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自分は―――リングマンは本来ロックマンを倒すために作られた戦闘用ロボットである。
結局目的は果たせなかったが、戦闘用としてのプライドがある。
リングは唸りながらスカルを睨んでいた。
ヤツも戦闘用、自分は対ロックマン特化の設計であるがヤツは純粋に戦闘のみを特化している。
この前「キャラ被ってる!」と博士に抗議したが色が違うからそれで堪えてと宥められた。
思わず納得してしまったが色とかいつでも変えれるじゃないか。
そもそもなんだこいつは。無愛想すぎるだろう。
あとお嬢にベタベタと。馴れ馴れしい。
「…さっきからなんだ」
「貴様をどう処分してやろうかと考えているんだ」
「またそれか」
スカルはため息を吐く。
「この前戦ったらカリンカに怒られただろ?」
「あれは建物を壊したせいだ!外なら問題あるまい!?」
「詭弁」
「うるさい!!!俺はお前が気に食わんのだ!!!博士と仲良しだし!
なんかお嬢とも仲いいし!!!!」
(あれ、気を遣われてるだけだと思うんだがなぁ…)
どうもリングはその微細な感情の読み取りが出来ないらしい。
それはそうだ、スカル自身も昔は出来なかったし以前の彼はリングよりも鈍感であった。
スカルは無言で立ち上がり場所を移動し始めるとリングもついていくる。
まぁお互い暇なのだから仕方がない。
この屋敷にはこうやって自立的に動いてるロボットは自分とリングの二人だけ。
「台所に来て何するんだ?」
「昨日ブライトがケーキを買ってきた。その残りを食べる。
お前も食べるだろ?」
「む……」
断る理由がないリング。
スカルは器用に準備していくのでリングは無意識に歯がゆさのようなものを感じた。
自分の知らないスカルを見ているという感覚に陥って、焦っているのだと気づく。
二人は場所を隣の部屋へ移して席に着く。
「…いつも三時きっかりに、食べるんだな」
時計を見ながらリングは呟く。
「オレには趣味がない。何もすることもない。だから行動パターンを作って「規則正しい生活」を送っている」
「えぇー…逆にそれつまらなくないか?」
「別に」
「……。ところで」
リングはケーキを突きながら話を切り替える。
「手際よかったけど…何故だ…?」
「カリンカに手伝わされていたからだ。
お前は何もしないからな」
目を細めるスカル。笑っている。
「お、お前ー!俺ら戦闘用なんだよ!!!別に家事手伝いできなくてもいいんだよ!!」
「どうかな。」
「だって…!!戦うこと以外で俺ら何できんだよ…」
「んー。カリンカの子守」
「お嬢だってその内、大人になるだろ…」
「大人になったらカリンカの護衛しよう。そうしよう。
…なんだ不満なのか優等生」
「……」
スカルは立ち上がるとリングに歩み寄る。
「ミハイルは言った。もう戦わなくていいと。
だからオレは戦わない。お前とも戦わない。喧嘩はするけどな?
ミハイルが戦えと命じれば戦おう、だが今は戦わない。
オレはそれでいいんだ。お前がどう思っていようが知らないが」
「……俺に博士なんも言わないんだけど!えこひーき!!!
お前ばっかりズルい…!お前は特別か!ッそうだよな特別だよな!製造過程からして…!!」
「リング、もしかしてオレに嫉妬していたのか」
「う、うるさいよ!この俺がお前に嫉妬とか低俗すぎるだろう!!!!してねぇよ!」
(めんどくさいなぁ)
リングが自分に対してどう感じているのか見えてきたのでスカルは頭を抱える。
「なんだその呆れた顔は。失礼な」
「オレより稼動年数多いのにガキっぽいなって思っただけだ」
「ぶっこわすぞ」
リングはスカルを睨みながらマスクをつけ直し立ち上がる。
「…まぁ、なんだ。俺も大人気なかった所があったのは認めよう。
己の立ち振る舞いも見直しが必要のようだしな」
(めんどくさいけど察しは良いのな…)
「リング、ケーキ残ってるけど」
「やる。イチゴ食べていいぞ」
「うん」
*****
リングとスカルは共に過ごす時間がほんの少し増えた。
「スカル、お前こういうの読んでたのか…」
「何か問題があるのか?」
「…いや…別に…」
リングは何気なく手に取った漫画に視線を落としながら答える。
(お嬢のお下がりばっか読むのって趣味偏らないか?ヤバくないか?
男性型なのに夢見る乙女みたいになったらどうしよう、ビジュアルが気持ち悪い…)
とてつもなくどうでもいい心配をするリング。
「これ面白い?」
「よくわからない」
「そ、そうか。ならいいか…」
(俺と違ってこいつ一般的な常識とか認識が欠けてるんだなぁ…)
心があるのに酷く機械的なところもあって、だから博士たちはスカルに優しいのかもしれない。
いろんなところがまだ真っ白なのだろうか。
スカルは将来カリンカを守ると言っていた。
しかしこんなアンバランスな彼一人で大丈夫だろうか?
これを守るやつが必要ではなかろうか?そう、自分がその役目を―――
「柄じゃないな…」
マスクの下で呟き、独り苦笑した。
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