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「…物が、増えている」

 トルネードは頭を抱えながら感想を述べた。

 彼のいる場所はプラグの自室であり、その自室は完全に彼の趣味に埋め尽くされており、ごっちゃりしている。

「物を増やすなとは言わないが!整理整頓はしっかりしろ!!!!」

「アンタはオレのオフクロか何かなわけ?定期的に片付けにこなくてもいいのに…」

 プラグは振り返りながらトルネードに呟いた。

 ハンドアームに付け替えているその手にはゲーム機のコントローラーが握られていた。

 休日は外出するか、家で溜め込んでいるゲームを消化するかぐらいなのだ。

 しかし休日の日にどことも遊ぶこともなくむしろ「仕事が楽しい!!」と病気のようなことをいっているトルネードより

 自分は健康的だと思っている。

 いや本来自分たちは作業用ロボットなのだからトルネードのような仕事一筋が正常なのだろうが…。

 なんともライト製のロボットは不思議なものだとプラグは思う。

「俺は気になったことはとことん気になるタチなんだ」

 勝手に片付け始めるトルネード。

「うん知ってる」

「散らかっていると思うと気になって仕方が無い」

「散らかってるんじゃなくて置いてるだけなんだけど」

「スネークみたいな言い訳をするな!」

「だれそれ。あ、ろっきゅんの言ってた居候か」

「なんだろっきゅんって。あぁロックマンか?お前なんで変な呼び方してるんだ?

 まぁいい、スネークもそんなことを言って部屋を散らかしている。どういう神経をしているんだお前たちは。

 片付けようと思わないのか」

「べっつにー…不便じゃないし。」

「理解できないな…」

 ブツブツいいつつトルネードは何かのパーツや薄い本を選り分けて適当に部屋の隅へ寄せていく。

 不必要なものを処分してやりたいが、プラグは全て戦利品だの、必要だのコレクションだのと言って捨てさせてくれないので

 こうやって場所を移動させてとりあえず床を見えるようにするしかなかった。

「アンタ定期的にみんなのこと見て回ってるの?」

「定期的というと聞こえが悪いが、俺たちが共に手を取り合ったのは事実。

 例えそれが間違っていたものだったとしても、知り合ったことに対して負い目なんてないしな。

 …もしかして、俺はお前のことを友だと思っていたのだが、お前は違うのか!?」

「いや、アンタって実はお節介焼きなのかなって思っただけなんだけど?」

「む……」

 プラグの指摘にトルネードは言葉を詰まらせる。

 心当たりがあるらしく、ゆっくり視線をプラグからそらしていく。

「邪魔、か?」

「邪魔じゃないけど?片付けてくれてありがたいし。ただオレが気になったのはアンタは自分のために時間使ってんのかってことだよ。」

「む…むぅ。そう言われると…いや、俺も、俺のために使ってるとは…思うんだが…すまない。考えておく」

「真面目だなー。別にそんな深く考えなくてもいいのに」

「俺は考えすぎるのか…?」

 トルネードは少ししょんぼりしながらも片付ける行動をやめることはなかった。

 その後は世間話をだらだらとした。

 トルネードは仕事の話ばかりだが、プラグは休日過ごしていた日に起こったことなどだ。

 大抵そんな感じで片づけが終ってトルネードは満足して帰っていくのだが今日はプラグが引き止めた。

「珍しい。」

「今日はそんな気分。ほら報酬のE缶」

 ぐいっとE缶を押し付けるプラグ。

「報酬なんて…大げさな」

 言いながらもトルネードはにこやかな表情で受け取り、ソファに座った。

「アンタにちょっと聞きたいことあったの思い出してさ」

「忘れてたってことはたいしたことのない話か」

「まぁオレにとってはたいしたことないんだけど、アンタの彼氏がDWNってホント?」

「………」

 トルネードが完全に硬直する。

 カメラアイの動きが不安定だ。E缶の持つ手が揺れている。

 酷く動揺している。

「本当なのかー」

「ち、違う!彼氏とかじゃ、なくて…!!DWNの誰とだ!!?」

「そこまではシラネー。噂で聞いた程度」

(ジェミニ!?スネークか!!?まさかテングのことがバレているわけじゃないだろうな!?

 あぁぁぁ!!!?なんだこれは、まるで俺が何人も相手をしているようじゃないか!自分から相手をしたくてしたわけではないのに!!)

「もしもし?もしもーし??」

 プラグは頭を抱えるトルネードに呼びかける。

「あ、すまない…。知り合いは、多少いるのだが…悪いやつではないし、彼氏ではないんだ…」

「ホントかよ…」

「ほ、本当だ…」

「んじゃあお楽しみも知らないカンジ?」

「お楽しみ?」

 首をかしげるトルネード。

「えろいことに決まってるじゃん。ロボット同士でも物理的につっこむ奴もいるけどさ、大体接続でやるだろう?」

「そ、そうなのか?すまない詳しく知らないんだ」

(スネークにいきなり両方でされた事あるが…黙っておこう)

 友達に痴態を知られたくない。

 と思ってハッとするトルネード。

「どうしてそういう話の流れになるんだ!?」

「アンタ真面目だから溜まってるんじゃないかと思って」

「人間じゃあるまいし、そんな!!!」

「いやぁやっぱストレスは溜まるらしいよー?」

「本当か…?」

「本当本当。アンタにコレやろっか」

 一枚のチップを出してくる。

「何だそれは」

「気持ちイイ気分になるチップ。短時間だけだしそんな強いモンじゃないからアンタでも大丈夫だろ。

 発散しやすくなると思うんだわ。」

「…お前使ったことはあるのか?」

「あるけど?」

「そ、そうか…なるほど、発散…しておけば…少しは流されずに済むかもしれない」

「何が?」

「いや、独り言だ!!あぁ、もう行かなくては!また来るから常日頃から整理整頓を心がけるように!!!」

 立ち上がりながらいうトルネード。

「アンタは俺のセンセイか何かかい」

「う、うるさいっ!!」

 出て行くトルネード。

「もうちょい砕ければ付き合いやすいんだけどなー」

 プラグは呟きながらゲームの続きをしようとテレビの前へ戻った。



    ◆◆◆◆



 トルネードは悩んでいた。

 散々悩んでいた。

 プラグから貰ってしまったチップを使うか使うまいか。

 貰ってしまったのだから使わないと悪い気もするのだが、勇気が出ない。

(いや、しかし…俺の体がおかしくなってしまうのもきっと溜まっているからだろう。

 快楽にすぐ溺れてしまうのは異常すぎるじゃないか。) 

 自分を納得させて、トルネードはチップを体内に埋め込んでみた。

 チップを読み取っていく感覚と同時にじわじわと何かを感じ始める。

 体内温度が上昇してくる。

「はっ…あ、…」

 ゾクゾクとした感覚に変わってきて思わずトルネードは排気しながらベッドに倒れこむ。

「え、あれ?何…!?」

 ぞくり、とした感覚に体が震えたかと思えば、そのままその快楽が強くなっていく。

 スネークに接続されているかのように強い快楽信号。

「ひっ…!?」

 トルネードは悲鳴を上げそうになって口を手で塞いだ。

 腰がガクガクと震えている。

 冷却しようと目からぼろぼろと涙がこぼれ始める。

(ちが、う…何か違う…!? まさかスネークに身体を弄られてた、せいか…!?)

 手が勝手に下半身へ伸びる。

 しかしこの刺激が欲しいのではない、もっと別の―――

(ジェミニかスネークを呼んで…嫌だ、また弄ばれる!!!テング…?だめだ、絶対に無視される!!!!)

「あ、…かはっ…あ、あぁぁ……」

 声が抑えられない。

 トルネードは自然とプラグに回線を開いていた。








「うわーえろいことになってんじゃん…」

 プラグがトルネードの元へ駆けつけ、その姿をみた第一声がそれであった。

「あっ、んぁ、あぁっ…んっ……」

 短い声を漏らしながら、トルネードは自身を片手で扱き、もう片方は指で後ろを弄っていた。

「トルネード、オレのことわかるか?」

「ぷ、らぐ……? た、すけ…治まらないんだ、熱が…体、おかしくて…ここ、すごく欲しくて…」

「アンタ真面目な顔して随分いやらしい身体してたんだね?」

「ちが、う…スネークが、俺の身体いじってた、からっ…」

「彼氏いるんじゃん」

「彼氏じゃないっ…」

 首を横に振るトルネード。

「ぷらぐ、頼むプラグ助けてくれ…」

「オレ童貞だけどいい?」

「なんでもいいからぁ!!はや、く、もう俺、我慢できなくて、おかしくなりそうでっ…!!!」

 泣き始めるトルネード。

「プラグ、早く…!!」

「解った解った。まさかこんなことになるとはな、っと~」

「ひゃう!?」

 捻じ込まれるがトルネードのそこはプラグのそれを飲み込んでいく。

「あぁ…プラグ、プラグ…」

「ん…」

 トルネードがプラグにしがみ付いてその唇に己の唇を押し当ててキスを求めてくる。

 ほぼ違いはないだろうに、トルネードの舌は柔らかく、熱く、別の生き物のようにさえ感じた。

「もっと…はげしく…動いて……」

「おっけーおっけー」

 プラグはトルネードの腰を抱え、強く動き始める。

「あ、うっあぁぁぁ…!!!」

「痛い?」

「ん、イイ、気持ちいい、きもちいいからぁ……」

 とろんとした虚ろな目でトルネードが答える。

「うわー、そういう顔できたんだ。意外。DWNにそういう顔みせてたわけ?」

「うっ…」

「別にいいけど。オレ気にしないし。ほら自分で動いて気持ちよくならないと。オレ童貞でよくわかんないし?」

「ひぃっ…!!」

 プラグはトルネードを引き上げて馬乗りの状態にさせる。

「あ、あぅぁ…あぁぁ…」

 トルネードは喘ぎながらプラグの手を強く握り締めつつ腰を揺らした。











「………」

 トルネードは真っ赤になった顔を伏せたまま、じっとベッドの上で座り込んでいた。

 その横にプラグが座っているがさっきからトルネードが顔をあわせてくれない。

「す、すまなかった…。嫌だったろう、こんな…俺は男性型だし…あんな痴態を晒してしまって幻滅しただろう…」

 消え入りそうな声で呟く。

「アンタ顔はイイからオレ気にして無いよ?割とギャップ萌えだし。DWNとそーゆーことしてたんだろ?」

「な、成り行きなんだ…成り行きで…そういう、関係に…その、スネークがよく俺に接続して弄っていたから…

 快楽信号に酷く敏感になってしまっているんだと思うんだ。」

「そのスネークってやつが彼氏?ヤってるの?」

「違う!相手はスネークじゃなくて…!」

「複数?可愛い顔してるからモテるんだろ。」

「う、うぅぅ…」

 顔を手で覆って唸るトルネード。

「プラグ、彼氏とかそういう仲はいないんだ信じてくれ!」

「別にいいけど。じゃあDWNと付き合うの止めたらどう?アンタ自分からそういう仲になったんじゃないんだろ?」

「え…いや、なんていえばいいのか」
 トルネードは真面目な顔でプラグを見る。

「こういう行為は苦手だ。しかしジェミニはそれを望んでいたから俺は応えてしまった。

 …俺にはジェミニを受け入れる資格はないのに、俺はあいつのことを勘違いしていたんだ」

「勘違い?」

「あぁ、ただ寂しいのだと思っていた。でも違った。

 俺はロックマンじゃない…ジェミニが欲しいのはロックマンだ、でも俺はロックマンに成れなかった。

 …きっとそれにジェミニ自身が気づいたら、俺はあいつを傷つけてしまうことになるだろう」

「だから相手してるんだ?」

「ジェミニ自身、それに気づいていないから」

「そのまま気づかないかもしれないだろう?アンタ考えすぎなんだ。」

「そうかもしれない…ジェミニにはスネークがいるのにな。ありがとうプラグ、少しスッキリしたよ」

「アンタさ、フリーなら俺が彼氏になってあげようか?」

「はっ!?」

 プラグを引くトルネードの手を掴む。

「もーヤっちゃった仲だしいいじゃん?つかそのエロイ身体のまま自分ひとりでどうにかできんの?」

「そ、れは……」

 自信がないのか、トルネードは目を伏せる。

「困ったときに呼んでくれればそれでいいしさ。」

(アンタ真面目だからそのうち潰れそうだし)

 と、心の中で付け加える。

 トルネードは『あの時』のトルネードではないので大丈夫だとは思うのだがDWNが関わっているのならば話は別だ。

 ロクなことにならないだろうし、そしてこの男は自分の抱えきれない大きさのモノまでも抱えようとする不器用な男だからだ。

 少しでも負担を減らしてやりたいと思うのが心情である。

「ほら、友達だし?」

「友達、とはそういうものかな…」

「じゃあ恋人でいいし」

「それは抵抗がある!こういうことは好きじゃないんだ!」

「我侭な。俺の上に跨ってるときは素直にデレデレしてたのに」

「いうなー!!!!」
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