになるが、ちょうどチップの読み込みが終わってそのまま昂ぶりは冷めていった―――



    ◆◆◆◆



「すまなかった!!!!」
 土下座して謝るトーチ。
 ロックは頬を赤くしつつ難しい表情でトーチを見下ろしていた。
「ま、まぁ…不可抗力?だったし…火遊びもほどほどにね…?」
「い、いや俺は一切そんなつもりはなかったんですけども…!!!」
「そうだったね、ツンドラマンのせいでもあるよね…」
 ロックは通信機を取り出す。
『はーい?どうしたのロックマン?』
 ツンドラの声。
「トーチマンに非合法の電子ドラッグ渡した件について」
『―――ブツン』
 通信が切れる。
「…ツンドラマン?」
 通信機ではなく、体内の通信回線で強制的に繋ぐ。
『いや、ジョーク…そう、ロシアのジョーク…』
「カリンカちゃんに叱ってもらうからね」
『いやあああああ!!!ちょっと待って!僕の言い訳も聞いて!ほら!精神面でダメなら刷り込みなんだよ!
 これはいけると思ってさ!!!?だから姫にいうのだけは止めてくれないかな!?めっちゃ怖い!!!!』
「えっちなのはいけないと思います」
 通信を切るロック。
 トーチはやり取りを眺めていて、ロックを怒らせてはいけないなと再認識した。
 ピピー
 ツンドラからの着信音。
「なんだツンドラ?」
『えっちなチップ渡したのは反省してるからロックマンを止めてくれ!!!』
「そんなにその、姫?が怖いのか?」
『うん!!!!』
「そうか、なら止めないからな」
『なんでぇぇぇ!!!!!』

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