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カラっと晴れた良い日。
とあるガレージの前でクイックは車の洗浄を行っていた。
彼にしては珍しくゆっくりと(丁寧にともいう)手を動かしている。
「あー、いたいた。またターボの機体洗ってんのか」
フラッシュがやってくる。
そうクイックが洗浄している車はターボである。
車形態でクイックに洗浄してもらわないと落ち着かないという。
それも自動車だった時代からクイックが彼の手入れを博士の代わりにしていた名残のようなものだろう。
「あぁ、綺麗にしてから一緒に走ろうかって話してさ。
お前も乗る?」
「乗るんだったらターボに乗るわ。お前の運転酔う」
「なんだと」
『クイックは人を乗せて走るのに慣れてないから…かな』
遠慮がちにターボが呟く。
「そんなもんか?」
『うん、あと…博士のドライビングテクニックが多少影響してたり…?』
「だからお前一回ターボに負けたんじゃね?」
「グググ」
ニヤニヤするフラッシュにクイックは唸る。
『ところで最近、クイックとフラッシュ仲いいね?』
「晴れて恋人同士になりましたーーー!!!!」
「……」
めっちゃくちゃ嬉しそうに宣言するクイックと手で顔を覆ってしまうフラッシュ。
あぁ、フラッシュも大変だナァとターボは思う。
『おめでとう。』
とりあえず祝福する。
「ターボも早く気になるやつと仲良くなれればいいな」
「そんなやついんのかよ」
「いるんだぜ?なぁ?」
『でもよくわからなくて。ボク皆と感覚が違うから』
「当たって砕けろ」
キッパリいうフラッシュ。
「だよなー、それが一番」
横で頷いてるクイック。
「もしフラれて死にたくなったらメモリー弄くって忘れさせてやるよ」
「お前ちょっとスネークに影響受けすぎじゃね??」
『あ、あの。とりあえず頑張ってみます、ありがとうございます』
****
「あ、ターボお帰り~」
ソファでくつろぐフリーズがいた。
マスクを外してトマトジュースを飲んでいる、おそらくシェードに貰ったのだろう。
「フリーズ一人か?」
「さっきまで皆居たんだけど帰ってしまったよ。
俺はターボが帰ってくるまで待とうかなって思ってさ。」
「悪い」
「俺が勝手にやってることだ、気にするな」
ターボはフリーズの横に腰かける。
もし自分に口があればもし自分が普通のロボットだったなら
一緒の飲み物を飲んだり出来ただろうに、自分はガソリンしか摂取できない。
少し歯がゆい。
「フリーズ、今度一緒にドライブに行かないか?」
「おお、いいよ。」
「良かった…」
「ターボ?」
フリーズはターボに引き寄せられ、こつんと頭に頭を押し付けられる。
「オレはフリーズが好きだ」
「俺もターボ好きだぞ?」
「そういう好きではなくて、あぁ、こういうんだったっけ?
愛してる」
「………」
フリーズは笑顔のまま硬直する。
愛してる?
愛してる??
アイシ……
「え、えぇぇぇぇ!!?お、俺にはセンパイという尊き存在もいるんだけどな!!??」
逃げようとするフリーズだががっちりホールドされてしまう。
「…ボクじゃだめ?」
「図体だけのボクっこめ…」
素のターボになったのでフリーズは逃げるに逃げられない。
フリーズはターボの背に腕を回して優しく撫でる。
「ターボに惚れられるとは、意外だったが嬉しいよ。
ただこれはカッコよくないな、俺から告白してキメないと」
「…」
「保留じゃだめ?」
「ダサい」
「ぐぅ!だ、だってさ!俺告白なんて経験ないんだよ!?
しかも相手は弟みたいに思ってたターボからだぞ!
どんだけ男の子に成長してんだよ!!」
お前は近所のお姉さんか
思わず突っ込みたくなるがターボは言葉を飲み込む。
まぁこんなフリーズが好きな自分も自分なのだが。
「…突然で悪かった。
できればOKの返事が欲しい」
「あぁ…少し時間をくれ。心の整理が…。
あ、でもちゃんとドライブには付き合うからな?」
本当、こういうところが……
ターボはギュウウっとフリーズを抱きしめた。
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