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「お前、足欲しくね?」
「なんて唐突なのかしら」
 パイレーツの唐突な質問にスプラッシュは呆れた顔で呟いた。
 二人は転覆した船の上に座っていた。
 船の持ち主はパイレーツなのであるが。
 パイレーツは仲間の救援待ち。
 スプラッシュは応援待ち兼パイレーツの見張りである。
 何度もやりあっているうちに、何とも奇妙な関係になってしまった。

 ―――船が転覆したら休戦

 パイレーツよりスプラッシュの方が海中での動きが早い故に、パイレーツが先に諦めたのである。
「私が足をつけたら貴方が有利ね」
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ。
 陸に上がるの不便だろ」
「特に不便だとは感じたことはないけれど…」
 スプラッシュは少し考え、パイレーツを見る。
「欲しいといったら何と引き換えに足をくれるのかしら?」
「あん?あぁ、オトギバナシか」
「そうよ。やっぱり声かしら。私の声はお好き?」
「セイレーン」
「貴方だけよ、私の声が嫌いって人」
(苦手なだけなんだけどな…)
 あえて訂正しない。
 誤解されたままのほうが、距離が保てていい。
「あ、でも貴方は魔女役のつもりじゃないんでしょう?」
「は?」
「王子様かしら?一緒にダンスなんていかが?
 私をエスコートしてくださる?」
「……人魚の肉って売れるとおもわねぇか?」
「ヘタな話の逸らし方ね。」
 スプラッシュは海へ飛び込む。
「あ、おい!?」
「お仲間、いらっしゃったわよ。私の応援はまだみたいだから分が悪いわ。貴方このまま大人しく帰りなさい。このまま悪さをするんだったら次にあったとき容赦しないわ。海の底へ沈めてあげる」
「ハッ!海賊がテメェのいうこと聞くと思ってんのか!?」
「思ってないわよカイゾクさん、でも私からの忠告は嘘じゃないのよ。気をつけなさい」
 海の中へ潜っていくスプラッシュ。
「……クソ女め。」
 舌打ちしながらパイレーツは海から視線を逸らす。
「俺は海賊なんだから王子はねぇだろ。」

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