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 ロボットにしては珍しい、ひょろりとした体型はしかし地形探査用なのだと言われるとしっくりした。

 そして頭もとても良い。

 かつて戦ったあのフラッシュマンの電子頭脳を元にされたためらしい。

 だからなのか、それとも別の理由からなのか。

 スネークが何を考え、何を思っているのかロックは把握しにくかった。

 ロック自身は物事を遠まわしに話したりしないし、相手の言葉をストレートに受け止めるので

 まったく逆であるスネークを理解するのに苦労したのだ。

 しかし最近わかったことだが、尻尾の動きが感情を表しているようなのだ。

「スネークマン、お腹空いてる?何か軽いもの作ってあげようか?」

 なんて声をかけてみるとスネークは呆然とした表情を浮かべるのでロックは思わず笑ってしまった。

「なぁーんで俺のことわかるんです?」

「尻尾の動きがね、ふふ。可愛いから」

「か、かわいい!?」

「あ、ごめん。怒った?」

「いえ、別に。可愛いとか初めて言われたんで」

 頬を紅くしながら答えるスネーク。

「じゃあ、作ってくるね。リクエストある?」

「とくにねぇです」

「うん、わかった!待っててね!」






 スネークが探査している星は多くが森林に覆われている。

 地球と少し似てるかな?とロックは思いながらスネークを探す。

 スネークは木に背を預けて木陰の中でリンゴを齧っていた。

「あ、スネークマン。また勝手に食料取っていったね?折角食事持ってきたのに」

「あ、それも食べる計算にはいってるんでお構いなく」

 スネークはへらへら笑いながらロックを招く。

「俺はロックの弁当を食べるんで、この残ったリンゴをロックが食べてください」

「えぇー、全部食べなよ」

「俺小食なんで全部食べたら弁当が食べれません」

「そ、そうかなぁ…?」

 明らかに食べかけのリンゴのほうが弁当より量は少ないのだが―――

 ロックは強く言えず、リンゴと弁当を交換した。

 もぐもぐと食べかけのリンゴを頬張る。

「関節キス…」

「え?なぁに?」

「いえ、思わず口がすべっちまっただけです」

 視線をそらすスネーク。

「ところでロック、俺のことスネークって呼んでくれませんかねぇ」

「え、どうして?」

「そのほうがもっと親しくなれると思うんですよぉ。呼んで呼んで」

「スネーク…」

「もっと呼んで」

「スネーク!これでいいの?スネークって変ってるねぇ」

 微笑むロック。

「満足しました。」

 スネークはそう呟いて弁当を食べ始める。

 ちらりちらりとロックを見つつ。



 懐いてい来るこの少年に自分は酷く、惹かれる。



 何故かわからないが、自分を真っ直ぐに見上げてくるその瞳が凄く綺麗で落ち着く。

「ロックは好きな人いるんですかぁ?」

「え!?な、なんで!?」

「なんとなく」

「い、いないよ…」

 顔を赤くしつつ答えるロック。

「じゃあ俺を好きになってくださいよ、恋人になっちゃってくれません?」

「こ、こいっ…!!?」

 スネークはあわあわし始めるロックの肩を掴んで顔を近づける。

「いいじゃねーですか、俺もロックが大好きなの」

「あ、う…でも、ダメだよ……僕、そういうのわからない…。

 スネークのこと、好きだけど…嫌いじゃないけど……」

「じゃあ惚れさせてあげますから」

「えっ……」

 ロックはスネークに押し倒された。



    ****



 ロックがお弁当を持ってくるのは日課になっていた。

 お弁当を食べて、適当に青空の下、ごろごろする。

 こうやってロックの時間を自分のために使わせていることに対してスネークは満足感を感じていた。

「…スネーク」

 遠慮しがちに名を呼びながら、ちょっと頬を赤く染めて…ロックはスネークの腕に手を添える。

 スネークは嬉しそうな笑みを浮かべてロックを抱き寄せるとキスをし始める。

「んく、ぅぅ……」

 スネークの長い舌が喉にまで届いて、苦しげにロックはスネークの腕を握り締める。

 押し倒して以来、ロックが求めてくればスネークは答えていた。

 拒絶されるのではないか、という恐れもあったのだがロックはスネークを拒絶せず受け入れたようだった。

「俺の舌、好き?」

 キスをやめて、スネークはロックの服を脱がしつつ問いかける。

「んっ…スキ…」

「好きだよロック。可愛い…俺はアンタを愛してるよ」

「あ、う…スネークっ…僕、も好き…」

 スネークの愛撫に耐えながら答えるロック。

「あぁ、アンタ可愛すぎるよ。もう我慢できねぇ」

「や、待って!スネーク待ってぇ!!!」

 スネークのナニがロックの中へ挿入されていく。

「ロック、全部入るようになったじゃねぇですか…ふふ、かぁわいい…」

「キツ、いよ…スネーク…」

「アンタが可愛すぎるんです。動きますから」

「や、ぁぁっ……!!」

 ぎゅうぎゅうとスネークのナニを締め上げてくる。

(あぁ、もう…可愛いな…)

 腰を動かしながらスネークは涎を垂れ流しながら喘ぐロックを見下ろす。

「すねーく、怖い…きもち、よすぎて…」

 ロックがスネークに手を伸ばしてキスを強請ってきた。

「なんも怖くねぇですよ…」

 優しく言いながら、ロックの頭を撫でる。

「ひぅっ……」

 ロックはスネークにキスをされながら先に果ててしまった。







 スネークのことが好きなのかと聞かれれば、好きなのかもしれないと答えるだろう。

 ただそれが深い愛情を意味するのかどうか、それを問われるとロックは答えに詰まる。

 でもスネークからの愛を受けるのは嫌いじゃなかった、受け止めてあげたいと強く思う。

 だからきっと、自分もスネークが好きなのだ。

 そう理解した。



 しかし唐突に、スネークが自分から距離を置き始めた。



 不安に駆られる、嫌われてしまったのではないかと。



 久しぶりに名を呼んできたスネークに、ロックは拭いきれない不安を抱えたままスネークを見上げた。

「ロックは今も俺が好きなのか?」

「うん…」

「そっか、あぁ、ごめんなぁ?俺はアンタをからかっただけなんだよ」

「え?」

「からかっただけ。解る?」

 スネークはロックのおでこを指で突付く。

「嘘」

「嘘じゃない。本当なの。まぁー蛇に噛まれたと思って忘れろや」

「嘘。スネーク、どうして嘘つくの?」

「…嘘じゃないから、頼むから、もう俺と関わらないでくれ!」

「スネーク…?」





 そのときは理解できなかったけれど

 今なら理解できる気がする。



(こういうことになるから、僕から離れたの?)



 スネークがいるであろう、一番奥の部屋。

 その部屋の前―――硬く閉じられているシャッターの前で、ロックマンは思う。



(どうして好きって言ったの?そのときはこうなるって知らなかった…?

 知ってから僕から離れたの?だったら、どうして、離れる前に打ち明けてくれなかったの……?)



 スネークも、こんな結果を望んでいなかっただろうに。

 しかしそれを問うても、彼はきっと「望んでいた」と答えるだろう。

 スネークは、そういう男なんだとロックは理解できていた。



 一歩踏み出すとシャッターが開く。



 部屋の奥に、スネークがいる。



 紅い目でギロリとロックマンを睨みながら、佇んでいる。

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