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トルネードの自室にて。
ギシッギシッとベッドが軋む音がする。
ロボット用なので早々軋むことなんて無いのだが2機のロボットが激しく動いていれば痛んでしまうというもの。
「はっ…はぁ…」
ベッドに縛り付けられたままのトルネードは熱い息を吐き出しながら喘いでいた。
熱い、身体が熱い。
もう限界だ。オーバーヒート寸前の身体だ。
トルネードの上で跨って揺れているジェミニはあの張り付かせた笑みのままだ。
「ふ、ふふ…」
ジェミニはゆっくりと腰を上げる。
「ひぁっ…あ…!!」
ずるりと抜けていく自身、全てではなくギリギリのところまでで止められる。
露出した部分が外気に触れて腰がゾクゾクした。
ジェミニは一気に腰を落とし、ナニを飲み込む。
「っあぁ、あー……!!!」
ガクガクとトルネードは締め上げられるナニの刺激に身体を振るわせた。
「じぇ、みにぃぃ……」
垂れる唾液を拭うこともなくジェミニへ視線を向けるトルネード。
「なんだトルネード?」
ジェミニは顔を近づけ、舌を伸ばしてトルネードの唇を舐めてやるとトルネードはぶるりと震える。
「も、出な…い…ッ はあっ…」
「別に出さなくてもいい、勃起しれてばいいんだお前は」
「っ落ち…る。熱い、ッ……意識、がもたないッ……」
「勝手に落ちればいい。トルネード…」
「ッ!」
ぐちっぐちゅり…と水音が大きくなってくる。
トルネードの視界は涙でよく見合えない。
ジェミニがどんな表情で自分を見下ろしているのかさえ認識できない。
「あ、あぁぁ……」
「なんだ、まだ出るじゃないかトルネード」
中で受け止めながらジェミニは言う。
「…トルネード?」
ジェミニは動かなくなったトルネードの顔を覗き込む。
意識を失っている。
オーバーヒートを起し強制シャットダウンしたようだ。
「今日はここまでか」
ジェミニはつまらなさそうに呟きながら、トルネードから腰を上げた。
トルネードが意識を取り戻すと、ジェミニは微笑んできた。
「やっと起きたか」
トルネードの横に座って、手を伸ばす。
頬に触れるその手が冷たくて心地よい。
「お前、こういうの…レイプっていうんだぞ…」
手首を擦りながら言うトルネード。
拘束具に擦れて少し装甲の塗装が剥げたかもしれない。
コーティングはしているはずなのだが…。
「そういうプレイさ。なかなか興奮するだろう?」
「こ、興奮なんかしない!俺はそんな趣味ねぇ!!」
「ふぅん?じゃあ俺を満足させるようなキスができるのか?フェラは?ん?できるのか?」
「う、うぅぅ」
顔を真っ赤にさせるトルネード。
「できないだろう?大人しくしておけチェリー」
「納得いかんっ…そっちが勝手に襲い掛かってきてるだけなのにっ…!!!」
「中で散々出しておきながらそんなことをいうのか」
「うぐっ…」
黙りこむトルネード。
ジェミニはトルネードに寄り添うように寝転がる。
別にトルネードのことを慕っているわけではない、好きだとかそういう感情などないのだ。
スネークの影を追い求めて、たまたま面倒見のいいトルネードにスネークの幻影を被せて、
こうやって接触してきているだけなのだ、と。
トルネードはそう考えている。
「ジェミニ…もう寝ろ。な?」
「ん…」
ジェミニの頬を撫でると、ジェミニは素直に目を閉じる。
こんな関係続けても何もなら無い、というのは頭ではわかっているのだ。
解っているが、ジェミニのあの目が思考を停止させる。
あの目、あの……
棄てられた日
廃棄工場のスクラップ置き場、機能停止した工業用ロボたちの合間から這い上がってきた
あの日。
あのとき。
機能停止した中でも自分のように動ける機体の他に機能停止寸前の機体もいた。
その機体たちのあの目。
空虚と絶望と、死の色が交じり合ったあの目が、忘れられない。
あの色が思考を停止させる。
「トルネード」
ジェミニの声にハっとする。
「泣いているのか」
「え…」
頬が濡れている。
「ふふ、俺が怖い?」
ジェミニは微笑みながらトルネードの顔を覗き込む。
あぁその碧の瞳に混じる『死』が―――
「怖くない、まだ熱が篭ってるんだ。冷却しようと……」
「俺はスネークが怖かった」
「?」
ジェミニは笑顔を止める。
「何を考えているのかわからなかった。いつも俺の心の中を見透かしていて気味が悪かった。
でも、愛してくれているのはわかっていたんだ…それがとても怖かった。
きっとお前も俺と同じなんだろう?俺が理解できないだろう?」
「そんなことないさ。お前は心配性なんだな?」
微笑みながらトルネードはジェミニを抱きしめる。
「お前は辛いだけなんだろ?向き合う時間が欲しいだけだ。そうだろ?」
「わからない、わからないんだ…」
「…」
胸の中で震えるジェミニ。
あぁ、泣かせてしまった。
ジェミニが怖いのではない、ジェミニの影に見える『死』が怖いのだ。
しかし理解してもらえそうにない。
ジェミニはもう『死』を受け入れてしまっているからだ。
自分は到底、受け入れられない。受け入れることもできない。
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