menu

松明発破のえっちな話を書きたかったのになぜか青春ピュアピュアハートフルストーリーになってしまった…。
 最近よく遊びに来るロボットがいる。
 元発破ロボで今ではアーティストとして活躍している少年型ロボだ。
 自分とはまるで接点がないのだが、とある事件がきっかけで知り合い今も交流している。
 ちょっと変わっているロボットだな、とトーチは思った。
「ししょー!」
 明るく元気な声が響く。
「来たかブラスト。しかしよく続くな、仕事の合間だろう?」
「俺が見たいから大丈夫!」
 ブラストはトーチに答える。
 彼はトーチの修行している姿がみたいというのだ。
 何やら勝手に師匠呼びしだしたし。弟子は取っていないのだが聞かない。
「師匠の火柱が上がるところ見てるとインスピレーション湧きそうなんだよな!」
「なんかそれ…俺はあんまり嬉しくないんだが…」
 ため息を吐きつつも目をキラキラさせているブラストを追い返すほどの冷たさもないトーチは気にしないことにして日課の修行を始めた。





 設計上、トーチの炎の制御はトーチ自身の思考が担っている。
 出来上がるまではそれで問題ないと開発も思っていたのだ。
 しかしトーチの思考ロジックは感情の起伏が激しかった、これが少々問題であった。
 トーチの思考ロジックを弄る、という解決方法以外を模索していき『修行』を選んだのである。
 精神的負荷をかけることで『抑え込む』というパターンを覚えるはず…と、そう仮説を立てて―――
 しかしギアにより無意識の最大火力の『味』を知ってしまったトーチは事件後心が揺れていた。
 悟られないよう平静を保っているように努力はしているのだが、敏いツンドラには気づかれているかもしれない。
 そのようなところにブラストが来た。
 何故か火柱が見たいと。
 人をキャンプファイヤー代わりにしているのではないかとも思ったが、断る理由もないので傍に置いている。
「ししょーいくぜー!」
「え?」
 瞑想から目を開いたとき唐突にブラストの声。
 見ればブラストがチェインブラストを投げていた。
「ちょ!?ッハイヤァ」
 炎を飛ばして空中で誘爆し処理する。
「そらそらそらァ!」
「まてブラスト!なんでだよ!!!」
「無理やり抑え込むのが無理なら出しちまえばいいかなーって!」
「引いて駄目なら押す理論は止めろ!!!」
 叫びながらトーチとブラストの攻防戦が続く。
 一応ブラストも気を遣っているのか森が荒れない程度の加減で小さなチェインブラストを投げてはいるのだが、トーチがミスれば火事は起こるだろう。
「ブラスト!もういいから!今日はおしまい!」
「そう?」
 素直に止めるブラスト。
「…やっぱ爆破はいいよなぁ」
「…溜まってるのか?」
「…え?」
 キョトンとするブラスト。
「鬱憤、みたいなのが。お前の仕事はよく知らないが、上手くいってないんじゃないか?」
「う、うーん…」
 トーチの指摘にブラストはバツが悪そうな表情で唸りながら視線を背ける。
「その、スランプ…なんだよねぇ」
 たはは、と笑っていう。
「調子がでないっていうか…なんか、なぁ…」
「…そうか。ブラスト、ついて来い」
「へ?」
「ほら、少し先にいくと開けてて岩場ばかりの区画があるんだ」
 トーチはブラストの腕を掴んで引っ張っていく。
「師匠?なになに?」
「……1度切りだ」
 岩場につくとトーチはブラストから手を離して距離を取る。
「全力でぶつかってこい、俺も全力で応えよう!」
 最大火力になり全身が燃え上がる。
 ダンッと地を脚で踏みしめると炎の風が舞い上がる。
 呆けた顔でトーチを見上げていたブラストだが、意図が解ってニヤりと嬉しそうに笑う。
「いいねぇ!さすが師匠!一緒に弾けようぜぇ!!!!!」
 パワーギアを発動させた時と同じサイズのチェインブラストを出してくる。
 あぁ、やっぱりとトーチは熱に魘されていながら冷静に思った。
 彼も自分と同じく体が覚えてしまっている―――
 天まで届く火柱を上げるトーチ。
 遠慮なく、本気で―――しかし思考は冷静なまま、ブラストの放つチェインブラストに炎の拳を放った。



   ****



「た~まやー!か~ぎや~!ブラスト屋~!って感じでいい爆ぜっぷりだったぜ!」
 ブラストは適当な石の上に腰掛けてトーチが持ってきたポトフを食べながらご機嫌にいう。
「すっきりしたか?」
「うん、スランプはそのうちどうにかなると思うし。ありがとう師匠」
「お前も俺と同じだったんだな」
「…あー、その…まぁ、そうかな。でも、悲しさしかなかったんだけどさ…今日はなんか、違った」
「俺もそうだ。自分の意思で引き出したからじゃないか?限界は身体が覚えているわけだし」
「そういうものかな…」
「おかわりは?」
「ん~、師匠が焦がしたターキーたべたい」
「いや、あれはダメだろう…炭だぞ」
「え~~師匠、食べものを粗末にしてたらダメなんだぜ?てか修行より料理の練習しよう!」
「う…精進する…」
「明日から!俺付き合ってやるよ!料理したことないけどさ!」
「それはそれで怖いんだが…まぁ断ってもやるんだろう?お前は」
「師匠の理解が早い~!師匠大好き!おかわり!」
 ブラストはトーチに抱き着きながら空っぽのお皿を差し出してくる。
「はいはい可愛い弟子をもって俺は嬉しいよ」
 トーチは言いながらブラストの頭を捏ねくり撫でて皿を受け取った。

top