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普段誰も通ることがない廊下にアースとサターンはいた。
アースは壁に手をついて、声を押し殺しながら下半身からくる刺激に耐えていた。
「隊長、踏ん張ってもらわないと終わりませんよ?」
後ろからアースの腰を掴んで腰を動かしていたサターンが呟く。
「う、うぅ…」
アースの返事はない、代わりに呻く声が聞こえてくる。
その脚は健気にも頑張って立とうとしているのだが、さきほどからガクガクとした震えが大きい。
浮遊すればいいのに、そこまで頭が回らないのか集中力が足りないのか。
「あっ…あ…ぁぁ…!!」
声が大きくなる。
限界が近いらしい、頭を壁に押し付けている。
見えないがきっと口から流れる唾液が床を濡らしているだろう。
「大きいですよ、声。ここ誰も通りませんけど、声できちゃいますよ?
別に俺はいいですけどね、皆に見てもらったほうがいいですか?」
「ッ…」
首を横に振って拒絶する。
隊長としての立場がある、ということかもしれない。
(じゃあ俺は…?俺の隊長、俺の…)
サターンはアースを強く抱きしめる。
「ッ~~~!!」
熱い熱をアースの中へ放つ。
ポタポタと床にアースの廃油が滴る音がする。
「……」
ずるずると崩れるアース。
その表情は熱で蕩け、荒い息をし熱を追い出そうとしているようであった。
「さ、たーん…」
アースのが声を絞り出す。
身を起こそうとするが腰に力が入らないらしく、這いずるようにサターンの方へ向いて手を伸ばす。
「あ、あい…してる、って…言って…」
サターンは膝をついてアースの手を握る。
「愛しています隊長」
「もっと…欲しい…もっともっともっと…!!!!」
酷い顔。
サターンは目を伏せる。
足りませんか。
俺の愛では足りませんか。
こんなにも愛しているのに足りませんか。
愛ってなんだろう。
****
「愛情?なにそれ」
想像通りのマーキュリーの返答。
「殺すことじゃないか?」
だいたいそんな返事がくるだろうなと思っていたジュピターの返答。
サターンは「いい人選がまったくいねぇ」と愚痴る。
しかしこの二人以外、話せそうなほど心許せる仲の者はいなかった。
無論ルーラーズに対してサターンは好感を抱いている、しかし隊長が絡むのだ、迂闊に話せない。
無意識的に、友達だろ!と豪語するマーキュリーと、教育係として起動直後から面倒を見てくれていたジュピターに
話を持っていってしまう。
サターンは内容を一部ぼやかしながら二人に伝える。
アースの話になるとマーキュリーの表情は変わった。
いつも冷やかすようなニヤニヤとした笑みを浮かべているのに、真面目な表情になる。
「それで?アースをずっと抱いてやってるってわけか?」
「そう。でもさ、それでいいのかなって」
「命令ならそれでいいんじゃないか?」
ジュピターが呟く。
「なんか引っかかるもんを感じるんだよ…。ジュピターなら愛してっていわれたらどうする?」
「殺すかなぁ」
「なんでそうなる」
「幸せを感じたら死ななくちゃ。でも俺、ジャイロと一緒に死にたいから
お互いが幸せだって感じるまで死ねなくて…」
(あぁ…こんなのと相思相愛で大変だなプロペラの人…)
必死にジャイロが自分の気持ちを殺してる理由を察してサターンとマーキュリーは同情する。
でも一緒に添い遂げたい気持ちは解るサターン。
サターンは割とジュピターに感化されているのでマーキュリーはちょっとサターンが心配である。
「なぁサターン…、本当にアースが好きなんだよな」
「あぁ、まぁ…」
「でもアースのこと疑ってるんだろ?」
「え」
「ただの戯れじゃないか、誰かの代わりじゃないか」
「…」
コアがギリっと軋む。
その通りだ。
「まぁサンゴッドさまとアースの繋がりは深いからそう簡単に切り捨てられないと思うけどよ。
でもアースはお前の愛を感じ取ってお前を選んだんだと思うぜ」
「都合よく…利用されているのではないか、って…俺は…」
ギリギリと環を握り締める。
マーキュリーは察する、アースを許せないのではない、嫉妬を抱き疑う自分自身が許せないのだと。
暗い目をするサターンは発狂時のジュピターを連想させて大変よろしくない。
しかし一度、その感情を爆発させなければいけないような気もする。
(ん~、どうしよっかなぁ…俺が化けてもなんかアースもサターンも勘が鋭くて見破るしなー)
「あ、そうだ」
「ん?」
「いやなんでもねぇ」
マーキュリーは手を振って答える。
(アースに直接言ったほうが早いよなこれ)
****
「そうか…サターンが」
「もっと会話のキャッチボールしようぜ」
「あぁ…」
アースはマーキュリーから視線を外し、何か上の空のような返事をする。
「アース?」
マーキュリーはアースの膝に乗って顔を掴む。
「…気だるい」
「メンテしろよ。気だるいってなんだよ曖昧すぎだろ」
「…いや、原因はわかっている。しばらくしたら治る。」
「ちょっと『接続』させろ」
「な、やめっ」
アースが止めるよりも早く、マーキュリーはアースと繋がる。
「~~…ぐぇ、気持ち悪…人間だったらジャンキーとかいうやつ。
なにやってんだよお前。電子ドラッグ片っ端から使ってんの?情報がぐちゃぐちゃ。気だるいっつーか吐くだろ」
「色々試していた。精神が安定しないからな。
最初は感度の調節が上手くできなかったから使っていたんだが…」
「立派なジャンキーに育ってしまったなぁ」
情報に強いマーキュリーならともかく、アースはもともと感化されやすい体質である。
自ら使い込めばこうなってしまうだろう。
よくもまぁ普段どおりの振る舞いが出来ているものだ、その辺はプライドのようなものが働いているのだろうか。
「こんな状態じゃサターンの話してもダメだな…」
「そういえば、さっきからサターンの名前が…」
「サターンの話もう一回しようか?」
「…サターン、私を愛してくれているだろうか。愛してくれているのはわかるのに、本心が見えない」
アースの瞳が揺れ始める。
「心が見えないのが不安だ、何故見えないんだろう!この体がレプリカだからだろうか!?
私の心が弱っているのだろうか…!!!」
「お、おい落ち着け!」
アースを抑えるマーキュリー。
「サターンっ…捨てないで欲しい、私を捨てないで…私、私の存在する理由が……」
項垂れる。
「大丈夫だってアース…サターンはお前のこと捨てねぇよ…」
****
視界が霞む、意識がどこかへ引きずり込まれていきそうな感覚。
電子ドラッグを読み込みすぎただろうか…。
最近、そのあたりの感覚が麻痺してしまっていて判断が出来ない。
「サ、タ…」
声、出ているだろうか。
舌が重い。
ぼんやりと目の前にサターンがいる。
あぁ愛しの者。
手を伸ばせばその手を優しく握ってくれる。
名を呼べば優しくキスをしてくれる。
でも何故か愛してくれているという実感がわかない。
焦りを感じる。
愛して欲しい。
どうして愛してくれない?
なぜ?この体はダメなのか?もっと気持ちよくさせないとダメ?
もっと――――
アースは喉の奥までサターンのナニを咥え込む。
「う、っ…たい、ちょ…」
サターンは刺激に耐えながら、首筋から伸ばしたコードをアースのうなじへ接続した。
流れてくる不愉快な情報。
マーキュリーが言っていたとおりだ。何故気づかなかったのだろう。
そうだ、アース隊長を直視していなかったせいだ、目を背けていた。
ただ答えていただけだ、そうだ、そうだった。
コードを外す。
「申し訳ありません、隊長」
サターンは心からそう呟き、アースの頭を掴む。
「んぅ…うっ…」
喉の奥を激しく犯されはじめアースが呻く。
気持ちがいい、アースを蹂躙しているという実感。
熱を放つと、アースは必死に、涙を零しながらも喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
「はぁっ…」
顔を離すアースを突き飛ばすように倒し、脚を掴みあげる。
「どうして欲しいですか?」
「い、いつもの、ように…犯して…」
「じゃあ準備してください、できるでしょう?」
「じゅん、び…?」
アースは揺らぐ瞳でサターンを見る。
「その手で受け入れる準備を」
「わたし、が…?」
「できるでしょう?」
「うっ…」
アースは素直に手を伸ばし、秘所に指を―――
「はっ…あ、……」
「隊長、いつも一人でそういうことしてます?」
「…」
「聞いてるんですけど」
「うわぁ!?」
ナニを握られアースは声を上げる。
「もしかして虐められたいんですか?いいですよ、そういう方が実をいうと、好みです。
あ、そういえばそういう感じでしたよね、今度はやっぱり皆の前でシますか?」
「~~~ッ…!」
ビクンビクンと身体を震わせてサターンの刺激に身悶える。
「ほら、ご自分で弄るの忘れてますよ。薬でバカになっていてもそれぐらいできるでしょう?」
「サタ…!?」
「もう止めて下さいね…」
「さ、た…」
「隊長…」
「っ…あ、ぁ」
アースは指を動かし始めた。
****
「…アース隊長、お許しください」
「サターン、サターン…!」
アースはサターンに揺さ振られる中、しがみつきキスを強請る。
快楽に溺れてしまったアースはただ嬌声を上げて身悶える。
そこに隊長としての顔はない。
そんなアースに許しを請う自分は卑怯だ。
「俺も、不安だったんです。本当に…」
キスをする。
舌が絡んでくる。
あぁ、繋がっている。
これが幸福感というやつなのだろうか。
****
「迷惑をかけてしまったな」
アースはサターンに寄りかかりながら呟く。
「ドラッグはほどほどにする」
「いや止めてください。どんだけ依存してるんですか。
…隊長を追い込んでしまったようで、申し訳なく思ってます。
俺は不安だった。アンタが俺をサンゴッドさまの代わりにしているだけかもしれないって」
「…私はお前を愛しているよ」
「俺もアンタを愛してます」
「うん」
サターンの手が優しくアースの頭を撫でる。
それがとても心地よい。
「お前を好きになってよかった」
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