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 スネークが休息用に設けられた広間に向かうと、ジェミニがホログラムとともに何やら一枚の写真を食い入るように見つめていた。

「何やってるんだ?自分のホログラムじゃ飽き足らず自分の写真でも眺めてるのかよ」

 声をかけるとジェミニはすごく嫌そうな表情を浮かべて来た。


 ――― 一体俺が何をした


 なぜかジェミニに邪険に扱われている。いや、ヘビが嫌いというのは後から知ったが。

 初めて起動し顔合わせしたときが一番ひどかったものである。

 人の顔を見て悲鳴を上げるヤツがあるか。

 今ではすっかり落ち着いてこうやって顔を合わせても嫌そうな顔をするだけになったが、いい気はしない。

「フラッシュマンから一枚だけお前の写真を拝借してきたんだが」

「なんで俺の写真盗撮されてるの? って俺の写真!?お前が俺の写真を穴が開くまで見つめるとかどういうことだよ!

 あれか、俺に恋しちまったのか…」

「するか馬鹿!お前に惚れるぐらいなら俺は『私』と心中するわ!!なぁ『私』!!!」

『まったく同意見だ『俺』!誤解のないように言っておくが私の愛する者は『俺』だけだ』

「わ、『私』…美しい…」

 お互い見詰め合って手を取り合う。

「そのオナニー止めろよ」

 呆れた顔をしてツッコむスネーク。

「お、オナ!?」



「スネーク殿、今思いついたのでござるが自画自賛オナニー、略してジガニーとかどうでござろうか!」



「ぬわぁ!?」

 シャドーが真後ろから声をかけてくるので飛びのくスネーク。

「背後に立つなっつってんだろ!」

「忍者故、致し方なし」

「忍者かんけーねぇ!」

「で、ジガニー中失礼するでござるが何ゆえスネーク殿の写真を一時間以上見つめておられたのだ」

「一時間も見てたのかよ、まぁジガニーで24時間自分見つめてるから趣味みたいなものでいいのか?」

「変な呼称やめろ!!いろいろツッコみたいがおいとくけど、いやほら俺って蛇が嫌いじゃないか」

「まぁそうだな、いまさらだけどな」

 写真をぺらぺら弄ぶジェミニの横に座りながら頷くスネーク。

「なんで俺の横に座るんだよ!!」

『お前土くさいんだよ!!』

 ホログラムが間に入ってジェミニをガードする。

「写真なんか見つめてないで俺をみつめろよジェミニ」

「だから考えるために写真見てただけなんだよ。蛇は本当に嫌いだけどお前は別に嫌なだけで嫌悪感はそんなにないから、

 なんでだろうなーって考えてただけなんだ。で、やっと答えが出たような気がする。この写真をよく見ろ」

 そういってスネークとシャドーに写真を見せるジェミニ。

 なんの変わりもないスネークが写っている。

 探索中だったようで普通に歩いてる姿ではなく地を這いずっているようなポーズだ。

「これヘビっていうかトカゲっぽくないか?手足込みで見ると」

「えぇ!?地を這いずるヘビだぜ?どーみても」

「拙者には女豹のポーズに見えるでござる」

「そんなアピールもしてないわけだが!?お前ら眼がおかしいんじゃないか!?いや頭が沸いてるな絶対!!」

「まぁまぁスネーク殿、トカゲに見られたのがショックなのでござろう?しかし同じ爬虫類。何も問題はないでござる」

「問題あるわ!俺一応ヘビ型ロボットなんだけど!?」

 シャドーに食って掛かるスネーク。

 そんな彼らをジェミニは冷ややかな目で見つめている。

「はぁ…醜い。まぁトカゲもヘビも似たようなものだな。無意味な時間を過ごしてしまった」

『部屋に戻って二人っきりの時間を満喫しよう『俺』よ』

「そうだな『私』…」

 ソファから同時に立ち上がり、そんなことを言いながら歩みだすジェミニ。

 しかしスネークはそれを許さなかった。

「ジェミニぃー。お前イケメンぶってるけどぜんぜんイケメンじゃねーよなー」

「……!!?」

 足を止め振り返るジェミニ。

 ものすごい形相だ、しかしスネークはへらへら笑いながら続ける。

「イケメンならクイックマンやスターマンがいるしなー!

 同じナルシストで考えてもスターマンのほうが健全じゃねーか?

 あいつはなんかオシャレなイケメンって感じがするけどお前ってなんか病的なんだよ。

 何が二人っきりの時間だ、独りだろーが」

「お、お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「お前は病的なフツメンだな!アッハッハッハッハ!!」

「くっ…!落ち着け!あんな安っぽい挑発に乗るな! うおおおおおっ!」

 某主人公のようなセリフを吐きながらジェミニはスネークに飛び掛っていく。

「さっそく挑発に乗ってるでござる。」

「おらっ」

 サーチスネークをばら撒くスネーク。

「ぴぎゃあああああああ!!!!」

 悲鳴を上げながら腰を抜かして尻餅をついてしまうジェミニにサーチスネークがわらわら群がる。

「ジェミニ殿!」

「助けてくれシャドー!!!きもちわるいこれまじキモイぃぃぃ!!」

「ジェミニ殿、聞いてくだされ。触手は日本の伝統だそうでござる!」

「そんな知識聞いてねぇー!!!お前マジ最低だ!!」

「シャドー…俺のヘビは触手でもないんだけど…」

「?」

 笑顔で首を傾げるこの忍者の本心が見抜けない。

 見抜きたくもないのだが。

『…うぅ、汚らわしい蛇にまみれても『俺』は美しいよ……』

「さ、さすが俺だな、こんな陵辱されている姿でも美しいなんて……」

「ちょ、やめろ!目覚めるな目覚めるな!!!」

 蛇を撤退させるスネーク。

 開放されて気が緩まったのか戦意喪失気味のジェミニはそのままぐったりとなって動かない。

 ほっといても勝手にまた復活するだろう。

 病気気味だがポジティブなだけマシかもしれない。

「俺のスネークちゃんたちを卑猥なもの扱いにするなお前ら!!」

「ジガニーの新たなる境地でござるな」

「綺麗にまとめようとすんなよ!?てかその呼称は定着しちゃったのか?別にいいけどよ」



「心配な顔をして見つめる『私』超美しい…」



「腹立ってきた、もう沈めお前」

 ヘビちゃんを放つスネーク。

「ぴぎゃあああああああああああああああ」



おしまい

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