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        病んだ蛇さんも美味しいかなって思って書いたけどそんな病んでない
        
         ウロボロスというものは蛇だか何だかで自分の尻尾を咥えている。
        
         それで「永遠」で「不死」を象徴するらしい。人間とは不思議なことを考える。
        
         人間の寿命は俺たちロボットより短いから余計にそういうことを考えるのだろうか。
        
         壊れても博士が直してくれるから俺にはさっぱり理解しがたい。
        
         自分は蛇をモチーフに作られているが、さてそのウロボロスとやらになれるだろうか。
        
         どっちみちジャンクになることは変わりないから、なれないのかな。
        
         今のこのときがずっと続けばいいのに。
        
         俺は戦闘用ロボットだから壊れて朽ちる。
        
         そう考えると何だかウロボロスとやらにあやかりたくなってきて、人間のこと少し理解できそうな気がした。
        
        
        
        
        
        
         休息所のソファにジェミニが並んで座っている。
        
         何も知らなければ名前どおり双子が座って楽しげにしているように見えるが、ホログラムといちゃついてるだけのなんともアホらしい行為。
        
         俺は後から出来上がったからどうしてこいつが自分しか見えていないのか理由はよく知らないが。
        
         まぁ理由もないのだろうけど。
        
         むなしいと思わないのか、と俺は思うわけだ。
        
        『げぇ、蛇』
        
        「げぇ、蛇」
        
         同時に顔をしかめるジェミニ。
        
        『用事がないならさっさと消えて欲しいものだな『俺』』
        
        「本当、俺の美しい目が穢れてしまうな『私』」
        
        「…はいはい面白い面白い」
        
        「面白いところないですけど!?」
        
         面白いほど俺に食って掛かってくる。
        
         まぁ茶化してるからなんだけど。
        
         こいつ俺に対してだけ冷静さなくなるよな、あぁそれが面白いんだが。
        
         俺は空いているソファに座らず横になった。
        
        「どうした蛇」
        
        『疲れているのか?部屋で寝ろ部屋で』
        
        「ジェミニの顔見ながら寝たいんだよ」
        
        「俺の顔は俺のためにあるんだ。お前にやらんぞ」
        
        「俺このあとしばらくセカンドの面子と合同任務あるからお前の顔を飽きるまで見ておきたいんだよ。はい飽きた」
        
         ぷいっと俺は顔をジェミニから背ける。
        
        「飽きんのはぇぇよっ!!なんでだよ!もっと見ろよ!見られたくないけど見ろよぉぉぉぉ!!!」
        
         こいつの思考回路はどうなってんだ…?面白いからいいけど。
        
        「なんでお前そんな自分が好きなんだよ」
        
        「美しいからだ。」
        
        「面白い面白い」
        
        「お前適当にあしらうな!!」
        
        「バレたか…いいじゃんだってお前の返答って『美しい』ぐらいしかないんだもん」
        
         俺はいいながらジェミニに視線を戻す。
        
         俺から見て、別にジェミニって綺麗なタイプに見えないんだがなぁ。
        
         目がいつもこっち睨んでるし。あ、俺が蛇だからか。
        
        「…じゃあ『綺麗』」
        
        「面白いから好きだぜジェミニのそういうところ」
        
        「お前バカにしてるだろ!この蛇!バカ蛇!!醜い土臭い蛇!!」
        
         なんでこいつこんなに可愛いんだろう(笑)
        
         俺はしばらくジェミニをからかった後、任務の準備のためにその場から退散した。
        
        
        
            ◆◆◆◆
        
        
        
         スネークが任務から帰還してから部屋から出てこなくなってしまった。
        
        「今日もスネーク出てきてないの?大丈夫かぁ?」
        
         タップが目を細めて呟く。
        
         スネークの体調の心配などではなく、何か企んでいるのではないかという心配をしているようである。
        
        「通信には出てくれるのでござるが…」
        
        「なら心配するほどでもないだろうが、あいつエネルギーの補充やってないだろ?
        
         いくら燃費が良くてしばらく持つタイプでもさすがにほっとけないなぁ」
        
         マグネットが呟く。
        
        「確かにそうでござるな…E缶でも飲んでいれば良いのでござるが…」
        
        「あんなの死んでようが冬眠してようがどーでもいいだろ。
        
         心配ならシャドー、お前いけよ」
        
        「ふむ?」
        
         ジェミニは鏡から目を離し、シャドーに向ける。
        
        「ドアロックされててもお前の影移動で侵入できるだろう?」
        
        「そうでござるな。スネーク殿には悪いでござるが、一度覗いてみよう。ジェミニ殿も心配していることでござるし」
        
        「し、心配してねぇって!まじで!お前らが心配してるから俺が助言してやっただけだよ!!」
        
        「無自覚ツンデレでござるな!」
        
        「ちげぇよ!!!」
        
        
        
        
        
        「…これは」
        
        「シャドーか?」
        
         揚々としたスネークの声。
        
         スネークの部屋は薄暗く、モニターの明かりでかろうじて周りが把握できる。
        
         スネークはモニターの前に座り、無数のコードを身体に接続し、目元に器具をつけている。
        
         足元にサーチスネークがごろごろしていて、サーチスネークからもコードが延びてスネークに繋がっていた。
        
        「ちょっと手が離せないんだよ。わりぃな今度遊ぼうぜ」
        
        「いや、これは一体なんでござるか!?」
        
        「……」
        
         口元の笑みを絶やさないまま、黙り込むスネーク。
        
        「0と1の世界でちょっと戦ってる?みたいな」
        
        「拙者、抽象的な表現を言われてもわからないでござる。」
        
        「あーもう、ウィルスだよウィルス感染!」
        
        「なっ!?博士には言ったのでござるか!?」
        
        「言ってねぇ、言ってたらこんなことしてねぇよ…絶対言うな」
        
        「なぜ!?」
        
        「ちょっとミスって防衛プログラムが吐いて来たウィルスに感染だぜ?恥ずかしいわ。言えるかよ。
        
         俺はお前らと違って色々罠張ってないと満足に戦闘すらできないんだ、先輩みたいに決め手とか持ってないからな。
        
         こういうことしか能が無いのにそれでしくじるとか、博士に絶望されたら俺ショックだし。
        
         …でも削除しようとしても上手くいかないからスネークちゃんたちの電子頭脳も借りてこうやって削除と復元繰り返してるんだ。
        
         あぁ、なんか、これ…死と再生?うろぼろすっぽくね?俺今「永遠」を感じてるのかな!シャドー!あはははっ!!」
        
        「今のスネーク殿は絶対ひどい状態でござるよ。判断力と言動がおかしいでござる。」
        
        「ウィルスに感染してるから多少おかしいだろうよ、まぁ大丈夫だってそのうち…永遠かなぁ、俺永遠にこれを
        
         感じれるのかなぁ、ずっとずっと俺はこのままで……」
        
        「博士を呼んでくるでござるから、すぐに!」
        
        「…なんでだよ!?」
        
        
        
         がちゃん!ぶちぶちぶち……
        
        
        
         スネークは立ち上がり、器具を捨て、接続されているコードを無理やり引き抜いていく。
        
        「なんで俺のいうこと聞けないんだよ、シャドー…壊れやがれ!壊れろ!壊してやる!」
        
        「ぐあ!?」
        
         足元のサーチスネークが爆発しはじめる。
        
        「スネーク殿!!」
        
        「俺は壊れてないぞ!俺は大丈夫なんだ!!」
        
         バスターからサーチスネークを発射する。
        
        「っ!!」
        
         至近距離だったため、顔を損傷するシャドーだが怯まず踏み込んだ。
        
        「!!?」
        
         スネークのバスターが根元から落ちる、視界がぐらついて床を映す。
        
        「手荒なまねをして申し訳ない…このまま運ぶ」
        
         腕と胴体を切り落とされたスネークはまだ意識があるのか何か喚いている。
        
         しかしわけのわからない、もはやそれは言葉にもなっていない。
        
         シャドーはスネークの上半身を抱き上げ、痛む頭を押さえながら部屋を出た。
        
        「うわ!?何やってんだお前ら」
        
         ジェミニが声を上げる。
        
        「スネーク殿が重傷だ。ウィルスに感染していたでござる。暴れたので手荒な真似をした」
        
        「え、ウィルス?こいつが?本当に?」
        
        「何事も完璧なモノはござらぬ。ジェミニ殿には申し訳ないが、スネーク殿の残りの身体を持ってきてほしいのだが…」
        
        「……ホログラムに取ってきてもらう。入りたくない」
        
         スネークの部屋の中のサーチスネークたちに気づいて、ジェミニは青い顔をしながらも呟いた。
        
        
        
           ◆◆◆◆
        
        
        
        「バカ蛇ー。お前ほんとバカ」
        
         ジェミニはそう言いながらスネークを見下ろす。
        
        「うるさいなぁ、ウィルスのせいで思考が可笑しくなってたんだよ」
        
         うんざり顔で呟くスネーク。
        
         あのあとウィルスを除去してもらい、こっぴどく博士に怒られ、メタルにもっと博士を信用しろと説教され
        
         バツとして絶対安静を食らわされた。
        
         メモリーに過負荷がかかっていたらしい。
        
         今も記憶が所々途切れている。
        
        「もとに戻ってよかったでござる。
        
         あのまま壊れてしまっていたらスネーク殿は0と1の世界の0になっていたでござるな。「永遠」に」
        
        「う…忘れてくれよぉ俺別に深い意味でいったわけじゃないんだよぉ」
        
        「なんだそれ。」
        
        「スネーク殿がー」
        
        「やめろってー!」
        
        「ふふふ、スネーク殿は今がとても好きだということでござろう?」
        
        「うっうっ…シャドーが黒歴史を弄くる」
        
        「さっぱりわかんねーよお前らが」
        
         置いてけぼりのジェミニは目を細めて呟いた。
        
        
  
 
 
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