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海賊(パイレーツマン)が言うとおり、スプラッシュの歌声は少し怖いと思う。
綺麗な歌声だ。
そう思う。
でも少し恐い。
「あらウェーブさん、御機嫌よう。バブルさんはお元気?」
スプラッシュはウェーブの存在に気づいて声をかける。
「う、うぅ…」
ウェーブは海の中でしどろもどろしながら後退していく。
「逃げなくても良くてよ。私は貴方に何もしないわ」
「ば、バブルさんは…元気、じゃないか、な…知らない…」
「何も話が伝わっていないということは死んでいないということでしょう?
ならいいわ。死なれたら悲しいものね」
「バブルさんは大切な…人?」
「…いえ。私の知らないところで誰かが消えるのが許せないだけよ。
私の唯一の我侭。貴方はいない?そういう人。友達でもいいわ」
「……別に」
「そう。こっちに上がっていらっしゃいな」
スプラッシュはポンポンと岩肌を叩く。
ウェーブはスイーっと寄って来るが岩に上がらずそのまま横にくっ付いただけであった。
「一曲いかが?」
「いい」
「そう。」
「…オレに話しかけても、面白くないだろ。こんなんだし。」
銛でガリっと岩肌を削りながら呟く。
「まぁ面倒くさい人だとは思うわ。貴方、私の歌はお好き?」
「…」
首を左右に振る。
「なんだか自信がなくなってくるわ。そんなに私の歌ってダメなのかしら」
「…恐いんだ、オレも海賊も…アンタの歌声」
「ふぅん?」
「海賊のキモチなんか知らないけど、オレはアンタの歌を聴いてると引きずり込まれそうだ、海の中に。」
「そんな恐ろしいモノじゃないのに、変な人。あぁ、でも…そうね、そうなのかもね」
スプラッシュは一人で納得して微笑む。
「貴方たちいつもこっそり聞いてるものね、そのとき私は何も考えずに歌っているから―――
私の心の中が伝わっているのかもしれないわ」
「アンタに暗い部分があるのか?」
「色々思い悩んでいたりするのよ、でも今が大切。今を大切にするわ。
それが私がここに存在するための義務よ」
「義務?」
「そうよ。でも息抜きはしたいわよね。だから歌うの。
私の歌声を聴いて不快感を抱くのだったら先に謝っておくわ」
「別に、いい。勝手にどうぞ。好きに歌えば」
ウェーブはスっと離れて海へ沈んでいく。
「あら、もう少しお喋りしましょうよ。アナタも人嫌いを克服したいんでしょう?
だからココにくるんでしょう?ウェーブ」
「もう、限界…無理」
「まぁだらしのない男。またいらっしゃい。待っているわ」
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