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ゆらり、ゆらりと揺れる。
今日の海は穏やかで、船体に波がぶつかる音も小さい。
パイレーツは船長室に篭って酒を仰いでいた。
「…キングも飲むか?」
酒瓶を持つ腕を伸ばす。
その先には金貨や宝石が散乱して、それらに埋まるようにキングが倒れこんでいる。
「うーん、どうしようかねぇ…そんな気分ではないけれど」
天井を見つめながら気の無い声を発する。
気まぐれなものでよくこうやってやって来てはパイレーツのお宝に埋もれてしまう。
そして言うのだ、「今から君の所有物だよ」と。
「今の私は君の所有物なわけだから…ススメられて断る理由もないなぁ…」
キングは身を起す。
じゃらじゃらと音が響く。
「ふふ、これグランドにあげるのかい?」
宝石を摘んで光にかざす。
「よく解るな」
パイレーツはキングに歩み寄る。
「だってグランドが好みそうな色だからね…」
「あぁ、なるほどな。そのままで悪いな王様。生憎この部屋にゃコップはねぇんだよ」
酒瓶を差し出すとキングはクスリと笑って口を少し開く。
瓶の口を唇に押し当てるようにして酒を注ぎ始める。
「美味いだろ?かっぱらったモンの中に上等なやつがあってな。
アンタの口にも合うだろうよ」
「ん、んぅ……」
飲み干し、キングは微笑を絶やさぬままパイレーツを見上げる。
「あぁ、私の口にも合う酒だ。君は他人の好みを解っているから好きだよ」
「そーかい」
パイレーツはキングの顔を掴むとそのままキスをする。
舌を触れさせ合って酒の味を味わう。
「はっ…あ……」
息の上がるキングのボディスーツを鍵爪で裂き、パイレーツはキングの脚を押し広げた。
「君は、いつも…乱暴だ」
「奪うのが好きだからな」
「あっ…う……」
慣らしもせずに捻じ込まれ、キングは咄嗟にパイレーツに抱きつく。
「好きだキング…」
「そう、だね…君は、宝が好きだものね…」
「ッ……」
「あぁっ!!!」
押さえつけられながら激しく犯され始める。
「本当にアンタを俺のモノにしてやってもいいんだぜ?」
「………」
「挑発しねぇのか?できねぇよな、本当にしちまうからなぁ、俺は」
「意地悪だねパイレーツは」
「どっちがだ」
「~~~ッ…!!!!」
キングは唇を噛み締め、パイレーツの肩を握り締める。
「何度もヤってると流石にアンタもそういう身体になるんだなぁ?」
「ま、待ちなさい…声が、出ッ……」
「出せよ。まぁ我慢してるアンタもそそるけど?」
***
「!?」
バーナーは思わず硬直する。
キングを迎えに来たらパイレーツとキングが絡み合っているのだから当然の反応だろう。
「おいワンコが来たぞ」
「ッあ、バーナー…くん、バーナぁー……」
蕩けた表情を笑みにして、キングがバーナーを見る。
「ちょっと待っててね、もうすぐ終るから……」
「どうだか」
「はは、終らせておくれよ私も限界があるよ…?」
キスをし合う。
バーナーはわなわなと震えていた。
目が見開いている。
炎は出していないが、出すのは時間の問題だろう。
アレだけ声をあげるのを嫌がっていたのにキングは声を上げて身を捩らせる。
「パイレーツッ…」
「あぁ、出してやるよ」
「うあ、あっあぁぁ……!!」
キングもイったようで腹を汚し、ぐったりと床に倒れる。
「ほらよワンコ。持って行けよ」
「お前ぇぇぇぇぇ…!!!!無理矢理キングを襲ったんだろ!?」
バーナーが噛み付いてくる。
「はぁ?俺の所有物に何をどうこうしようが俺の勝手だろ?
キングは言ったんだよ「今は俺の所有物」だってな。何してもいいんだよ、許可でてんだから。
こーんなことしてもキングは何もいわねーの」
酒瓶の蓋を外して中身をキングの上からぶちまける。
「~~~~~ッ!!!!」
バーナーはパイレーツを突き飛ばす。
「あー手間のかかるワンコだなぁ!ちゃんと躾けとけよキング!」
「…そうだね、ふふ。そこが可愛いんだけど」
キングは身を起こしながら呟く。
やはり微笑んでいる。
「バーナー、もう止めなさい。王の命令は絶対だ」
「でも、でも…」
「バーナーくん」
「……うぅ」
「さてこんな姿じゃ外にもでられない。洗浄室を借りるよパイレーツ」
「さっさと仕度して帰りな。ここはペットの持ち込みはお断りなんだよ」
「なるほど、急ごう」
キングはクスクス笑いながら洗浄室へ姿を消す。
「……」
バーナーがパイレーツを睨んでいる。
嫉妬深い男だ。
あとで可愛がってもらえるだろうに。
「お前、俺にムカつくのは勝手だが俺はお前にもムカついてんだぜ」
「え?」
「ワンコにゃわからんだろーがな」
「バカにすんなよ!俺からキングを盗ろうとしてるくせに!!!」
「盗れるわけねーだろ……」
「?」
あぁ奪えもしないということに目の前の男は気づいてもくれない。
何度も何度も試みて、奪えない。
王の命令に従ってしまう、自分も目の前の男と同じ犬だ。
しかしバーナーの方が羨ましい。
歪んだ愛され方をしているが、愛は愛だ、羨ましい悔しい。
あぁ、あぁ…王は平等に愛していると言うけれど、目に見えている平等が嫌なんだ、皆そう思っている。
自分だけを愛して欲しいと思ってる。
奪いたい奪いたい
この男を壊してもきっと王の愛は変わらないだろう
独占欲ばかり強くなる。
きっとバーナーもそうなんだろう。
嫉妬心ばかり強くなる。
「お待たせ。帰ろうかバーナーくん」
キングとバーナーの背中を見送る。
残った感情は表現しきれない、色々なものが混ざり合っていて
そして独占欲を落ち着かせたくて
代用として他人の大切なものを奪って自分を満たしたくなる。
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