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「ようギャラクシー、久しぶり~」
「サターン!サターン!」
 研究室にやってくるサターンの周りをギャラクシーは歓迎しながら飛び回る。
 サターンは時間があるときにこの宇宙研究所にやってくる。
 ギャラクシーのお手伝い…ではなく、サターンの環の調査がしたいから、という理由である。
 そこで出会ったこのギャラクシーになつかれてしまったというわけである。
「天体観測!天体観測!」
「いやお前はこの環の解析の手伝いするんだろ?」
 しょんぼりするギャラクシーに苦笑するサターン。
「終わったら相手してやるからさ」
 ポンポンとギャラクシーの頭をやさしく叩く。
「スグ終ワラセル!」
(終わればいいんだけどなぁ…)



   ****


 サターンとギャラクシーはとある部屋に来ていた。
 360度に広がる宇宙空間。
 リアルタイムで映し出されている宇宙の一部だ。
「サターン ノ 環、原理ガ マダワカラナイ。悔シイ!」
「いやーオレでも解ってねえから気にすんなよ。」
「『勘』デ動カス!納得デキナイ!」
「ははは…」
 ぷりぷり怒っているギャラクシーだが、サターンもどうしてやることもできず笑うしかない。
 事実、空間を把握しようとすると無意識的に、瞬時に計算が行われてしまう。
 タイミングは本当に勘だ。
 実際は計算上の最高のタイミングを理解しているのかもしれないが、本人がよくわかっていないのだから勘としかいえない。
(もしかして…どこか外部に補助機能があるのかもしれないねぇ…)
 ギュっと環を握り締める。
「サターン ノ 宇宙ハ、トテモ興味深イ」
「オレの宇宙?」
 ギャラクシーはツンツンと環をつっつく。
「ヒトツノ宇宙ダヨ」
「そんなもんかねぇ」
「我々ノ、コノ宇宙モ、サターン ノ 持ツヨウナ宇宙ノ ヒトツカモシレナイ!
 ナント広大!!」
「おぉ、そういうの盛り上がっちゃうタイプ?」
「盛リ上ガッチャウタイプ!」
 さっきまでの不機嫌が一転しご機嫌になる。
「広大になるとオレらの仕事が大変になっちゃうなー。宇宙の支配が遠くなるねー」
「…サターン、帰リタイ?」
「え?」
「母星。寂シクナイ?」
「…母星?」
 サターンはモニターに目を向ける。
 母星はデータ上でしか見たことがない、死と化した星を科学技術で支えていたと聞く。
 サターンたちがいたのは星間戦争の前線から少し離れた衛星だ。
 我々のコードネームは母星を讃えて付けられた、ぐらいしか関わりがない。
 その母星もアースがサンゴッドを誘導して破壊させた。
「そうか、オレらもう帰るところないんだなぁ」
「ソウナノカ」
「うん。壊しちゃった」
「恨ンデタノ?」
「解んないな…。オレは、何でもよかった。でも、ちょっと惜しいな」
 サターンはギャラクシーに視線を戻して笑顔を作る。
「自分たちのこと、もう少し聞いてから壊せばよかった。
 そうすればお前の質問に全部答えられただろうに」



   ****



 アースはうんざりした表情でそれを見ていた。
 ダンボールハウス。
 ご丁寧に「きらーず」と描かれている。慣れないせいか、かなりの悪筆であったが。
 ここにキラーズとクイントが住んでいた。
 橋の下(とはいっても橋自体は数階層上になるのだが)に住み着いているのである。
「…前より豪華になっている」
 犬小屋からウサギ小屋へランクアップである。
「お、なんだ宇宙人じゃないか。」
 中からエンカーがでてくる。
「…ロックマンが、これを」
「いつもすまないな」
 アースから包みを受け取る。
 中身は作りすぎたおかずの類である。
 ロックマンから、とはいっているものの本当はアースが作りすぎているだけなのだが、プライドがあるのだろう。
 しかしロックからの「キラーズのところに持っていってあげたら?」という助言が行動を後押ししている。
「帰ることはできないのか?」
「どこかのバカのせいで帰ることもできん!」
 カツン!とバリヤードスピアで地面を叩く。
 ダンボールハウスの中からバラードの呻きが聞こえるがスルーするアース。
「それに、まぁクイントの件もある。我々で彼の面倒も見てあげたいからな」
「ふぅーん。そんなものか」
「ここで立ち話もなんだ、中に入らないか?」
「絶対に嫌だ」
「なんで!?まだ余裕あるぞ!?」
「じゃあ外でお茶すればいいじゃん」
 クイントがポットとコップを持ってでてくる。
「なるほど、それもそうだな」
「えぇー。止めろ。引き止めるんじゃない…」
 本気で嫌そうな顔をしているアースを無視してエンカーとクイントは手早く準備を終わらせてしまう。
「「どうぞ!!」」
「帰りたい…うわー、なんでダンボールの上に座らないといけないんだろ…」
「座布団だよ」
「お高級な座布団だ」
 ダンボールはダンボールである。
 アースは文句を言いつつ座る。
「アースが体育座りしてる姿みるの、すごくシュールだなぁ」
「お前らのせいだろうが」
「どっかそのへんで取ってきた葉っぱのお茶をどうぞ」
「絶対飲むものか」
「冗談だって。これ買ってきたやつだから」
「お前本当に未来のロックマンなのか…」
 クイントからお茶の入ったコップを受け取るアース。
「過去に来た時点でもうボクってロックマンじゃない気がするなぁ。
 目とか舌とか、もうダメになっちゃってるし…」
 改造の後遺症でクイントの見る世界は灰色の世界だ、色が着いていない。
 味覚もなくなった、美味しい料理を食べようが泥を食おうが彼には違いがわからない。
「まぁそんなことはどうでもいいんだよ、今は今で楽しいし。」
「どっかのバカのせいで楽しい毎日だな」
「なんで地球製って前向きなんだろう…」
 鬱病になってた自分がなんかバカみたいではないか?と疑問を持ってしまいそうになる。
「前向きというか、一人で生きてるわけじゃないからな。
 なんだかんだで連れ合っていないと前向きにはなれまい」
「…あぁ、そうだな」
 お茶を一口飲む。
 すっごく渋い。エンカーは何事もなく飲んでいるが、エンカーに合わせた味なのだろうか。
 アースはスッ…とコップを地面に置く。
「諦めるの潔いよねルーラーズって」
 味がわからないが、行動の原因が解っているらしいクイントが微笑む。
「なぜ残すアース」
「飲めないからに決まっているだろう」
「ふむ。あぁ、サンゴッドあたりが好みそうな味だなとは思う。
 こんど一緒にきたらどうだ?」
「連れてこないしサンゴッドさまにも飲ませんぞ」
「暇してるんだ、客が欲しいんだよ客が」
「客とかいうな」
「ところでサンゴッドの容態はどうなんだ?」
「あぁ…」
 アースは顔を伏せて視線をエンカーから外す。
「エネルギーが、やはり足りなくて…眠ることが多い。
 人間で言う貧血みたいなものだとかいっていたが。
 深い眠りに入られると少し、怖いな…。昔を思い出す」
「そうか、難儀なものだ」
「アース…」
 クイントはアースの横に座ると頭を撫でる。
「…何をする」
「過去のボク式慰め方だけど?こっちのほうがいい?」
 ぎゅっと抱きしめられる。
「いや、ちょっと、意味がわからないが」
「アースアース」
 エンカーがちょいちょいと肩を叩いて来る。
「バブみを感じないか?」
「意味わからんっていってるだろーーーーが!!!!なんだバブみって!!」
「よしよし、怒らない怒らない」
 ナデナデナデ。
「あまり私を弄るんじゃ無い!!」




   ****




「ハッ…」
「どうしたのロック?」
 ロールが心配そうな顔をする。
「ううん…なんでもないんだけど、急にアースに対して母性本能みたいな
 そんな感覚が沸いてきて…」
「ダメ男認定?アースも認定したのねロック?」
「え!?何その認定…!ち、違うよ!?」

「今日も超平和っすねージェミニ」
「…知らん」
 スネークは兄妹のやり取りを微笑ましく見つめ、ジェミニは紅茶を飲みながら眺めていた。


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