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「なんでオレがアースじゃないってわかんの?」
アースの姿をしたマーキュリーは残念そうに口を尖らせながらサターンに問う。
「浮いてねーし」
「おお」
「歩いてくるし」
「なるほど。」
「…つか、お前さぁ。その姿は型取りしたのか?」
今度はサターンが問うてくる。
「んーん。サンゴッドさまに協力してもらった。
知ってた?サンゴッドさまとアースは同規格なんだぜ。顔一緒だろ?
表情の使い方が違うけど」
「古株の特権だよなー。そういう情報」
「アースの色んなこと、知りたい?」
目を細めながらマーキュリーはサターンに顔を寄せる。
「お前のこと好きかどうか、とか」
「吸うぞ」
「恋バナぐらいいいじゃん~!カカカカカッ!!!」
グジュルと元の姿に戻りながらマーキュリーは部屋を出る。
「…好きなことしていいのになぁ」
「好き勝手されるのは困るんだが?」
「おお、アース。いたのか」
「……」
アースはため息を吐く。
「おいで」
「?」
マーキュリーはアースの後を付いていく。
(確かに歩いてねぇなー。全然意識してなかった)
これが当然だと思っていたからだろう。
靡く髪を目で追う。
この髪は好き。サターンは色が好きと言っていたが、自分はこの髪から発する熱量が程よくて好きだ。
どうもアースが向かっている場所はアースの部屋であるようだ。
「入れ」
「おう」
マーキュリーは遠慮なく入ってソファに座る。
アースの部屋はサンゴッドが出入りするためか、来客用のソファとテーブルがあるし棚には大量に酒が並んでいる。
マーキュリー自身はあまりアルコールは摂取したくないので興味がわかない。
けれどもサンゴッドとアースが楽しそうに飲んでいる姿を見ていると羨ましくは思う。
「マーキュリー」
「ん?」
マーキュリーの横に座って、アースはマーキュリーを抱きしめる。
そして手を握ってくるのでマーキュリーは握り返した。
「…あのさ、アース。オレもう大丈夫だけど」
「そうなのか?サターンに接触しているのはこういうことなのかと思ったのだが」
「んーん。」
マーキュリーは「まぁいいか」と呟きながらアースの肩に額を押し当てる。
「サターンは、友達。構ってくれるからスキ。アースもスキだよ、過保護なところがさ」
「私はお前の心配をしているんだぞ」
「過保護」
フフフと嬉しそうにマーキュリーは笑う。
「もうオレ、大丈夫だし。他人との境目がわからなくなることないよ、もう」
「そうだろうか」
「そうだぜ。うん…『オレはオレである』、誰でもない。
あぁ、でも…誰かの代わりになろうと思うことはあるけれど」
「それは危険思考なのではないか?例えばお前がサターンのために私になっていたとして
お前は本当にお前でいられるのか?お前という自我が崩壊してしまわないか?」
「大丈夫だと思う。だってサターン、オレのことマーキュリーだってハッキリいってくれるんだ。
アースの代わりにしてくれねぇ」
「そうか」
スッ…と身を離すアース。
しかしマーキュリーは腕を広げる。
「?」
「もっと」
「何故だ」
「甘えてんだよ」
「柄でもない」
「たまにゃいいだろ?」
「…」
アースはため息をつく。
「ならば勝手にするがいい」
ポンポンと膝を叩く。
「えへへー。アース暖かいからサンゴッドさまの次ぐらいに好きだぜー」
ころりと寝転ぶマーキュリー。
「調子のいいヤツ」
「だってオレだしー。オレだからお前はこうしててくれるんだろ?
だったらオレはオレでいなくちゃ勿体ねぇーよな」
手を伸ばす。
「なかなか危ういよお前は」
その手をアースは右手で握る。
暖かい手だ。
安心感を得る。
まだ自我が不安定だったときにアースに助けられたことがある。
こうやって触れて「他人」を感じることで自分を認識した。
今は違う、ただ安らぎを得るために触れる。
孤独は嫌だ。
孤独は苦しい。
ふと思う、アースもあの時孤独だったのだろうと。
だから廃棄されかけた自分を拾ったのではないのかと。
アースは「失敗作」だなんて一言も言ったりしなかった。
高慢で仏頂面の可愛くないヤツだけど。
礼を言うべきだろうか?
しかしまた「柄にもない」などというのだろう。
しかしもしかすると…
「なぁアース」
「ん?」
照れ顔を見れるかもしれない―――
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