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トーチマのキャラが固まらないねェ
恋人未満ですねェこれで付き合ってないんですよねぇ、不思議ですよねぇ
アウトドアアドバイザーの朝は早い。
ミーティングと設備のチェックその他雑務をみんなで行う。
そして仕事を楽しく行い業務が終了すると修行を行って一日を終わらせる。
トーチの一日はそんな感じでみっちりと詰まっているのだが、今日は少し違う。
季節は冬、お客も少し減る。
そして大きな湖は氷が張る。今年はしっかりと氷が張っているので良かった。
さすがに危険もあるので人間は滑るのを禁止しているが、人間ではない彼なら大丈夫なので特別だ。
依怙贔屓といわれるかもしれない。しかししてあげたい思いが強いので押し通す。
「やぁトーチ。お久しぶり」
優雅に腕を上げて挨拶をするツンドラ。
「久しぶりだ。元気そうでなにより」
「うん。本土に戻るのはやっぱり心が躍るね。しかも今日は友人の職場で遊ぶんだから特に」
「楽しんで行って欲しい。」
「今日一日、君を借りることはできる?」
「あぁ、そのつもりだったぞ?」
「そうか。なら良かった。折角だからね、作ってきたんだよ」
「?」
ツンドラは何やら荷物の中から取り出してくる。スケート靴だった。
「君のサイズに合うはずだから、つけて一緒に滑ろう」
「う、うむ…しかし私は踊れないぞ?」
「いいんだよ、滑ってくれればそれだけで」
にっこりほほ笑むツンドラ。
トーチは小さく頷いた。
◆◆◆◆
「飛ぶと割れちゃうかもしれないから走るだけにしよう」
滑りを確認しながらツンドラは言う。
「さぁトーチ」
しなやかに伸びてくるツンドラの腕。トーチはちょっと戸惑いつつその手を取って足を踏み入れた。
「おおおお?」
「君はバランス感覚いいからすぐ覚えるでしょう。それまで僕がエスコートしてあげる」
ゆっくり滑りはじめる。
最初こそふらついたがトーチは感覚を掴んでツンドラに引率されつつゆっくりと滑り始めた。
「ふむ、君の世界が少し解った」
「そう?」
目を細めるツンドラ。
「僕のパートナーになってくれるかい?」
「私じゃ氷を溶かしてしまう」
「残念だね、相性はいいと思うんだけど」
「相性?」
「僕も君も似てると思うんだけどなぁ。」
「…」
「ふふ…」
肩の炎が激しくなるのでツンドラは小さく笑う。
「あまり心乱れると氷が溶けちゃうよ?」
「す、すまん、やはり修行がたりないな…」
バツが悪そうにいいながらトーチは火力を抑える。
「ツンドラ、ありがとう。楽しめたしこれ以上ここにいると溶かしてしまいそうだから私は君の美しい滑りを見ているよ」
「そう?じゃあご堪能ください」
からかう様に言いながら一礼する。
トーチはゆっくりと滑り湖から出て腰を下ろす。
それを確認したツンドラは腕を上げてポーズをとると、再び滑り始めた。
トーチはツンドラの姿を感心した様子で見つめていた。
彼を見ていて飽きない。
彼の周りがキラキラしているのも、自分で作り上げた装甲のデザインのせいだろう、彼なりに綺麗に魅せる方法を考えているのだ。
それに思わず感心してしまう。
ツンドラはくるくる回って―――跳んだ。
「え!?」
思わず声を上げるトーチ。
着地した瞬間バキっと大きな音と共に水しぶきが上がる。
「ツンドラ!!!!」
思わず駈け出そうとするが、下手に踏み込んで自分が落ちたら元も子もない。下手すると壊れてしまう。
「あー!浸りすぎて跳んじゃったよ!あっはっはっ!」
ひょっこり顔を出し笑いながらツンドラは這い出てくる。
「華麗な着地にならなかったね」
「大丈夫か!?怪我してないか!!?」
「あぁ、うん。奇跡的に怪我はしていないよ。ごめんね氷割っちゃって」
「いや、いいんだ。それより何か拭いて温まったほうがいいだろう?」
「北極より暖かいけどねここ。あ、荷物の中にタオルあるから大丈夫だよあわてなくても」
ツンドラはテキパキとタオルを出して水分を拭い始めそこでふと思いついたかのように目を細めてトーチを見る。
「ねぇねぇ、トーチ。ちょっと僕に貸してよ」
「何を…?」
「火だよ」
そういってトーチを座らせてその横に座ると腕に身を寄せた。
「温かいねー?」
「……」
火柱があがる。
「あっはっは!そんなに緊張することないじゃないか!」
「す、すまん!!」
「…ね、しばらくこうしてていいだろう?」
「あ、あぁ…その、身体が乾くまでだな?」
「うん、乾くまで」
「あぁ、いい。乾くまでなら、いい」
トーチはツンドラの肩をもって抱き寄せる。
目を細めるツンドラ。
「僕ねぇ、暖かい冬って初めてだよ」
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