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 シャドーはマグネットに対して少々感じているモノがあった。

 それは信頼だろうか。

 それは好意だろうか。

 それは情愛であろうか。

 具体的に『それ』をどうこうしたい、とは思わなかった。
 ただそれについて答えを得たいという訳でもなかったからだ。
 とはいえ…

「ジェミニちゃん!」

 でれでれと、マスクで隠れた顔を緩ませてマグネットはジェミニをとにかく気にかける。

「…」
「…」

 眺めていると、いつの間にか横にスネークが立っていた。
 彼も自分もつまらなさそうな表情を浮かべて。
 お互い紅い瞳を向け合う。
 きっとお互い思ったのはこうだ、「ここまで共有しなくていいだろう」と。
 まったくその通りである。

「お前」
 スネークが口を開く。
「マグネットをKILLして?」
「拙者アサシンではなくニンジャ故」
「毒使いが何をいう。簡単ジャン?痺れさせてセックスGO」
「それこそスネーク殿だって回路乗っ取ればレイプいけるでござろ??」
「…萎えるよねーオレ様そういうのちょっとネー」
「拙者もスネーク殿のデータを頂いている故、趣向は似るので同じでござるよ」
「お前も大変だよなー」
 ぽんぽんと頭を撫でられる。

 大変とは

 スネークに拾われ、知識(データ)を得るためスネークのデータをもらって今の自分があることだろうか

 それともスネークと同じく自分の心を把握できないことだろうか

 しかし

 シャドーはマグネットへ視線を戻す。
 サードの性質上、個人が内面に抱えている重たいものは自分を含めて面倒くさいものが多い。
 触れないのが暗黙の了解だ。
 だからスネークもシャドーも、何も触れずに過ごしていた。
 過ごしていたのだが、ある日うっかり口を滑らせてしまった。
 それはマグネットと二人っきりだということが原因だったのかもしれない。
 気が緩んで、自分の素がでてしまったのだろう。
「マグネット殿はいかにして相手に対する衝動を抑えているでござるか?」

 あー、しまったとシャドーは思った。
 回答は解っているからだ。

「ジェミニちゃんを眺める、かな?」

 
あー、やっぱり。

 げんなりした気分と、そして別の感情が働く。
 シャドーの手がマグネットの顔を掴むとそのまま引き寄せ、マスク越しにキスをした。

「眺めているよりは、こっちの方がいいと拙者は思う」

「……」
 パチリ、と瞬きひとつ。
「ふふ…そうかもね」
 
目を細めて、マグネットはそう呟くとシャドーの頬へ手を伸ばし、おでこをこつんとぶつけた。


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