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寺田神子(てらだ・みこ):アース
寺田太陽(てらだ・たいよう)(本名:天照霊貴(てんしょう・れいき)):サンゴッド
土鎌沙汰(はがま・さた):サターン
銀鏡水輝(しろみ・みずき):マーキュリー
帝威政(みかど・のりまさ):キング
サタの勤め先は幼馴染が経営している骨董屋だ。
交通事故のせいで右目を失ってしまったので前に勤めていた仕事は辞めて、幼馴染に誘われるがままここにきたのである。
とはいえ、その幼馴染は雇われ店長らしく、仕事らしい仕事はしていない。
置いている商品も売るというよりは見せるといった感じで、収入は『お得意様』から得ているらしい。
なんだか胡散臭いのだが幼馴染を置いて逃げるわけにもいかない。
「うぃーっす」
「おう、死んでなかったか」
ソファに座ってだらけている幼馴染のミズキを見てサタは呟く。
「死ぬってなんで」
「この店って胡散臭いからさー、なんかこう、銃にでも撃たれて死んでそーだなーって」
「物騒すぎるだろ!? でもありえそうだな、コワ…」
ミズキは雇い主の顔を思い出しながら唸る。
「なんでこの仕事引き受けたんだよ」
「俺にも色々あるんだよ。ちなみにお前雇ったのは話し相手欲しかっただけだ」
「いいのかそれで…」
「俺の仕事ほとんどねーもん。ここの管理してくれって言われてるだけだしさー」
ミズキは目を細め、サタを見る。
「体の調子どう?」
「それなり」
「後遺症とかは?」
「身体的な後遺症はない」
ミコが見えるだけで…と心の中で呟く。
「…寺田の墓参りいった?」
「え…」
「いってねぇの?」
意外そうな顔をされ、サタもキョトンとしてしまう。
なぜ?どうして?…と考えてハッと気づく
そうだ、ずっとミコが横にいたからそこまで頭が回らなかった。
「あぁ…忙しかったというか…もう少し落ち着いてから行こうって考えてた」
自然と無難な返答をしていた。
行ったほうがいいのだろうか…しかしなぜか行く気が起きない。
「そうなのか。ごめん」
「なんで謝るんだよ」
「いや、怒らせたかと…思って。お前、事故る前に寺田と喧嘩してたんだろ?
それもあるのかと思ってさ」
「…?」
喧嘩?喧嘩とは?
「喧嘩、って?」
「人から聞いただけだからしらねーよ。なんか怒鳴りあってそのまま寺田が飛び出して、お前が―――」
記憶がない。
かすかに思い出せる、ミコの肩を掴んで自分は何を言った?
ミコは何を叫んだ?
頭が痛い。
「サタ、サタ?」
「…おう」
「顔が真っ青だ」
「…思い出せない。頭打ったせいかな、記憶が飛んでる」
「無理に思い出すなよ、嫌な記憶なのかもしれない」
ミズキが心配そうな顔しながらサタの頭を撫でる。
「気軽にいこーぜ?」
「あぁ…」
****
タイヨウに呼び出されてサタは病院に来ていた。
大学病院なので病院自体大きい。
診察などをおこなう棟ではなく病室側の棟にこいと言われたのでいってみれば一階にある喫茶店で
お茶をしているタイヨウがいた。
(本当この人自由だな…)
そして彼の前に見知らぬ男が座っていた。
キレイな金髪をしている。
そして白衣を着ている。もしかしなくても医者だろう。
「迎えがきたね。それじゃ私は戻るよレイキさん」
(レイキさん?)
はて?と首をかしげるサタ。
二人はそんなサタを気にすることもなく話を続ける。
「えー、もっと一緒にいようじゃないか帝くん」
「私は仕事があるんだよ!仕事!君のわがままにずっと付き合う義理はない!」
「タイヨウさん、この人先生っしょ?他の患者さん診ないと」
サタが宥めるように会話に入る。
「タイヨウさん?」
帝はにんまりと微笑む。
「なにそれ、そんな風に呼ばれてるんだレイキさん?あぁ、テンショウだからタイヨウ?」
「なんだっていいだろう」
珍しくムっとした表情をするタイヨウ。
「いいけどね。私もタイヨウさんって呼ぼうか、ふふふ」
帝はサタを見る。
「初めまして、君がレイキ……タイヨウさんの言ってた子だね。
私は彼の担当医だったミカド、よろしく。」
「はぁ…どうも。二人は友達か何かですか?随分と親しいですね」
「彼とは古い付き合いでね…私がここに来てからいるからね」
「あ、そうか…」
サタはタイヨウがずっと病院暮らしだったことを思い出す。
あまりにも能天気な雰囲気にすっかり忘れていたが、タイヨウは手術するまではいつ死んでもおかしくなかったのだった。
「それでは私は失礼するよ」
帝はさっさといってしまう。
「…それじゃ帰りますかタイヨウさ―――」
絶句するサタ。
タイヨウの表情が真顔になっている。
これはミコが乗り移っているときの表情だ。
「ミコ…?」
『買い物をしてさっさと帰るぞ。お前は荷物持ちだ』
「まさかそのために呼び出した…?」
『ふん』
ミコは肯定も否定もすることなく歩き出すので、サタは慌てて追いかけた。
****
ミコが取り乱している。
死んでしまう、と叫んでいたような気がする。
そして自分は何と言ったのか。
ミコは何と言ったのか。
頭が痛い、きっと思い出したくないのだ。
きっと、酷いことを言ってしまったのだろうお互いに―――
「ミコ…」
深夜、眠れずサタはタイヨウの部屋に来ていた。
眠るタイヨウの胸に手を当てる。
鼓動を感じる。
ミコの心臓なのだと思うと、まだそこにミコが生きているような気がして―――
手を掴まれる。
タイヨウの目が――ミコの目がサタを見ていた。
『この身体はお前のものではない、タイヨウさんの物で…わたしはタイヨウさんの一部になれた』
その笑顔が酷く歪んでいる。
『私はお前のものじゃない』
これは幻覚なのかもしれない。
これは―――
痛い、苦しい
身体を弄ばれても、首に指の痕がついていても、自分がそうされたと思っているだけかもしれない。
自分が解らなくなる
夢の中にいるような感覚
しかし
「み、こっ…」
切なげに呼んでしまう。
「ミコぉっ…」
求めてしまう、好きであることは変わりないから。
そこまで愛している彼に自分は酷い言葉をぶつけたのかもしれないという恐怖が心を締め付ける。
思い出せばミコが消えてしまいそう――― ただその恐怖が自分を夢の中へと追いやるのだ。
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