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木星と旋回の百合
「やぁやぁジャイロ、子連れみたいで面白いね」
 スターが茶化しにくる。
「子連れいうな!!!全然タイプが違うだろうが!」
 ジャイロは背後について回るジュピターを指差し叫ぶ。
「やだなぁ、旧型と新型って感じがするじゃないか。
 ジュピターはジャイロより古いらしいけど」
「やかましい…黙れ、俺がこれ以上不機嫌にならないようその口を閉じるがいい」
(面白いなぁ)
 参っているジャイロを眺めて思うスター。
「よくわからんが、親子よりコイビト同士がいいよな?プロペラァ」
「却下。てかどこまでついてくる気だ。お前のところ門限あるだろ?」
「居場所いっとけばOKだから」
『………』
 スターとジャイロは頷きあい、二人はジュピターを抱えて基地の外へ投げ出した。



「ひでぇ!俺が何したっていうんだ!!!」
 ピーピー喚くジュピター。
「バカか!WRUにDWNの基地の場所を知られてたまるか!!!!」
「いいじゃん基地のひとつや二つ。いくつもあるんだろ?」
「経費削減してんだよ!!!そうころころ居場所かえられるか!!」
「ふーん?」
 どうもその辺の事情はまだよく解らないらしいジュピターは首を傾げる。
「じゃあ空中庭園で会うしかないのか?」
「お前が会いにこなければいいだけだよ」
「俺が寂しいだろ。折角プロペラに会いに来てやってるんだぜ!?」
「お前プロペラは嫌いなんだろ?」
「嫌いじゃない、目障りなだけだ」
 ジュピターは目を細める。笑っているのだろう。
「知ってるかジャイロ。愛は憎しみになるらしいぞ。
 つまり憎しみも愛になる可能性があるし、好き嫌いも反転すんじゃないか?」
「世がその理屈であってお前に好意をもたれても俺が好意を持っていないから関係ない。」
「そういう所がムカツクからいいんだぜ」
 ジュピターの目がジャイロを見る。
 猛禽のような目にも感じた。
 いくら身体がレプリカであろうと、WRUに監視されている身であろうとSRNとしての凶悪さはそのままなのだ。
 向こうからすれば「大人しくしてやっている」と思っているのかもしれない。
「なぁなぁジャイロ、街に行こうぜ街」
「なんだ急に」
「コイビト同士になるには既成事実を作ればいいらしいんだよ。
 ラブホいこうぜ?本当はお前の部屋で襲うつもりだったんだけど」
「……」
 手で顔を覆うジャイロ。
 なんだろうこのノリ、どこかで見たことがある…あ、スネークマンだ なんて思考がぐるぐる回る。
 ジュピターの身内にそういう思考の持ち主がいるのだろう…。
 ネプチューンは性格が温厚なお陰でウェーブが襲われたという話は聞かないのが救いだ。
 しかしグラビティーはマーキュリーにちょっかいを出されていた気がする。
「マーキュリーか…」
 思わずつぶやくが当たっていたらしくジュピターが頷いている。
 冷めた目でジャイロはため息を吐いた。
「ラブホなんていく金なんてないから諦めな」
「安心しろ、お小遣いは貰っている」
「お前らどこまで管理されてんだよ…俺もほしいわお小遣い」
「そんな自由になるわけじゃねーけどな。サターンが全部管理してるし。」
 あいつケチなんだよなー、少ないんだよ…なんてブツブツ文句を言う。
 解る。身内に守銭奴がいるので解る。あれは取り立ててしまうからお小遣いの管理とはまた違うのだが…。
 ダブルピースしているバブルとクリスタルの姿が脳内にチラついて思わずジャイロは目を閉じる。消え去れ悪魔ども。
「いくら持っているんだ?」
「これだけ」
「…」
 出してきた現金をジャイロは全て奪い取った。
「何すんだよ!!?」
「ヤるんだろう?ヤり賃を貰って当然だ」
「何だろう、すごくお前が玄人に見える」
「夢を壊すようで悪いが俺は別に未経験ってわけじゃないからな?」
「いや、まぁ…そんな気はしてた…そういう商売もしてたのか…プロペラなのに」
「してねーしプロペラ関係ねぇよ!!!!」



    ****



 ロボット用のラブホなどはないが、セクサロイドを連れ込んでヤれる店があるのでそこを使用することが多い。
(さっさと済ませて帰ろう)
 ジャイロはそう考えながらマスクをはずす。
「外れんだなそれ」
「お前は外れないタイプか?」
「いや外したくない」
「あぁ?お前も外せばいいだろう」
「おい!」
 ジャイロはジュピターに詰め寄ってマスクに手をかける。
「やめろって!」
「やかましい」
 力が制限されているジュピターが戦闘用のジャイロに適うわけもなくマスクを引き剥がされてしまう。
「なんだ、普通の顔だな」
 いいながらジャイロはジュピターにキスをする。
「うっ…ん…や、めっ…」
「…酷い声だな。発声器壊れてるのか?」
「あ、あぁ…だから、マスクで補助してるから返せ」
「…嫌だね」
 ジャイロはマスクを握り折る。
「あぁ!?何しやがる!!」
「何喋ってるのか聞き取りにくいな…醜い声で囀るお前はなかなか良い」
 ジャイロは喉の奥で笑いながらジュピターのズボンを脱がせる。
「!? っまて、俺が襲われてる!逆!逆だ!」
「フハハハハハハ!襲われてたまるか!!己の無力さを感じるが良い!!」
「エレクトリック―――」
 腕に電流を集めようとしたがジャイロに両腕を掴まれそのまま再びキスをされる。
(な、んで力が抜けるんだ…!?)
 たしかに自分は力の制限をされている、しかしその制限は外せるよう細工してあるのだ。
 だからいくらレプリカの身体とはいえ、目の前のこのロボットを押しのける力は出せるはずなのに―――
(本当に惚れちまってんじゃねーか…)
 顔が赤くなってしまう。
 傲慢なプロペラ野郎の心をへし折って自分のものにしてしまいたい欲求があるのに、この状況に満足しそうになっている。
「可愛い顔をするんじゃない、変な気分になるだろ」
 ジャイロが戸惑いながら呟く。
「み、みるんじゃねーよ…さっさと済ませろよ!恥ずかしくなってきた!!!」
「お前から言い出したんだろうが…」
 ジャイロは呆れながらコードでお互いの首筋をつなぐ。
 物理的な接触だけでは不慣れなジュピターがつらいだろうと判断したからだ。
 パルスを流すとジュピターは声を押し殺して身もだえ、そしてパルスを送り返されジャイロは呻く。
「ま、負けねーからな」
「ほざいていろ…」



   ****



「ンッ…グッ…」
 ジュピターは四つん這いの格好で後ろからジャイロに攻められていた。
(発声器、直しとけばよかったな…)
 涙が溢れてくる。
 声を抑えるのも辛くなってきた、それほそ快楽に溺れ始めている。
「声を出せ」
「…」
 首を横に振るジュピター。
「別に、お前のその声は嫌いじゃない」
「っ!?」
 ゾクゾクとした感覚が這い上がってきて、ジュピターは思わず声を上げた。
 ジャイロも察して、締め上げてくるジュピターの中をより激しく刺激し始めた。
「アッ―――アァァッ…!!!!」
 ジュピターの声は酷いもので、割れたスピーカーから出るような耳障りな音だった。
「ははは、酷い声だ」
「じゃ、いろっ…!!」
「ッ…」
 ジュピターの意識が飛ぶ。
 力を失うジュピターをジャイロは抱きとめた。




   ****




「予定とはまったく違ってしまったが既成事実できたことはできたので、これでコイビト同士だな」
「金があればいつでも相手してやる」
「愛を!!!愛をくれ!!!!」
「喚くな、煩い。ただでさえ聞き取りにくいんだから」
「お前がマスク壊すからだろ…」
 ジュピターは手で口を覆いながら呟く。
「なぁもう一回俺のこと好きっていってくれ」
「スキとか一度もいったことはない」
「言ったはずだぜ」
「記憶を改ざんするな。俺だってお前から一度もスキだとか言われたことない」
「そうだったっけ?」
 キョトンとするジュピター。
「そうだ」
「ふーん?」
「ジュピター」
「なんだよ」
 改めて名を呼ばれるので身構えるが、ズイっとジャイロが寄ってきたのでジュピターはそのまま動けなかった。

 特に言葉は交わさず、唇だけ重ねた。


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