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「やめろ」
 ジェミニの低い声。
 一歩踏み出すとパキリと音がたつ。
 先ほど割った鏡の破片を踏みしめたせいだ。
 スネークは流れるような動きで拳を横に立てられている鏡へ―――

  バキッ

 鏡を割る。
 カシャカシャと破片が床へと落ちる音。
「…やめろ」
 ジェミニは目の前の鏡に手を当てて、頭を押し当てて唸る。
「鏡、嫌いでねぇ…。」
 自分の姿が映るから、ではない。
 自分の姿は気に入っている。
 蛇の造形は大変気に入っている。
 しかしジェミニのこの部屋の鏡は嫌いだ。
 これはジェミニのための鏡だからだ。
 そして鏡を割るのは好きだ。
 ジェミニの空間を侵略しているようで大変心地よい。
「ジェミニ…」
 スネークはジェミニの肩を掴んで鏡から引き離す。
「俺に支配される気分はいかが?」

 ガチャン

 鏡の割れる音。
 スネークが割ったのではない、ジェミニがさっきまで張り付いていた鏡に蹴りを入れて割ったのだ。

「大変不愉快だ」

 さっきまでの怯えたような表情はそこにはなく
 ただただ憎悪の篭った目でスネークを見上げたまま

 ジェミニは答え

 スネークは目を細めて口元を緩ませる


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