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我が神は気ままである。
やっと機体が完成し自由に動けるようになった途端にあちこちうろつくようになっていた。
誰かが「徘徊」などと表現していたが―――
「はぁ…すまないロックマン。」
「別にアースが謝る事ないのに。こっちが勝手にやってることだし」
ロックはアースの前にお茶とドラ焼きを差し出しながら言い、正面に座る。
「もっと威厳があったんだ…もっと…」
「まぁまぁ、食べて気分紛らわせて。
アースだって、ここになれるまで気分が沈んでたじゃない?
逆にサンゴッドは楽しくてしかたがないのかもよ?」
「うぅ…」
アースは項垂れながらもドラ焼きをもぐもぐしはじめる。
たしかに自分は鬱に陥っていた。
ロボットが鬱とか…などと今では凹んでしまうが、当時の自分は本当に死にたかったのだから仕方がない。
全てを失って、「さぁ自由に生きろ」なんて暴力的すぎる。
潔く殺すのが普通だろう、とアースは苦痛に身悶えたのだ。
持ち直したのは仲間が支えてくれたお陰だ。
「美味しいよねこのドラ焼き」
「あぁ、美味しい。お茶じゃなくお酒が欲しい。冷酒(ひや)で」
「ダメです」
「ケチだな」
アースは我慢してお茶を飲む。
「ところでお前の妹がいないようだな、買い物か?」
「うん、あとお客様がくるから迎えにいってるんだ。
もう直ぐ帰ってくると思うよ」
言ってる側から「ただいまー」というロールの声と、足音。
「あら、アースじゃない。また甘いものタカリに来たのね」
「やかましい」
アースはロールの後ろについてきたロボットを見る。
大きい。全体的に大きく、そして大きい左手が特徴的だった。
「…アース!」
「あれ?知り合い?」
「いや?私は知らんぞ」
しかし相手は問答無用といった感じでその大きな手を振り上げる。
「我が名はデューオ!悪は許さん!!!」
「デュ…?」
アースはガタっと椅子の上に立ち、テーブルに片足を掛ける。
「デューオ!なんだその姿は!別人でわからんかったぞ!」
「アース、どうして上に立ちたがるの!!!」
「身長気にしてるからじゃない?彼」
「と、とにかく待って待って!」
ロックは間に入る。
「デューオも、ちょっとまって!彼は確かに悪いことしたけども!
今はもうそんなことしないから…!」
「ねぇアース、貴方デューオに何したの?」
ロールが横から質問してくる。
「ん?デューオに敵対しているやつに協力して一緒に宇宙を支配しようとしただけだ。
サンゴッドさまの丁度いいエネルギー源になってくれたしな。
ただあいつに邪魔されて我々がしばらく眠る原因の一つになったというわけだ。
思い出したらイライラしてきた」
そうしてワイリー博士によって目覚めることになる。
「お前たちのせいで悪のエネルギーを逃がしてしまったんだぞ。」
そして見つけて戦いあって、地球に落ちることになるのだが―――
地球と縁のある二人である。
「過去のことは水に流…すことは出来ないかもだけど、今戦っても意味ないから!ね?」
ロックが必死に宥めるので二人は大人しくなる。
「デューオもくつろげないかもしれないけどゆっくりしていって。
デューオの分のお茶淹れて来るわね」
パタパタと台所へ行ってしまうロール。
「…」
アースはまさか、という顔でデューオを見る。
「…?」
デューオはアースが変な顔で見上げてくるので戸惑った。
というかこいつはこんなに表情が豊かだっただろうか?
記憶の中のこいつは邪悪な笑みを浮かべ人を小馬鹿にしたような発言をしていく
とても性格の悪いヤツだった気がするのだが。
(ロックマンのおかげで改心したのだろうか…)
「君…あの女の恋人か?」
「……?」
デューオは完全に意味がわからず思わずロックを見た。
ロックは首を横に振っている。
それはアースに向けてのモノだった。
「アース、君…デリカシーがないと前から思っていたけどね、それは本人に聞くものじゃないよ…」
「え?どういうことだ?こいつがあれだろう?ロールちゃんが惚れて帰ってくるの待ってるっていう―――」
「ッ!!!!」
ごわん という音を立てながら、トレイで後頭部を殴られるアース。
「なんでいうの!なんでいうの!!!!記憶消去しましょう!ロック二人をメンテルームに連れてくわよ!!!」
「落ち着いてロールちゃん…」
「も~~~!こういうところ本当サンゴッドおじいちゃんとそっくりなんだからアナタ!!!」
「いや、同型機だし…」
「中身まで似てんじゃないわよーーー!!!」
間
「なるほど、地球ではそういう、なんていうんだ?恋愛?は大切なものなんだな。
ろまんてっくというやつなんだな」
「舌回ってないぞアース」
「うるさいよ。めんどくさいんだよ」
「う~~~~~」
ロールは顔を真っ赤にしたままテーブルに突っ伏していた。
アースとデューオはロールを宥めるのに必死だ。
「とにかくデューオ、君はこの星にわざわざ帰ってくるということはそういうころなんだろう?
この娘を娶ってあげなさい」
「まだそういう感情がよくわからない。答えることが出来ない。
何故貴様に指示されないといけないのかもわからない」
「うるさいな!サンゴッドさまをこの娘に取られたくないんだ!」
「いや…だからおじいちゃんはアナタから取らないっていってるじゃない…」
「おじいちゃんとか馴れ馴れしい!サマをつけろポニテ野郎!!!」
「野郎じゃないです」
「まぁ、とにかくこれでも食べて落ち着いて」
羊羹を出してくるロック。
「ロールちゃんとご飯の用意してくるね、ゆっくりしていってね。
アースも食べてかえるでしょ?」
「あ、あぁ…」
****
「デューオ、ちょっとこい」
「?」
食後、アースはデューオを外へと連れ出した。
「ここは星空が美しく見えるな」
アースは夜空を見上げながら言う。
「まだ、こんなにも星が残っているのか…」
「アース…話でもあるのか?」
「ない。」
歪んだ笑顔で振り返ってくる。泣きそうな顔を無理やり笑顔にしたような。
「私は星空をみるのが辛いよ…全部闇でその輝きを塗りつぶしたくなる」
左腕を上げて、塗りつぶすかのように伸ばした人差し指を揺らす。
「君は、あの輝きを守るために今も宇宙を駆けてるんだろう?」
「あぁ」
「やめないか?一緒にこの星にいないか?いい星だろう?ここは!」
「…私には私の正義がある。お前を助けることはできない」
「あの少女が…残れと言っても君はそういうのか」
「そうだな。それに彼女は、解ってくれると思う」
「……デューオ」
アースはぎゅっとデューオの腕を掴む。
「私は諦めた、全てを諦めたよ…でも生きてるのは、微かながらも『楽しい』という感情を見つけたからだ。
君も、さ…私と一緒になろうよ」
「それは出来ない」
「……」
デューオは項垂れているアースを引き寄せ、膝を突いて右手でアースの顔を向けさせる。
ぼろぼろとアースは涙を流していた。
「何故泣いているんだ…」
「悔し泣き」
「そうか…もし、改心しているのなら私が留守の間、彼女を守ってあげて欲しい」
「ロックマンがいるぞ?」
「彼は戦わなくてはならない」
「お守りならそれこそいっぱいいるがなぁ…。まぁ君が過保護、ということにしておいてやろう」
ぐしぐしと涙を拭うアース。
「あー、お前に慰められた最悪」
「気弱なお前を見るとは思わなかった」
「そうだな…サターンと、君の前だけだよ」
「そうか」
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