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現代風の世界とファンタジーが融合しているゆるふわ世界です!
 ドリルは月2回ほど深夜の献血のバイトをしている。
 バイトの中身をもっと詳しく言うと吸血鬼に献血をするバイトだ。
 実入りがとても良いのでまぁまぁのバイトなのではと思う。
 この形になるまで紆余曲折あったが。
 まず初めに吸血されたら吸血鬼になるのでは?という疑問。
 これは「俺らはネズミじゃないしそんな事故起こしてない」と不機嫌になっていた。
 パンデミニックを起こすと駆除されるのでそういわれるとそうだ。
 手順があっての吸血で仲間に引きこむそうだが詳しくははぐらかされた。
 次に美女の血がいいと要項に書いていたがこれはドリルがセクハラになるのでは?と指摘し変更させた。
 支払いも金貨になってたので円にしろとこれまた変更させた。
 だんだんここで解ってくるがこの吸血鬼、魔界から初めて人間界に来た世間知らずである。
 世間知らずだから人間界に出されたらしい。
 なぜかやることなすことに疑いもなく自信たっぷりなので詐欺にあいそうだな…などと思う。
「きたでー」
 大きな屋敷の前の大きな門の横にあるインターホンを鳴らして知らせると勝手に門が開く。
 電動なのか魔力なのかちょっと解らない…一応屋敷に電気は通っているようだが。
 使用人などもおらず、本当に身一つで世間の荒波に揉まれて来いと言われたのだろう(そうドリルは思う)、彼一人で住んでいる。
 まぁこの屋敷を用意してもらってる時点で甘々であるが。甘やかしだ。あまあまのあま。
 彼―――リングのいるリビングに向かうと怠惰な生活を送っていることが解る。
 血が飲めないからとワインで誤魔化していたらしいのだが他のお酒の味も知ってしまった。
 缶と瓶で散らかっている。悲惨だ、男の一人暮らしってこんなもんだけど。
 ソファで足を組んでストロング系の缶を飲んでいる吸血鬼は見たくなかった。
「おはよう…」
 まだ目が覚めてないのか声がカスカスである。酒で喉が焼けているわけではない。
「ホラ、ささっと吸い!オレも眠いんや!」
「元気じゃん…」
 不機嫌そうに眉を顰めながらリングはドリルの首に噛みついて吸血し始める。
 創作のようなえっちな気分になっちゃう…なんてことはない。そういうのはえっちなことするときにしかしないらしい。
 リングは顔を赤くしながら答えてくれた、えっちな話になれていないところをみると魔界で友達いなかったんじゃなかろうか。
 きっと魔界ではニートでぼっちだったから親に家を追い出されたのだ…そういうストーリーをドリルは推察した。
 本人に聞けば教えてくれそうであるが、なんだか聞いたら自分のエリートな自慢話を延々と聞かされそうな気がするので聞かない。
「ん、もういいぞ」
 解放されるドリル。
「今日のデリ血終わりってことで寝るわ~。また部屋借りるで~」
 服を整えるとササっとリビングから撤退するドリル。
 客室に直行だ!
 その背に「デリ血ってなに!?」という声を受けながら。

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