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「コウモリ見つけた」
「セブンス区って人の気配がねーから場所間違ったかと思ったぜー」
ジェミニとスネークがやってくる。
珍しい、この二人が揃ってここに来るとは珍しい。
いや、むしろ先輩方がここにくること自体稀なのではないだろうか。
「運が良かったですね、今からお城に戻ろうかと思ってたんですよ」
「もしかして皆、前衛基地にいるのか?」
「そういう人もいますし、私のように他所の区へ行ったりしてますね」
「へー、まぁいいや。暇だろ?ちょっと俺らと付き合えよ」
「構いませんけど…」
シェードはそこまで言って首をかしげる。
「一体何の御用なのか見当もつきませんねぇ」
「ハハハハ、シャドーのことだよ。お前シャドーのこと好きだろ?」
ジェミニがいつものどや顔で言う。
「お前とシャドーをくっつけてあげようという心優しいお兄ちゃんズの計らいなのだよ!」
なんかテンション上がっているスネーク。
何かしら彼らの悪巧みに自分が巻き込まれているのは解った。
恐らくシャドーを苛め隊、みたいなもんであろう。
「心優しいですね。で、一体私に何をさせたいんですか?」
「シャドーを襲え」
「あぁ、襲え…がんばれ紳士。お前ならできる」
「とんでもないこといってますよ。貴方たち痛くも痒くもないじゃないですか」
「だってアイツ一人身だからスネークとばっかつるむんだぜ?スネークは俺のモノなのにさー」
不満そうなジェミニ。
「尻軽でゴメンネー」
全然反省してないスネーク。
その瞬間、スネークとシェードは殺気を感じて咄嗟にその場から跳んだ。
ザシュッっと影から飛び出してきたシャドーブレードが天井に突き刺さる。
「俺の顔に傷つけてたらぶっ壊してたぜシャドー」
ジェミニが自分の影を睨みながら呟く。
シェードとスネークは危険を察して逃げたが、ジェミニは逃げずに顔を仰け反らせてブレードをかわしたのだ。
「勝手なことを…」
ずるり、と影からシャドーが出てくる。
「そんなに拙者とシェードをくっつけさせたいかぁー!!!」
「おう」
「面白そうだし」
「残酷な兄どもめ!スネーク殿といちゃいちゃしててもいいじゃない!」
「腹立つからダメだ」
「ジェミニ殿のドS!てかシェードも嫌でござろう!なんか当て馬的な扱いで!」
「あー、私気にしないんでー」
「最近の子はぁぁぁぁ!自分の意志がねぇなぁぁぁぁ!!!!嫌がれぇぇぇぇ!!!」
エキサイティングしているシャドーだが、シェードは手馴れたものでからかって遊んでいる。
「もうお前らヤっちまえって。そうすりゃ仲良くなるって」
「お前らキスもしてないんだろー?もうヤっちまえよー」
「絶対イヤだ!!誰がシェードなんかと!なぁ、お前もイヤだろうが!」
「……考えたことなかった」
シャドーから視線をそらして呟くシェード。
少し頬が赤い。
「ちょ、おまっ…!なんだその反応!なんだおいなんで赤くなってんじゃああああああ」
シャドーはシェードの襟を掴んでぶんぶん揺さぶる。
「いやその、ちょっ…シェイクするの止めてくれません!?あの、私そういう経験まったくなかったもので!
ぶっちゃけそこまで全然考えてなかったというか!!」
「ピュア紳士」
「ぶふっ」
ジェミニの呟きに噴出すスネーク。
「その外見で何がピュアじゃああああ!!!」
「わぁ、凄く理不尽な怒りをぶつけられてるなー」
「…ということは、貴様は童貞か」
「人間で例えればそうなりますか」
「萎える」
キリっとした表情でいうシャドー。
「うわぁ、理不尽だ」
「安心しろよシェード」
スネークが微笑んでシェードの肩に手を添える。
「俺が色々教えてやってもいい、お兄ちゃんが弟のために一肌脱いじゃうぞ☆ミ」
「こんなこといってますけどジェミニさん」
「あーいいよ、見てるから」
「あぁそういうプレイですか」
「手取り足取り、シャドーの弱いところを教えてあげる!」
「させるかぁ!!!」
シャドーはシェードの肩に乗るスネークの手を払いのけると、そのままシェードを影に引きずり込んで逃亡する。
「チッ逃げたか」
「俺思ったんだけどよ」
「何だよ、しょうもないことだろどうせ」
ジェミニを見るスネーク。
「セブンスナンバーって皆奥手じゃないか?知っている限りだが」
「……」
まったくフラグの立っていないアイスに構ってもらって喜びのあまり「天使!!」と興奮しているフリーズ。
シェードとシャドー。
そして「一緒に走れていればそれで十分だ」とかカッコよく決めてクイックとよくつるんでいるターボ。
確かに受身が多い。
「奥手ナンバーズ。もしくはD(童貞で)W(悪いか)N(ナンバーズ)」
「ぶはっ!やめ、ははははは!!!!」
スネークの命名に、ジェミニはツボに入ったのか腹を抱えて笑っていた。
◆◆◆◆
「ふー、咄嗟に自室へ飛んでしまったでござる…」
「便利ですよねその能力。あ、お邪魔しまーす」
「よし出て行け」
「えー、折角お招きしていただいたのにー」
「招いていないから出て行け」
あの二人がいなくなったためか、若干落ち着いた様子のシャドーはシェードに言う。
「…じゃあ、失礼しますね」
シェードは少し残念そうな顔をしつつもそういうとドアに向かって歩く―――
ぐいっと羽をひっぱられた。
「やっぱりいろ。今出て行っても戻ってきた彼奴らに捕まればお前の性癖が色々開発されてしまう」
「どんだけ極悪なんですかあの人たち」
「他人に対して遠慮も手加減もせぬ。まぁそこがいいのだが!」
「怖ーい。シャドー先輩に守って貰いましょうか」
ニコニコ笑顔でシェードは言う。
「う、うむ…不本意だが。あぁ、茶でもいれるか…拙者が飲みたいだけであってお前はついでだからな、勘違いするなよ!」
「えぇ、しませんよ」
シャドーは二人分淹れ、テーブルに置いて座った。
その間、一言も言葉がでてこなかった。
「……」
「……」
びっくりするぐらい会話が出てこない。
(え、えぇぇぇー…何だかんだでシェードから会話なかったっけー!?ぺらぺら喋ってるのにいつも!)
(シャドーさんが大人しすぎて喋りづらい…いつも何かと叫んでるのに何で大人しいんだこの人…)
「あの…」
「なんだ!?」
シャドーブレードを思わず構えてしまうシャドー。
「よくよく考えれば、あの二人に出会っても石化光線使えば簡単に逃げれますし、帰ろうかと」
「え、帰るのか?」
「えぇ、あれ?寂しいですか?」
普段の調子でいうシェード。
「いや、寂しくはないが…うぅん、なんだこの引っかかりは…」
「どうしたんですかシャドーさん」
「お前は、スネーク殿に抱かれてもいいのか、いや抱く側も含めて」
「回避しますって」
「相手はスネーク殿だぞ!狙った獲物は逃がさぬしつこさだぞ!蛇だけに!
いや!スネーク殿にシェードの手垢が付くくらいなら拙者が…!!!!」
「落ち着いてくださいシャドーさん。思考の流れが途中で吹っ飛んでいますよ。
あのね、別に私は貴方とそういうことをしたいわけでもないんです」
「紳士ぶりやがってこのやろぉー!!」
「うわぁ!?飛んできた!!?」
凄い勢いでシャドーが跳んでくるので避けきれず押し倒されるシェード。
「お前がそんなんだからスネーク殿もジェミニ殿も「あ、新しい玩具見つけたぞ☆」みたいな目でお前を見るんだ!」
がしぃっとシェードの顔を手で掴んで叫ぶシャドー。
「そんな目で見られてたんですか私」
「あぁそうだ!愚兄どもの玩具になりたくないのならばもっとこう、自己を主張して―――
シェード、なぜまた顔を赤くする」
「いや、顔が近いものですから」
「お前、俺のこと好きなのか?」
シャドーは真顔になってシェードを見下ろす。
射るようなその視線は、シャドー本来の眼光なのだろう。
多分、嘘を言えば一生避けられる、そんな眼。
「…あくまで、面白い人だなってぐらいで。別に貴方と恋人になりたいだとか、そういうことは思っていません」
「じゃあ何で赤くなる。俺のことが好きだからだろ?」
「いやその、近くで見たら貴方の顔って端整な顔立ちをしているんだなって思って」
「拙者の顔はもとからこうでござるが!?」
「そうですかぁ?いつも酷い顔ですけど―――」
シャドーの唇が重なってきて、声が途絶えた。
「っ…ふふ、今のお前の顔の方が絶対酷い。ん?涙目のシェードは初めてみるでござるなー」
「あ、あなたねぇ…いきなり何をするんですか。あと涙目になってないですから」
「なってるなってる」
「なってません!」
「そうか?」
シャドーは目を細め、少し笑みを含みながら再びキスをする。
思わずそのキスを受け入れてしまうシェード。
抵抗はできる、シャドーは自分より軽いからすぐ離せる。
しかし出来なかった、何故か心地よさを感じてしまったからだ。
「この先、シたいか?」
「酷いこと聞きますね…」
「口でしてやってもいいが…ハッ!」
シャドーは視線をシェードから別の方向へ向ける。
物陰に赤い光―――サーチスネークが、いた。
「ぎにゃあああああ!!?」
シャドーは奇声を上げながら影の中へ沈んでいく。
「ちょっとシャドーさん!?何いきなり照れてるんですか!?」
シェードの分だけになった影、その影に向かってシェードが叫ぶ。
『アホかぁ!拙者はシェードのこと好きでもなんでもないんじゃああああ!!!今のは事故!!』
「事故で済まないと思いますけどっ!口でしてやってもいいとか言っちゃってますし!」
『拙者そんなこと言ってないもん!』
『おおっと邪魔してしまったな。』
サーチスネークからスネークの声が聞こえる。
『サーチスネークちゃん3号は引き上げさせるから、ゆっくり楽しめよ!』
すすす…っとサーチスネークが撤退していく。
「うぅ、スネーク殿に見られたぁー…」
にゅにゅにゅっと姿を現すシャドー。
「拙者はただ純粋に、後輩をからかっただけでござる…」
「はいはい」
「ほんとだぞ!ほんとにほんとだぞ!!」
「もっとからかってくださいね、私もからかいますから」
言ってシェードはシャドーの手を掴むと、その甲にキスを落とす。
「うぐぐ…なんで余裕なのお前」
顔を赤くしながら呻くシャドー。
「余裕そうに見えますか?」
「あ、余裕ないんだ…」
「シャドーさんほど素直に顔にでないんで」
「いや出てるって、さっき赤かったって顔。ほんとお前嫌いだ。」
シェードを抱きしめるシャドー。
「苦しいですよシャドーさん」
「苦しめ」
「はいはい、じゃあ苦しみますね」
答えてシェードはシャドーの気が済むまで抱きつかせた。
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