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「…なんで俺はここにいるんだろう」
 バーナーは空を仰ぎながら呟く。
 狭い空。
 区切られた空。
 空といってもガラス越し、機械で調節されている温室のような室内の庭園。
 何故かここに居る。
 ジャングルを巡っていたから植物が恋しいのだろうか。

 否。

 バーナーは綺麗に咲いているバラを掴む。

 くしゃりとバラが歪みながらも構わずバーナーは引きちぎってそれを燃やした。

「なんでここに…」

 バーナーはそのまま項垂れ、地に寝転んだ。
 燃やしたい衝動と、それを制する理性。
 それがせめぎ合っている。
 もう燃やさなくてもいいのに。

 命令で燃やしていたせい?
 燃やさなくてはいけない体になってしまった?

 否。

 本質的な、燃やしたいという衝動を持っていたのではないか?

 わからない、わからない…。



   *****



 それからバーナーはウッドとめぐり合い(再会ともいうかもしれない)、色んなロボットたちと交流をしていった。
 キングナンバーズしか知らなかったのでそれはとても新鮮だった。
「木々を燃やしていた君がこうやって木を学ぶようになるのは、少し不思議な感じがするね」
 ウッドは目を細めて呟く。
 穏やかな彼だが、初対面時のあの殺気は忘れられない。
 あれが戦闘用ロボットというものなのかと思った。
 しかしそれは今、微塵も感じられない。
 優しさで闘争本能を隠しているのだろう。
「学ぶっていうか…キングが知るのもいいことだって」
「そうだね…『愛着』を持つと優しくなれるから、いいことかもね」
「ウッド…」
「なぁに?」
「……なんでもねぇ」
 ウッドを見ていると抱きしめたくなる。
 『愛着』?
 それだったらどんなにいいことだろう!
 強く強く抱きしめて、燃え上がりたいほどの衝動に駆られる。
 自分は彼を燃やしたいのだ。
 一体今、自分の表情(かお)はどんな表情だろうか。
 あぁぁ、思い浮かぶのはキングのあの顔だ。
 ダイナモに語りかけるときの顔だ、パイレーツに言い返すときの顔だ、自分が森を燃やした報告をしたときの顔だ。
 助けてキング、どうしたらいい?こういうときはどうすればいい?
 教えてキング、どこにいるのキング、俺はどんどん壊れていく―――

「元気ないね」
「いや、考え事してただけだ」
「そう?君って考えすぎるよね」
「は?」
 単純だとかバカだとか言われるのは聞きなれているが、考えすぎるだなんて初耳だった。
「いっつも難しい顔してる。」
「そうか?」
「うん、悩み事なら聞いてあげるよ」
「お前を燃やしたい」
「え?」
 バーナーは率直に述べた。
 ウッドは目を丸くしている。
「燃やしたくて、仕方ねぇ…俺はもしかすると元から燃やすのが好きだったんだ…
 キングの命令と自分の命のことで頭がいっぱいになっていただけで―――」
「……」
 ウッドはバーナーの手を握る。
「僕もそういう衝動はあるよ。でも抑えてる。
 やってしまうと元に戻れなくなるから。壊れたものは治らない。
 身体は直せても心は治らないから…
 僕は今君のこの手を握り潰したいと思っている、君は?」
「燃やしたいと思ってる」
「一緒に耐えよう?お互いに、ね?そう考えてみて。少し楽にならない?」
「わ、わかんねぇ…」
「そう…あ、そうだバーナー。ハーブティごちそうしてあげる。
 飲んだことないってこないだ言ってたよね?」
「あぁ、飲ませてくれるのか?」
「うん、ホーネットからハーブを分けてもらってね―――」
 ウッドはバーナーに雑談をしはじめながら手を引く。
 あぁ深く考えないようにと彼は話を切り替えてくれたのだ。
 優しい。
 彼は優しい。
 バーナーは空を見上げる。
 ガラス張りじゃない空。
 木の葉で少し隠れている青い空。
 しかしそれでも広く感じた。 


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