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 あの戦いが終ってから何ヶ月たっただろうか。

 思い返せばキッチリ解るが別に数える必要性が無い。


「久しいなパイレーツ」


 凛としつつも穏やかな声。

 ひょいっと手を上げるだけの仕草だが、まだまだ威厳が残っている。

 やはり元々そういうモノを持っているからなのだろう。

 キングは悠々と歩みながらやってきた。

「何の用だキング」

 不機嫌そうにパイレーツは停泊中の船を眺めながら問う。

「元気にしているかと思って立ち寄ってみただけだ。…元気そうで何より」

「そうでもねぇよ。潜水野郎はしつこいわ、最近は人命救助の女もウゼェーの何の。」

 船の損傷に目をやって舌打ちする。

「だったら人間のためになる行動はしないのか?」

「命令なら…といいたいがもう俺はアンタの部下じゃねぇーんでな。

 海賊として好き勝手させてもらうぜ」

「そうか、残念だな」

 遠い目をするキング。



 ―――あぁ、畜生そんな顔を見たかったわけじゃない。



「……腑抜けになっちまったなぁキングさんよォ」

「そんなことはないさ」

「どうだか。俺の知ってるキングはもっと偉そうでふてぶてしくて無理矢理言うことを聞かせる男だった」

「あぁなんて酷い男だろう。そんなヤツがいるだなんて」

「お前だよお前」

 パイレーツのツッコミにキングはクスクス笑い始める。

「キング、『頼み』だったら聞いてやるぜ?」

「ほう…」

「旧友の『頼み』だ。それならいい」

「…うん、じゃあお願いしようかな。頼むよ」

「あぁ…」


「キングー!ってウオ…パイレーツじゃんココもしかしてパイレーツの停泊場か?はじめてきたぜ」


 バーナーが周りを見回しながら歩み寄ってきた。

「なんだワンコも一緒だったのかよ」

「今は違う。従者だ」

「へぇ」

 目を細めるパイレーツにキングは穏やかな笑顔を浮べる。

「パイレーツ…私は裏切られるのが怖かったようだ。だから無意識に逃げていた。避けていた。

 しかしもう、今は違うんだ。信頼関係を築けばそんな不安なんてないんだと気づいた」

「気づくの遅ェよキング」

 パイレーツは呆れた顔をする。

「俺ら最初からアンタのこと信頼してたし?」

「え………」

 ぽかんとするキング。



 本当にこの王様は


 表情をころころ変えて。


 内心を隠そうと必死になっているのがバレバレで


 俺らを頼りたいのにそれが出来なくて―――


 だったら『命令』として聞いてあげるしかないだろう?



「ま、バーナーはどう思ってたかしらねぇけど?」

「何の話かさっぱりわからねぇ…」

「だからお前はワンコなんだよ」

「俺はワンコじゃねぇぇぇ!!!」

「バーナーくんお座りお座り」

「ホラ見ろ!パイレーツのせいでキングがまた悪乗りする!!!」


END

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